要約 『成功する子 失敗する子 ― 何が「その後の人生」を決めるのか』著者 ポール・タフ
●ベストフレーズ
子供の発達に最も重要なのは、最初の数年のうちにどれだけたくさんの情報を脳に詰めこめるかではない、と彼らはいう。ほんとうに重要なのはそれとはまったく異なる「気質」、つまり粘り強さや自制心、好奇心、誠実さ、ものごとをやり抜く力、自信などを伸ばすために手を貸せるかどうかであるという。
16ページより
●本書とは
本日は『ハーパーズ・マガジン』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』編集者を経て、子供の貧困と教育政策専門のフリージャーナリストになったポール・タフ氏による『成功する子 失敗する子― 何が「その後の人生」を決めるのか』です。
子どもの人生を成功させるために重要な資質「非認知能力」の育て方がわかる本です。
●本文要約
1.知能至上主義 VS 非認知的スキル
「非認知能力」とは、報われることの少ない退屈な作業をするときの忍耐強さ、喜びや楽しみを先送りにできる能力、計画に沿ってやり遂げる力など、性格的な特質を指します。研究者によっては「性格の強み」「人格の特徴」と表現する人もいますが、いずれの場合でも、具体的に一つのスキルや性格を指しているわけではなく、「認知能力」よりも重要な、学校生活や職場に限らず、その後の人生全般において価値を生み、子どもを成功させるための重要な資質の総称のようなものです。
従来は、知能検査で測ることのできる知力や、読み書き計算の能力のような「認知的能力」さえあれば、子どもの人生は成功すると信じられていました。
しかし、ここ十数年で、経済学者・教育者・心理学者・神経科学者たちが「頭のよさだけが、子どもの人生を決める要素なのか?」という「能力至上主義」の思い込みに疑問を投げかけはじめました。子どもの発達に最も重要なのは、乳幼児期にたくさんの情報を詰め込むことではなく「非認知的能力」である、という結果が各分野の研究から明らかになりつつあります。
2.「認知的スキルで決まる」という思い込み
私たち親は、これまでにもまして不安を抱えています。「非認知的能力が大事」と分かっていても、人気の学校に子どもを入れるためには競争があり、幼児教育は年を追うごとに開始年齢が早まっています。口に出して言われることはあまりありませんが、多くの人々が「能力至上主義」、つまり社会的に成功するかどうかは読み書き計算などの「認知的スキルで決まる」という認識が根底にあるからです。
本書では、家庭が安心安全の場にならなかった、認知的スキルを伸ばす環境に無かった、アメリカの貧しい地域に暮らす子どもたちが登場します。ジャーナリストである著者は、人生を好転させるために振る舞いや行動が少しずつ変わっていく、数名の子どもに注目します。衣食住が不十分であったり、家庭が安心安全の場とならなかった10代の彼・彼女たちは、教師や支援団体の大人たちのサポートにより、自分の将来や進路について考えるようになります。頭の良さとは別のところで、ひたむきに取り組み、目の前の欲求や困難を避けながら将来に目を向けて行動していきます。
「非認知的スキルって何だろう?」
「どうやって非認知的スキルを伸ばせばいいの?」
「なぜこれほど非認知的スキルが大切だと言われているのか、その理由を知りたい」
と思った人は、本書でその重要性とどうやって伸ばせばいいのかがわかります。
自分の将来のために人生を好転させようとする子どもたちの姿を通じて、「非認知的スキル」がどのように彼・彼女たちの人生や行動に影響を与えているのかを知ることができます。
3.親の関わり方で、子どもの「レジリエンス」を育む
親の関わり方が、子どもの将来に大きな影響を与えます。何か特別なことをしなければ!と感じるかもしれませんが、ここで求められているのは「ごく普通の適切な」関わりです。例えば、ジェンガのゲームで一緒に遊んでいるとき、子どもが困っていれば手助けをしたり、楽しめているか?と気遣ったり、子どもの感情の動きに親が敏感でいることが適切な関わりです。
親からの温かく敏感なケアは、子どもが外の世界に出て行くための安全基地となります。生後一ヶ月の赤ちゃんが泣いたとき、親からすぐにしっかりとした反応を受けた場合、泣いても無視された赤ちゃんと比べて、一歳時点で自立心が強く積極的な性格になったという研究結果があります。また、外から受けた刺激に対してのストレス値が低い、つまりストレス要因を跳ね返すことができる「レジリエンス」(しなやかさ)が高いこともわかっています。追跡調査によると、高校生になるまでその効果が続いているとされており、長期間に渡って親の関わりは子どもに影響を与えていることがわかっています。
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4.逆境による「ストレス」が、発達段階の体や脳にダメージを与える
5.成功するための「非認知的スキル」
6.裕福な家庭の子どもが抱える悩み
7.望ましい親の役割とは
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