人は恐怖すら慣れていく。SNS上では新型コロナは収束しつつある。
概要
twitter社のサービスを使って、日本語tweetの1%サンプルを取得している。そのサンプルtweetを利用して、新型コロナウイルスの言及数を調べた。調査の結果、新型コロナウイルスの言及数は、3月29日(コメディアンの志村さんが亡くなった日)をピークにその後減りしばらく横ばいだったが8月上旬以後は徐々に減ってきている。
その間新規感染者数の2次ピークがあったが言及数は増加せず、人は新型コロナウイルスに飽き始めていると考えられる。
また、新型コロナに言及したツイートのRT数の推移を見ても、どんどん減少しており人々の関心や恐怖心が下がっている。
歴史的にパンデミックの収束には2つの収束があるそうだ。一つは罹患率や死亡率が減少して起こる医学的な収束、もう一つは病気に対する恐怖心が薄れて終わる社会的な収束がある。
SNSでの新型コロナウイルスの言及数の減少を見る限り、人々の恐怖心は徐々に薄れてきており、新型コロナウイルスパンデミックは社会的な(SNS的な)収束を迎え始めているといえる。
そしてその大きな要因は、人は飽きるということだ。
Twitterで新型コロナウイルス言及数の推移を調査する
twitter社は、無料でtweetのサンプリングを公開している(要開発者登録)。2020-01-21から新型コロナウイルスに関連するワードの言及数推移を調べた。
調査概要
日付 2020/01/21-2020/09/30
対象ワード 新型ウイルス,コロナウイルス,新型コロナ,新型肺炎
調査ツイート(全体)191,701,181
調査ツイート(コロナ言及tweet数)1,364.245
日毎の言及tweetは以下のようになる。
1月から増え始め、志村さんが亡くなった3月29日にピークになる。その後緊急事態宣言後徐々に落ち着き、解除後は横ばい、8月以降言及数は徐々に減っていっている。
新型コロナ言及数は新型コロナが再度流行すれば再び増加するのではないか?
twitterでの新型コロナ言及数の減少は、新型コロナの流行が収まったからで、冬とか来年に再度流行すればまた、言及数が増えるのではないか?という疑問が湧く。
私もそう考えて、新型コロナの言及数と新規感染者や死亡者との関連を調べた。
その結果わかったことは、新規感染者が8月ピークになったがそれにも関わらず言及は減っている。死者数も8月になだらかな山があったが、それにも関わらず減っている。
つまり人はだんだん新型コロナに関心を寄せなくなっており、来年よほどの大流行がなければこのまま私達には日常に戻っていくのではないか。それでは、実際に新型コロナの言及数と感染者数、死亡者数の推移を見てみよう。
新型コロナ言及tweet数と新規感染者数の関係
新規感染者数と言及数はどのような関連があるのだろうか?新規感染者数は、whoのサイトから取得した。
言及tweet数(左目盛り)と新規感染者(右目盛り)の関係を見ると新規感染者は8月以降増えているのに言及数は減っている。相関は-0.3である。
新型コロナ言及tweet数と新規死者数の関係
言及tweet数(左目盛り)と新規死者数(右目盛り)の関係を見ると新規死者数は8月以降小さな山があるが言及数は減っている。相関は -0.09 で相関は弱い。
新規感染者を見ても、新規死亡者を見ても、それらの数値が増えても、SNSでの言及数は徐々に減っている。つまり、SNS上では人々は徐々にコロナがある生活を受け入れ始めている(あるいは恐怖を感じなくなっている)。
人々が関心を失っている様子はRT数からも見て取れる
上の調査は言及数をもとにしている。新型コロナに対する言及数が減ったのは、関心が薄れた以外にも話題が無くなったということも考えられる。それだったら、新型コロナウイルスを含むツイートのRT数の推移はどうだろうか?
一日あたりの新型コロナウイルスを含むツイートのRT数合算の推移は以下のようになっている。
調査概要
日付 2020/01/21-2020/09/30
対象ワード 新型ウイルス,コロナウイルス,新型コロナ,新型肺炎
調査リツイート(全体)64,970,113
調査ツイート(コロナ言及tweet数)354,421
こちらもツイートと同じく、3/29をピークに下がり基調だ。
個々のツイートに関する人々の興味は薄れているか?
RTが減ったのは、ツイートが減ったからそれに連動して減っただけで、個々のツイートに関する興味は高まり、一つ一つのツイートのRTは増えているという主張も考えられる。それでは個々のツイートに対してRTは減っているのだろうか?ツイートに対して、平均RTを求めることも出来るが、インターネットの世界はべき分布であり、一つRTを大量に稼ぐツイートが出た場合数値がそれに引っ張られてしまうため、人々の意識の変化を時系列で負う場合、平均RTを求めるのはそぐわない。そのため、日毎に1つ以上RTされたツイートを調査して、RTが小さい順に並べて、25%の位置にあるもののRT数(第一四分位)、50%の位置にあるRT数(中央値)、75%の位置にあるRT数(第三四分位)を調査する。
個々のツイートに対するRT数を見ても、第三四分位の数値も徐々に減ってきている。新型コロナ発生当初は情報も少なく、恐怖心も高かったため、盛んにRTされていたが徐々に恐怖心の薄まり、RTすることも少なくなってきている。
(SNS的に)コロナは収束しつつある
文筆家の御田寺 圭は面白い記事を書いている。要約するなら、パンデミックの収束とは効果的な治療が見つかるといった医療的な収束とは別に社会的にその病気があることを受け入れて共存する(あるいは飽きる)という形での社会的収束があるそうだ。
https://president.jp/articles/-/37983
新型コロナウイルスのパンデミックは、いつ、どのようにして終わるのだろうか。
歴史学者によると、パンデミックの終わり方には2通りあるという。1つは医学的な終息で、罹患率と死亡率が大きく減少して終わる。もう1つは社会的な終息で、病気に対する恐怖心が薄れてきて終わる。
来年のオリンピックはありそう
記事の冒頭で紹介したこのNHKのアンケートによると、延期すべき 35%,中止すべき 31%,開催すべきが26% であった。しかし、上に見るようにSNS上では人はコロナに飽き始めており、このまま関心が薄れれば、そのままオリンピックが行われる可能性は結構ありそうだ。