洋食カレーが食べたい女

「こことここで座りましょう。」
と、声が聞こえたので、並んで座れるように右に一つ、ずれてあげた。
「ありがとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
感じのいい二人組である。

「二駅ずつ降りましょう。」
「降りないよ。時間かかりすぎるでしょ。」

「後、何駅ありますか。」
とかみが茶色の女が聞く。
「後、15駅くらいかな、快速じゃないから」
隣にいる黒髪の女の子が応える。
「じゃあ、無理だ。絶対無理。」
と猫撫で声で茶髪女が黒髪少女に上目遣いで、顔を近づける。
「いや、でも20分くらいだよ。しかも、さっきも行ったじゃん。」
呆れ顔の黒髪少女。
「次の駅で降りましょう。」
「降りないよ。」

「降りましょう。」
「はー、もう、行ってもどうせ出ないだから!」

そう言う彼女たちの後ろ姿を目で追った。この次も、二駅ずつ降りるのだろうか。大変そうだ。今日は季節外れの寒波で、しだれ桜の花が雪を背負っていた。茶髪女も黒髪少女も、大変なものを背負わされたな。と思い鼻で笑い、私は、本に目を落とした。私は何を背負っているのか。

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