見出し画像

わんころちん #マツカゼ

わんころちん、犬のことをそう言う母は
にゃんころちん、猫のことをそう言う…たまに
わんころちんの話4つ目は、マツカゼ

先天性の障害のある、白い柴犬の雑種犬
マツカゼは、自力で立って歩くのが困難で
フラフラと2、3メートル進むと座り込む
オシッコはできても、ウンチは途中で倒れてしまう
吠え方も他の犬とは少し違う…
でも、なんだか表情は豊かでかわいい

だけど、だけど何で?何で…家の玄関前に??

マツカゼは、家の玄関前に突然現れた…
その少し前、トシキがワンワン吠えていた
どうしたの?…プシケと見に行くと
え?…窓の外に少しだけ何か白い…犬?
それと同じくらいに、自動車の走り去る音
そして、変わった吠え方の犬の声

マツカゼは、家の玄関前に置き去りにされた
おそらく、障害のあるコを飼育放棄したのだ
どうして家の玄関前に…それは多分…
当時、私が動物病院に勤めていたからだと
それにしても、それをどう知ったにしても
なんてことをするのだろう…
なんとかしてくれるはずだから?
ここなら捨てたことにならないとでも?

信じられない、動物病院関係者は聖人じゃない…

腹は立った、けど…犯人探しする余裕は無い
とにかく、職場で相談したら
病院の犬として引き取っても構わないと…
でも、断った…それは、どうしても許せなくて
動物病院の犬として渡してしまったら
マツカゼは、すぐに実験的に手術されてしまう
そんなことしたら、余命宣告されたのに
さらに死刑宣告だと、そんなの酷いと思った

マツカゼはうちのコになった
ただ、私の収入では高度な最新医療等は無理なので
大した治療はできない…ごめん、マツ…
マツカゼには、今ある寿命を全うしてもらう
そのために、穏やかに過してくれたら
それしか、してやれなかったけど

マツカゼ自身は元気だ、よく食べよく寝た
トシキもプシケも、あまり近付かずで
でも、攻撃することもなく見守っていた
マツカゼは、意外にやる気満々に見えた
それがコミカルで、かわいいと感じてた

マツカゼには、私より母が一生懸命世話してた
不自由な体を持っていたのを不憫に思って
かわいがってくれた…有り難かった
私が付きっきりにはなれなかったから

マツカゼは余命宣告と言うか、いつ何が起こっても
突然死しても…とても長くは生きられないだろうと
そう言われていた、脳や心臓に障害があると
よく咳もするので、不安になったことも
それでも、とにかくよく動くし表情豊かマツ
見ていて、悲壮感はなくむしろ楽しいだけだ

でも、急に吐くことが増え始め
薬をもらい飲ませても、吐いてしまう
息が苦しそうになり始め、母が電話してきた

まっちゃんね、お母さんに抱かれて寝ながら
静かに逝ったよ、うん…最後はクーンて鳴いた

そう…お母さんにお礼言ったのかもね
短いたった4年半くらいの生涯、ゆっくりできたかな
本当に、これで良かったのかは分からない
マツカゼがして欲しかったのは治療だったのか
私は何にもしてあげる力がなかったな…

ごめん、マツ…
次は丈夫な体で生まれるんだ
走る練習しておいて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?