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どんよりと、会いたい気持ちと、懐かしさと。

2024.04.17

昨日とは打って変わり、雲がもくもくと遠くまで伸びる朝。なんだかすこし、肌寒い。暑くなっては寒くなり、寒くなってはまた暑くなる。

この時期は、そんなことばかりを繰り返す。気まぐれな天気と気温に、身体がすんなりとついていけるはずもなく、頭はぼんやりとしたままだ。

宿泊先のホテルで朝風呂をキメ、少し重ための身体で身支度をすませる。そうだ、昨日は「B-LIFE まりこ先生のヨガ」をせずに寝てしまったから、朝はやらねば。と、おもむろにYouTubeを開く。

画面越しの「まりこ先生」はいつも温かく、このポーズが身体のどの部分に効いているのか、を落ち着いたトーンで細かく、そしてやさしく教えてくれる。すごく心地がよい。

今のところ、やめる理由がなく2ヶ月つづけられている。半年、1年とつづけたら、あんなにもピンと背筋が伸びて、すらりとした佇まいになれるかもしれないなと、ひそかに楽しみにしている。

朝食を済ませ、チェックアウトぎりぎりまで仕事をすることにした。気圧の影響を受けやすい身体は、コーヒーを飲んだとてしゃっきりしない。あぁ、困ったな。目の周りもズンと重たい。

そうこうしていると、離れたところに暮らす友人から、数年ぶりにSNSでコメントがあった。

最後に会ったのはいつだろう。コロナの前だった気がするから、きっと3〜4年前。もうそんなにもたくさんの時が流れていることに少し驚く。

私にも友人にも、名前に「栞」という字が入っていて、ともに「書く人」だ。直接会った回数が多いわけでも、遊んだ回数がすごく多いわけでもない。だけど、どこか近しいものを勝手に感じていて、時折「どうしているだろう?」なんて思いを馳せる。

いきなりの告白だけれど、私は彼女の紡ぐ言葉がとても好きなのだ。物事への光の当て方や、感性が、とてもとても好きなのだ。

温かくて、やわらかくて、人柄の滲みでている文を読むだけでこみあげる何かがある。歳は同じだけれど、書くことに関しては私よりもずっと先輩で、ずっとずっとあこがれだ。

「会いたいね」

話したいことがたくさんある。しばらく会っていなくとも、距離があろうとも、会いたい気持ちは変わらない。近いうちにきっと会いに行くから、待っててね。と、胸に誓う。

さっきまでぼんやりとしていた頭も、心なしか和らいだように感じた。

背の高いビルがひしめき合うまちにやってくると、いつのまにか早足になっていることに気づく。なぜ気づくのかというと、信号で立ち止まった時に、息があがっているから。吸っては吐く速さと、前に進みたい気持ちが、うまく噛み合わない。

「そんなに早く足を進めたとして、一体どこへ向かうのか」。赤から青に変わるギリギリまで自分に問いかけてみたが、特に答えはでなかった。

少し先の路で、マイクを通して信念を訴える声がひびく。「不安や不満を、社会が解決してくれる時代は、もう終わりました」。と言っていた。そんな時代、そもそも存在しただろうか...。などと瞬時に考えてしまう私は、やっぱり少しひねくれているのだろうなと思う。

流れる人の多さに、息苦しさを感じたこともあった。でも今は、この人混みに紛れられるとどことなくホッとする。何者でもない自分と、何者でもない人たちの群れ。ほんの少しだけ、自由になれる気がする。

* * *

本日の取材を終えて、帰路についた。気を張っているからか、いつも帰る頃には頭が痛くなってしまう。

「混雑をゆるやかにするため」と、指定席が増えた電車の「自由席」にいつも乗っているから、座席が少ない分争奪戦になる。

いつもより早めに列に並び、席はなんとか確保できた。窓際の席で、オードリー・若林さんの本『ナナメの夕暮れ』を読み返し、旅のいろいろなことを思い出したり、自分の行いを省みたりしながら、沸き起こる気持ちをぼんやりと薄めていった。

降りる駅に着く頃、窓から母校が見えた。いつも最終やその一本前の電車に乗ることが多いので気がつかなかったが、夕方だと野球部やソフトボール部、テニス部の練習風景が見える。

学生が集まってミーティングをする姿が、ソフトボール部時代の自分と重なった。あの頃もいろいろなことがあったし、今も同じくらいいろいろある。いや、もっとか。そんなことを思って、懐かしさとともに目頭がほんのり温かくなるのを感じた。

今日もお疲れさま。

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