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発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服法著者岡田尊司

●ベストフレーズ

「グレーゾーン」は決して様子を見ればいい状態ではなく、細やかな注意と適切なサポートが必要な状態で、それが与えられているかどうかが命運を左右するということを肝に銘じたい。 25ページより

●はじめに

なぜ生きづらいのか?理由と対処法

本書は、「もしかしたら、自分の子、または自分や周りの人は、発達障害ではないか?」と悩んでいる方へ、発達障害という枠に限定せず、人それぞれの個性や環境によって、どんな生きづらさが存在するのかを8つのタイプに分けて紹介した本です。

本書を読むことで困難を抱えている人の弱みと強みを知り、いま必要なサポートや対処法についても理解を深めることができるできます。

●本文要約

1.発達障害は改善するのか?

発達障害を疑って病院を受診したものの、診断結果は、今はまだ障害レベルに達しない「グレーゾーン」。「しばらく様子を見ましょう」と言われたものの、このまま放っておいていいのでしょうか?

人それぞれ、個性が異なるように、抱えている困難の種類や程度も様々なバリエーションがあります。障害かどうかを区別することや、発達障害を改善しよう、と考えるよりもまず、大事なのは、その人の特性を理解することだと言います。そして、特性を理解することで、グレーゾーンでも、療育やトレーニングを早くから始めることで、状況を改善することができるのです。

本書の著者は、精神科医としてクリニックを開業し、発達障害について、最新の診断基準や治療法など幅広い医学知識を携え、診療にあたっています。そんな発達障害のエキスパートでもある著者が、実際の臨床事例を交えながら、発達障害未満とされるグレーゾーンの人々によくみられる特性や行動傾向について、丁寧に解説しています。

さらに、本書では、グレーゾーンの問題点にとどまらず、特異な能力がある著名人の分析を通じて、人間のもつ可能性にも光をあてます。ひとり一人を特別な個性を持った人間として見つめる、著者の深いまなざしに、多くの人が勇気づけられるでしょう。

2.そもそも「グレーゾーン」とは?

"発達障害は、一定の基準で診断することが難しく、多くは個々の症状や経過をみて診断が出されます。特にASDやADHD*は、検査結果など客観的な事実だけで判断することが難しい障害です。診断は、本人や家族の訴えによるところも大きく、簡単な問診で発達障害とみなされてしまう場合もあります。一方、なんらかの生きづらさを抱えていて、普通に生活するのが難しい状態でも「障害というほどではない」と言われてしまうケースも生まれています。これが発達障害未満の「グレーゾーン」にあたります。

しかし、障害レベルに到達しないグレーゾーンだからといって、「障害ではないので安心していい」というわけではありません。たとえば、家庭の事情で不安定な環境に置かれていたり、虐待を受けていたり...本来の発達障害とは次元が異なる別の要因が絡んでいる可能性があります。そして、そのことを周囲に気づかれないまま放置されてしまうと、事態が悪化し、ときに障害レベルの人々よりも、深刻な困難を抱えてしまうこともあるのです。

そもそも、診断名でその人の生きづらさの本質が把握できるでしょうか。たとえば、ある発達障害の診断に「A、B、Cの3つの症状が必要」という場合は、どうでしょう?障害と認定されるのに必要な条件を満たさなくても、A、B、Cのうち、どれかひとつの症状が深刻であれば、生活していくのが大変になってしまうのが想像できます。このように、何らかの特性のために生きづらさを感じているグレーゾーンの人々は、実は障害レベルの人よりも、もっとたくさんいるのです。つまり、グレーゾーンは先延ばしにしていい状態ではありません。これからの対応次第で、彼らの将来が左右されることをしっかり認識しておく必要があります。


3.同じ行動を繰り返す、「こだわり症」タイプ

ASDの人によく見られる特性のひとつに、「こだわり症」がありますが、こだわり症だけでは、発達障害とは認定されず、グレーゾーンになります。こだわり症の代表的なものとして、以下のような症状があります。

<常同運動>
ぴょんぴょん飛び跳ねる動作を繰り返したり、決まった通りにものを並べたり、同じパターンの所作を、繰り返し行うことを指します。軽い症状では、日常的な癖や緊張した時にだけ出てしまう行動も含みます。このような行動は「紛らわし行動」とも呼ばれ、気持ちを安定させる効果があると言われています。ただし、生活に支障をきたすレベルの常同運動が見られる場合は、常同運動障害として診断がつく場合もあります。

<特定の行動・思考パターンへのこだわり>
決まった席に座らないと落ち着かない、同じメニューを注文しないと調子が狂うなど、同じ考えにとらわれて融通が効かない状態を指します。このタイプは「仕事熱心、凝り性、几帳面、正義感が強い」などの性格を持つ人が多い傾向があります。

<特定の対象への強い執着>
趣味や研究対象など、自分が興味を持った対象は、とことんこだわって細部まで見逃さない、特定の対象へ強い関心を持つことを指します。このタイプは、自分の興味があるもの以外には全く目を向けようとしない傾向があります。

このような、こだわり症がある人は、注意の切り替えが苦手という特徴がありますが、決して短所だけではなく、特定の分野への情熱や好奇心など、長所も含んでいることがわかります。しかし、実生活では、こだわりに縛られるがあまり、同じ失敗を繰り返し、精神的にストレスを抱えてしまうことも少なくありません。自分の特性とうまく付き合っていくには、まず現状をしっかり自覚することが大切です。専門家の助けも得ながら対処の仕方を工夫する必要があるでしょう。"


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4.「空気が読めない」タイプと「空気を読みすぎてしまう」タイプ
5.「イメージできない文系脳」タイプと「共感するのが苦手な理系脳」タイプ
6.「生活が混乱しやすい」タイプと「動きがぎこちない」タイプ
7.「勉強が苦手な学習障害と境界知能」タイプ

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