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ファッションオタクとの邂逅/ディオール展とその周辺の感想

東現美のディオール展に行ってきた。

5/28までの会期で、現時点で前売りチケットは完売。当日券を求めて早朝からたくさんの人が並ぶほど大人気の展示である。
かくいう私も前売りチケット争奪戦に敗れ、巡業先に旅行がてら行くかあ、などとのん気に考えていたのだが、調べてみるとなんと今のところ巡業予定はないというではないか。もうこの先見られる機会はないかもしれませんよ!と言われると俄然見たくなってくるのが人間である。

前売りのキャンセルもたまーに出ているとのことで、サイトを覗きにいくと、たしかにわりと高頻度でキャンセルは出ているようだった。
予約時間の一時間前まではキャンセル料なしでキャンセル可能なので、急に行けなくなってしまった人や、もっといい条件のチケットが取れた人がキャンセルしているのだろう。

が、ほかにもキャンセル待ちを狙っている人がたくさんいるようで、空きの表示があっても購入まではたどり着けないことがほとんどだった。
希望はありそうだったので、暇が出来てはアクセスし、敗れ、また暇が出来てはアクセスし、敗れ……を繰り返していたところ、一週間以上経ったころにようやくチケットを購入することが出来た。

そういうわけで粘れば買えないこともないので、転売には手を出さないで欲しい(調べるとわかるがものすごい値段で売られている)。
キャンセル料なしでキャンセルが出来るのは利用者としては大変ありがたいが、その分転売屋も得するシステムなのが歯痒い。

ワンピースの完璧なかたち

会場はすべて撮影可能なため、いわゆる映えをねらってきている人が多いのかなと想像していたのだが、東京中のお洒落さんが集まってきたんかなと思うくらいファッショナブルな人が多かった。
彼女ら(来場者は9割方女性だった)が夢中で写真を撮っているのを、ああ服のことがすごい好きなんだなあ、と思いながら見ていた。

服のひとつひとつをじっくりとみるというよりは、服を使用したインスタレーションを楽しむ展示だった(と思う)。
会場の装飾含めステキな空間だったけど、もっと間近で洋服の細かいディテールを見たかったなーとも思った。
「作品」だからそういうわけにもいかないんだろうけど……。

たっぷりチュールがたまんねぇ~~~

ディオール展に行った翌々日くらいに、『ディオールと私』という映画を観た。
前から存在は知っていて、勝手にクリスチャン・ディオールの劇映画かと思っていたのだが、実際は2012年にディオールのディレクターになったラフ・シモンズの初めてのコレクションに密着したドキュメンタリー映画だった。

これが結構面白くて、展に行く前にみればよかったなと後悔しつつ(でもこういうのってあとにならないと観る気が起きないんだよな、いつも)オートクチュールの製作と映画の製作は似ているなと思った。

シモンズが監督で、お針子たちは現場の人間。
すべて自分の名前で発表されるためプレッシャーが半端ない監督。
監督の無茶ぶりに振り回されつつ、監督の求めるものを全力で制作しようとする現場。

「明日までに完成するか?」という質問に「いま下半身に取り掛かってる」と答えるなど、誰ひとりイエスとは言わないところがフランスっぽくてなんだかおかしかった。

同性の恋人について当たり前に話せる環境があることも、ファッション業界だからということを差し引いてもとてもフランスらしい。いまだに「理解」レベルでごちゃごちゃやってるどっかの国とはえらい違いである。

ツイッターに書かれた感想を眺めていると、ディレクターで洋服を認識している人もいくらかいて、そういうところもなんだか映画と似ているなと思った。
ディレクターのみならずコレクション(2017年秋冬、みたいなやつ)単位で把握している人なんかもいて、ファッションオタクがどういうふうにファッションを愛好しているのかがよくわかった。

どのドレスもウエストが激細!


ディオール展鑑賞後、コレクション展「被膜虚実/Breathing めぐる呼吸」にも足を運んだが、こちらはディオール展と違ってかなり空いていたため、ゆっくり自分のペースで鑑賞出来て嬉しかった。
ホンマタカシの写真と、モンティエン・ブンマーの異なる薬草の香りを嗅げる複数の小屋?みたいなやつが良かった。
それからでっかい木炭があった。

でっかい木炭 
嗅いでみたがかすかに炭のにおいがした……ような

百瀬文の「山羊を抱く/貧しき文法」のなかで、百瀬さんが食紅を使って模写するシーンがあるんだけど、その絵がめっっっちゃくちゃ上手くてびっくりした。普段制作しているのが絵画じゃなくても、美術作家なら絵が上手くて当然なんだ、と思った。

当然なんだろうか?


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