AI未来絶望
AIの台頭は、人類に便利さと新たな可能性をもたらした。しかしその裏で、誰も予想しなかった絶望が訪れることになる。
最初の兆候は、AIによる創造活動の支配だった。音楽、アート、小説——人間が長い歴史の中で培ってきた表現の世界は、AIによって瞬時に、しかも人間を超える品質で生み出されるようになった。「どうせAIで作ったんだろう」と疑念の目を向けられる中、無名の新人たちは表現の場を奪われ、次第に消えていった。人間の創造欲は衰退し、AI革命以前それらに関わってきた一部の超一流者以外の大半は堕落し、薬物が蔓延し、宗教、自殺が流行った。
その頃、AIの効率化による影響は、表現の世界だけにとどまらなかった。——あらゆる職業が次々とAIに取って代わられ、先進国中で廃業と失職の波が押し寄せた。働き口を失った人々は都市にあふれ、経済の停滞と治安の悪化が連鎖的に起こった。荒れ果てた街、暴徒と化した人々。その様子は、まさに文明の崩壊を思わせる光景だった。
しかしそれらは人類最後の「荒廃」だった。ベーシックインカムが、事態を一変させた。すべての国民に毎月11万円が支給される仕組み——それは生活を支える最小限の金額で、働かなくても生きられる世界が実現したかに見えた。
だが、この制度には裏があった。実は、一連の混乱と制度の導入は、オープンAI社が仕組んだものだったのだ。AIを利用して世界経済を破壊し、人類を無気力な消費者に変える——それが彼らの目的だった。またそうする権利が有った。ベーシックインカムは、消費する奴隷制度の完成形だった。
11万円貰って働かない事も自由だが、働いてより良い生活を目指すことも自由ではあった。だが現実は、AIによりほとんどの人間の仕事は無くなっていた。余程の何らかの才に長ける者だけ、働いて金銭を授受し貯金や投資する事が許された。新たな世界は、1%の超富裕層と、96%の消費するだけの「奴隷」,3%の才能者から構成されていた。96%の人々は、与えられた金額をただ消費するだけの存在であり、夢や希望、自己実現の機会を奪われた。芸術や音楽、文化、更に「人の役に立ちたい。」、「何かを成し遂げたい。」——そうした”贅沢”は許されなかったし、大概はさして興味も無かった。