要約 『母親になって後悔してる』 著者 オルナ・ドーナト
●ベストフレーズ
母になった後梅を理解し、母全体の居場所を豊かにするために、母であることをもはや役割として扱うべきではなく、多様な人間関係のひとつとして理解するべきであると提案している。 母は「公共圏」とそのロジックに限定されるべきとされてきた。しかし、母とは、 関係性のなかで自ら吟味し、比較検討し、評価しバランスを取る主体なのである。 28ページより
●はじめに
女性が母になるのが当然なのか?
本日の一冊は、イスラエルの社会学者、社会活動家オルナ・ドーナトの『母親になって後悔してる』です。
本書は、母親になったことを後悔しているイスラエルの女性たちの声を集めた本です。後悔とは全ての決断や行動につきものですが、母親になったことに関しては後悔を口に出すとたちまち批判されるのが今の世の中です。出産や子育ては神聖なものとされていることや後悔する母が子どもを傷つけるのではないかという心配などから、後悔は激しく批判されるのです。
後悔している母たちへのインタビューをもとに、母になって後悔することはあり得ないとされる理由を考え、社会の暗黙のルールが女性たちを母になるように導いていること、母親が持つべきとされる感情や行動が決められていることなど、女性が母になるのが当然とされている背景には社会のルールが深く関係していることを明らかにしています。
また、後悔する母親がなぜ子どもを持ったか、産まれてきた子どもに対する考え方、後悔している理由などについても知ることができます。母親が持つ後悔の感情を理解し、女性が妊娠・出産の分野でもっとたくさんの選択肢を持つためのヒントが見つかる一冊です。
母親は子どものための役割でしかないという考え方を改め、母親を一人の人間として捉え、母であることは人間関係の一部だと考えれば、様々な考えを持つ女性がいることを受け入れられるでしょう。後悔を隠さずに話し合うことで私たちは女性の人生や子どもたちの将来の選択肢の幅をもっと広げることができるでしょう。
●本文要約
1.必ずしも全ての女性が自分で選び、望んで母になっているわけではない
母親になって後悔している女性が子どもを持った理由は様々で、離婚を避けるためなど子どもを持つこと自体を目的としていない場合もありました。必ずしも全ての女性が自分で選び、望んで母になっているわけではないのです。
母親も人間で様々な感情を持つのは当り前のことなのに、世間では「良い母」であるためにはどのように感じどのように行動するべきかが決められています。母親がこのルールから少しでもはみ出すと「悪い母」ということになってしまいます。
子どもへの愛と後悔とは別のもので、後悔する母たちは皆子どもを一人の人間として愛していました。しかしこの感情は理解されません。後悔は「良い母」が持ってはいけない感情とされており、受け入れられないのです。
後悔する母たちは、子どもを持つと以前の自分には二度と戻れず、世間から求められる「良い母」を演じなければならず、例え離れても子どものことが頭の中にあること、子どもありきの母という存在である自分に耐えられないのです。これはその女性が持つ個性と言えるでしょう。
母になって後悔している事を子どもに話すという女性も話さないという女性もいましたが、どちらの場合も子どもの幸せを守りたいという理由からでした。母であることの難しさは周囲の環境だけで決まるものではなくどんな状況でも母になりたくない女性もいるのです。子どもを持たないという選択が認められ、女性が一人の人間として自分で決めた人生を堂々と歩めるような社会にしていかなければなりません。
2.後悔する母の居場所を作るための研究
後悔とは、いくつかの公開討論で示唆されたような「特別な出来事」ではない。「変わり者の女」 が 「感情を吐露する見世物」ではないのだ。感情を、権力のシステムに対抗する手段だと捉えるなら、後悔は一種の警鐘である。母親がもっと楽に母でいられる必要があると社会に警告を発するだけでなく、生殖をめぐる駆け引きと、母になるという義務そのものを再考するように促しているのである。後悔が 「選ばなかった道」を浮き彫りにするように、母になった後悔は、社会が女性に選ぶことを禁じている他の道が存在することを示している。 16ページより
母親になるというのは素晴らしいことであり、子どもを持たない女性は後悔することになる、子どもを持つというのが女性の「正しい」決断であるという考えが世の中の大半を占めています。物事の決定や行動には「後悔」という感情がつきものであるのに、「母であること」に関しては後悔の気持ちを持つことはタブーであり、そのような発言をすると世間から激しく非難されたり頭のおかしい傷ついた人だなどと言われるのは不思議なことです。このような感情に苦しんでいる母の居場所を作ることを目的に、母親になったことを明確に後悔している23人の女性に聞き取り調査を行いました。年齢は26才から73才で、全員がユダ系イスラエル人でした。
3.どのような理由で母親になったのか
子どもは必ずしも「自然の摂理」や「選択の自由」によって生まれるとは限らない。時には、私たちがそれ以外の道を持たない/見つけられないという理由で生まれてくるのである。アメリカのフェミニスト哲学者ダイアナ・ティージェンス・マイヤーズは、これを想像力の植民地化と呼んでいる。それにより、私たちは母になることが唯一の道であるという概念を吸収し、他の利用可能な選択肢を想像できなくなり、想像できる唯一の決定が 「純粋な空間」 からやって来たような印象を持つのである。 39ページより
母になった理由について調査したところ、「流れに任せて」「自動的に」など子どもを産んだ理由をはっきりと述べることのできない女性も多くいました。女性は妊娠・出産するのが「普通」の人生であり、母になることはあまりにも当り前のことで、他の選択肢を考えたりためらったりする必要がないものとされており、子どもを持たないという選択肢に気づくことすらできない状態なのです。子どもを持つ理由は、自分の立場をより良くするため(女性は出産するべきとするこの社会では子どもを持つメリットがたくさん用意されている)、周りのみんなが子どもを持っている環境の中で自分の居場所を見つけるため、自分は望んでいなかったのに夫から強制されたなど、様々です。全ての母親が自分で望み、「自由な選択」の結果、母になっているわけではないのです。
続きは以下リンクからお読みいただけます。(残り7500文字)
4.後悔は世間が求める「良い母」とは逆の個性
5.母親は後悔することが許されていない
6.後悔は子どもではなく母になったこと
7.後悔する母が感じる責任
8.子どもと離れても解決にはならない
9.後悔を子どもに伝えるかどうか
10.母親も自分の意思をもつ一人の人間
11.女性の人生にもっとたくさんの選択肢を
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