【博物館美術館訪問記】その1 ねこの博物館~古今東西猫百物語~
こんにちは!いつも見ていただきありがとうございます。最初は使い方がよく分からなかったnoteの記事編集も、段々少しずつ慣れてきました。自分の新たな表現・情報発信の場として活用できつつあります。
今回から【博物館美術館訪問記】と称して、私が訪れた博物館(自然史系・文化系問わず)・美術館について紹介したいと思います。「動物園」「水族館」より更にジャンルや展示方法の違いが大きい「博物館」。このシリーズでは他ではあまり紹介されてない、所謂「マイナー」とよばれる博物館をメインに紹介できればと思っております。
第1回目は「ねこの博物館」。世界で唯一とされる「ねこ」に特化した総合博物館です。ありとあらゆる「ねこ」が展示された面白い博物館だったので、この記事を通して少しでも興味を持っていただければ幸いです。
1.現代に生きる野生の「ねこ」
受付でチケットを購入し、入り口を抜けると目の前に現れる剥製の数々。世界で38種確認されているネコ科の内、28種が生息地別に展示されています。
館内は2階建て。1階に野生ネコ科動物と絶滅種の標本が、2階に世界のねこグッズと愛玩品種イエネコの生体が展示されています。
ちょっと怪しい受付嬢…?
■剥製標本の展示
貴重な世界のネコ科動物の剥製標本が生息地別にジオラマ風に展示されています。
・トラ亜種
圧巻のトラの剥製たち。ベンガルトラ、マレートラ、スマトラトラなどいろいろ。トラ亜種を同時にこれほど展示している博物館は他にないでしょう。
・南米のネコ科
南米に生息するネコ科ゾーン。マーゲイやオセロット、ジャガーなどを展示。彼らが熱帯雨林で樹上生活する様子がよく分かる展示方式です。
オセロット属に分類されるマーゲイの貴重な剥製標本。国内でもこのような剥製標本が見られる場所はほとんどありません。
・北アメリカのネコ科
北アメリカに生息するネコ科ゾーン。ピューマ、カナダオオヤマネコ、ボブキャットの剥製標本が展示されています。
ピューマは北アメリカを代表するネコ科。現地ではAmerican lion(アメリカライオン)とも呼ばれています。
ピューマの幼獣には斑点模様があるのが特徴。
・アフリカのネコ科
アフリカに生息するネコ科ゾーン。ライオンやチーターといった、一般的にもよく知られたネコ科が多い印象です。
耳が特徴的なカラカル。国内で飼育している動物園は少ないです。
やたら跳動感のあるサーバルの剥製標本。野生では得意のジャンプで獲物を捕獲する姿が見られるそう。
・ユーラシアのネコ科
ユーラシアに生息するネコ科ゾーン。マヌルネコやハイイロネコなど小型の種が多いです。
最近知名度が上がりつつあるマヌルネコ。ネコ科の中で最も原始的な種とされています。それにしてもなぜこんなに顔が怖いのだろうか…^^;
こちらのマヌルネコは比較的綺麗なお顔…。
■骨標本の展示
骨標本もかなり充実しています。壁際にずらりと並んだ様子は圧巻です。
上:ジャガー 下:ピューマ
同じネコ科でも顔の大きさや骨の太さなど体格に違いがあることがよく分かります。
頭骨標本はネコ科だけでなく、イヌ科も(少しですが)展示されています。並べて展示されているので比較すると面白いです。
こんな骨標本も展示されていました。この辺はテーマやジャンル問わず雑多な感じがします^^;
■ネコ科写真の展示
2階へと続く階段には壁一面に野生ネコ科動物の写真が飾られています。
クロアシネコやアフリカゴールデンキャットといった国内では見られない貴重な動物の写真も見ることができます。最近話題のスナネコも。
2.太古を生きた野生の「ねこ」
絶滅してしまったネコ科の骨標本も展示されています。国内ではここでしか見られない貴重なものも…!
これら全てが絶滅種の化石標本。様々な古代ネコの仲間の頭骨標本が並べてありました。
スミロドンの全身骨格標本。大型のサーベルタイガーの仲間で、牙の長さは24センチにもなるそうです。
ケーブライオン(ホラアナライオン)。左にあるのが本物の骨標本。右にあるのは複製標本。化石が洞窟内で発見されたことからこの名前がつけられました。この全身骨格標本はロシアのウラル山中のベルム付近の洞窟から得られた化石標本で、日本唯一の貴重なものです。これと同レベルの標本は世界中でも大英博物館など数体しか存在しないそうです。
ちなみに2017年11月15日に放送されたNHKのニュースに紹介されたそうです。
3.キャラクターとしての「ねこ」
2階では「ねこの美術館」と称して、ねこグッズの展示コーナーが設けられています。
様々な「ねこ」のキャラクターたち。ハローキティや黒猫のジジ(魔女の宅急便)、更にはガーフィールドやピンクパンサーなど海外のキャラクターのグッズもあり、幅広いジャンルで展示されています。1階の標本資料に負けず劣らずの収蔵数の多さです。
こちらは世界各国のねこの置物や民芸品を集めたコーナー。色とりどりで姿かたちが様々な「ねこ」たちがたくさんいます。作られた地域ごとに特色が現れるのが面白いですね。「ねこ」という生き物が世界中で愛されていることがよく分かる展示です。
ねこモチーフをメインに造形作品を創作しているクリエイター、伊藤淳子氏の作品。ねこたちの表情が今にも動き出しそう。
4.愛玩動物としての「ねこ」
同じく2階では世界のイエネコ約20種40匹が飼育されています。
入口に貼ってあるねこの博物館STAFF一覧。全ての個体に名前がつけられています。
館内で飼育されているネコたちはケージやガラス越しに観察することが可能です。さらに、触れ合える個体が数頭、交代で外に放たれています。
シャムのひじき♀。個体名だけでなく、各品種についての解説板がしっかりあったので、博物館らしさが感じられました。
オシキャットのジョム♀。アビシニアン、シャム、アメリカン・ショートヘアを交配して生まれた珍しい品種です。
ベンガルのよもぎ♀。野生種のヤマネコとイエネコを交配して生まれたとされる品種です。
メインクーンのティアラ♀イエネコの中で最大の大きさになるとされる品種です。
■展示方法についての問題点
こちらのコーナーですが、ねこの展示方法について少し気になった点がありました。
触れ合い用のネコたち。首輪とリードで終始繋がれた状態でした。囲いのない状態で外に放飼されており、そこら中を動き回ると危ないからでしょうか?怪我防止にはなるかと思いますが、なんだか窮屈そうな感じ。「触れ合い用の囲いを作り、そこに数頭放し飼いする」「普段はケージ内に飼育した状態のみの展示で、触れ合いたい時のみ係の人に声をかけてケージ外に出してもらう」など、何か対策をとってネコたちの負担を少しでも減らして欲しいなと思いました。
一応「リフレッシュ休暇日」と称して、交代でネコたちがバックヤードで休憩できるようになっています。ねこも来館者も、双方が気持ちよく接することができるシステムになって欲しいです。
5.古今東西「ねこ」百物語
「ねこの博物館」いかがだったでしょうか?
ネコ科の剥製や標本の収蔵数においてはおそらく世界一を誇る自然史博物館の要素を持ちながら、民芸品やキャラクター雑貨などを集めた文科史博物館の要素も持ち合わせるまさに「ねこ」の総合博物館といった感じでした。
一言で表すと「古今東西猫百物語」といったところでしょうか…?
ありとあらゆる「ねこ」たちの物語が詰まった博物館。太古の時代から生きている存在だからこそ、昔から人々に愛されている存在だからこそ、これほどの充実した展示=物語があるのだと感じました。少々雑多に展示されているところがあったり、イエネコの生体展示に関して改善してほしいところもありましたが、想像以上に見応えのある展示が多かったのでおすすめしたい博物館です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!次回の更新もお楽しみに。