【SS】某掲示板にて②（1435文字）

「【SS】某掲示板にて①（2015文字）」の続編となります。

【ゆうき】20：40
はあ、きついな

【みゆぴ】21：02
〉ゆうきさん
大丈夫？

【ゆうき】21：05
〉みゆぴちゃん
え、めっちゃ久々wwwwwwww
元気？

【みゆぴ】21：06
ぼちぼちかな。笑
ゆうきさんはあんま元気じゃなさそうね

【ゆうき】21：06
まあもう年だからねw
親御さんとは結局仲直りできた？

【みゆぴ】21：07
おかげさまで♡
あの後はちゃんと親孝行もしたよ！
いまは多分ふたりで仲良くやってると思う

【ゆうき】21：08
えらいじゃん
てかなんでこの掲示板にいるの？

【みゆぴ】21：08
あれから時々見返してるの
お守りみたいなものかな

【ゆうき】21：09
ふーん、よくわかんないけどw
ダンディマンまじで懐かしーな

【みゆぴ】21：09
ゆうきさんこそなんでいんのよ

【ゆうき】21：09
色々思い出してたんだよね
あの怖いオッサンのこととか、懐かしいなあって思いながらこの掲示板覗いてみたんよ
そんで昔のTwitterみたいな気分でつぶやいちった👍

【みゆぴ】21：10
それをたまたま私が見てたってすごくない？

【ゆうき】21：10
それなw
まあ長く生きてたらこういうこともあるよな

【みゆぴ】21：11
なにがそんなにきついの？

【ゆうき】21：11
ふつうに身体がしんどいw
俺苦しいの無理だからさ、そろそろかなと思ってる

【みゆぴ】21：12
そっかあ
まあこの年になると色々きついよねぇ

【ゆうき】21：12
止めねーのかよ！笑

【みゆぴ】21：13
そこは個人を尊重しなきゃいけないとこだから。笑
でも、ゆうきさんがいなくなったらちょっとだけ寂しいかな

【ゆうき】21：13
ちょっとだけねw
てか結局みゆぴちゃんと飲めなかったなあ

【みゆぴ】21：14
私はまだまだウェルカムだけど？

【ゆうき】21：14
俺の体力がもたねーのw

【みゆぴ】21：15
ジジイ(笑)

【ゆうき】21：16
うっせーよババアw
ババアはもーちょい頑張るの？

【みゆぴ】21：17
ん、私はもう少しだけ頑張る

【ゆうき】21：25
そっか
んじゃ、俺そろそろいくわ
さいごに話せて楽しかった！

がんばれよ

【みゆぴ】21：27
ありがと、またいつか

2127年2月7日　21時30分
前山祐樹ゆうき　
安楽死にて永眠。130歳。

＊＊＊

21時30分。

ナースサンダルを鳴らす音が近づいてくる。
未結みゆの病室の扉が開いた。

「もう、未結さんまたネット見てる。お身体に障るからもう休んでください」
「はいはい、ごめんなさいね。懐かしいひとと話していたの」

緩和ケアで一年以上も入院していると、若い看護師とも気安く話せる仲になる。

「私、未結さんのこと本当に尊敬してるんですよ。この時代に苦しみから逃げないって、すごい勇気ある決断だと思うんです。その分色々無理されてるんですから、早く寝てください！」
「わたしは純粋にまだまだ生きたいだけよ。あなたたちのサポートで痛みも大分ましになってるしね」

そうは言いつつ、身体の節々はやっぱり痛むし、緩和ケアの効果は日に日に薄れている。

（あとどれだけ頑張れるかしら。でも、久しぶりに昔の言葉遣いをしてみたら、何だか若返った気がするわね）

「はあ……未結さんに何言っても無駄か。とにかくもう電気消しますからね！　おやすみなさい、良い夢を」

看護師が強制的に明かりを消して、部屋を出て行った。
暗闇の中でひとり微笑みを浮かべながら、未結はつぶやく。

「私がそちらに行ったら、その時には4人で飲みましょうね。お父さんとゆうきさん、喧嘩にならなければいいけど……」

ー完ー