染まるよ、わたし色
“染まるよ”
色をのせていくよ、この白いキャンバスに。
今日は何色が出てくるんだろう____
言葉をつかってカラフルな世界へ誘うよ、ようこそ。
昔ピアノの発表会やコンクールでこんなこと思っていた。
「どんな色の音をだそうかな。」
わたしは舞台の数こそ経験はしているものの、上位に入賞する腕は持ち合わせてはいなかった。先生から教えてもらった通り、きっちり弾くことが大前提で、でも頭の中はそんなこと考えてなくて。そうか、わたしは当時から自分のカラーをだそうと懸命に探していたのだ。譜面に忠実にという教えを無視して、わたし色をだそうなど階段を何段も飛ばして上にかけあがるようなものだ。そんな少女は十年以上も先の未来で、こんな風に語られるとは思ってもみないだろう。
ピアノを弾いても歌をうたってもきっちりは弾けるけど何か足りない。その足りない“何か”が面白みだと気付くのはそこから何年も先の話。(前回記事より)
ここまでくるうちに、“少女”の成長が少しだけ垣間見えてくる。
少しだけ胸を撫で下ろすわたしがいた。
楽しく弾きたい。楽しく歌いたい。
蝶々がひらひら舞うように華麗に、マグマが迫ってくるような危機迫る感じで、母親の腕の中で眠る赤ん坊のように穏やかに、音の粒が空中でぶつかり合って弾けるように、空港に降り立った時の足どりのように軽やかに。
わたしは生まれてから目と耳をつかって色んな世界をみてきたんだ。良いことも悪いこともなんて簡単な言葉で済ませたくない気持ちがある。
そう、世界をみて、そして感じてきた。
“わたしの上半身の大半は音楽で出来ている”
今日も紅茶をすすりながら終わりへと向かう文章とともに一日を終えるのだった。