クロスの7-8ヤード理論
以前いかにもイングランドらしい理論だなって思ったものに出会ったのでご紹介します。
ただし注意事項があります。この記事はクリティカル(批判的)に読んでほしいです。
目次の最後にもあるように、僕はこの理論を導入して失敗した過去があります。
失敗したからといって悪い理論だということではありません。うまくいった人がいるから理論になっているので。
「これはうちのチームでは使えるのか?使えないのか?」といった視点を持って読み進めてください。
クロスの7-8ヤード理論
簡単に言ってしまえば、「ゴールラインから7から8ヤードごとにエリアを区切って、それぞれにクロスの球種の基準を与える」といった理論です。
1ヤードおよそ90センチで、ゴールエリアは縦6ヤード、PAは18ヤードなので、その辺を基準にしてください笑
詳しく見ていきましょう。
Driven
これは、バックスピンのかかった低いライナー性の球種です。
このエリアはゴールラインからおよそ21から32ヤード離れているので、勢いのあるボールを蹴りこまなければいけません。
しかし山なりのボールや、インフロントで蹴ったカーブのかかったボールでは、味方に到達するのに時間がかかり、相手に対応する時間を与えてしまいます。
なのでインステップでライナー性のボールを蹴った方がいいよね?っていうことです。
Curled
イメージとしてはデブルイネやアレクサンダー・アーノルド、古くはベッカムなどの浮かせて巻いた球種です。クロスと言えばこの球種でしょう。
一応浮かせたボールと書きましたが、DFの状況によってはGK-DF間に低いボールを入れてもいいやつです。あくまでも基準です。
Floated/Low
これもDFの状況次第ですが、相手のラインが下がっていればさっきのカーブよりも勢いを落とした浮き球。GK-DF間が空いていれば低い速いボールがこのエリアの基準です。
Cut back, Stand up
Cut back とはマイナスのクロス、Stand upとはチップキックっぽい緩いファーへのクロスです。
このエリアまでボールを運べばDFラインは下がりきっていることがほとんどなので、下がった逆のマイナスや、キーパーとDFの頭上を越したファーへのクロスが有効になります。
クロスの基準作りのメリット・デメリット
この基準を作ってあげることでクロッサーに迷いを消してあげることができるかもしれません。それだけでなく、PA内にいる選手もどのような球種が飛んでくるかを予想できることで最善の準備ができるようになることが、この基準作りのメリットだと思っています。
ただし、ファイナルサードはスペースも時間も少なく、このような判断を一瞬でできるのか?逆に情報を与えすぎてしまっているのではないか?ということがデメリットとしてあげられます。
なぜファーへのクロスにこだわったのか
ゴールの統計的に黒いエリアで多くの得点が生まれていることがわかっています (Hughes 1990)。イングランドでは Prime Target Area と呼ばれています。古い統計ではありますが、現代サッカーでも近い数字が出ています。
そして赤いエリアは Prime Scoring Area と呼ばれ、クロスではここから得点が多く生まれています。
練習デザイン
この理論を練習するのであれば、フェーズ・もしくはファンクションが適当だと思っています。フェーズ、ファンクションの用語が不明な方はこちらから確認してください。
真ん中から配球し、サイドで2v1からフリーを作り出して、エリアに応じたクロスを上げてもらいます。中は3v2。右に行ったら次は左へ。といった流れでしょうか。
僕の失敗
僕がこの理論を知ったのはまだジュニアやジュニアユースの年代を指導している時でした。
すごくおもしろそうな理論だったので、「大人でこれをやってみたい」という気持ちがありました。
昨シーズン女子大学生の指導に就いた際にやってみようと思ったわけです。が、ものの見事にうまくいきませんでした。
原因は僕の分析・観察不足です。彼女たちにそれだけのキック力が備わっておらず、現象が全く起きなかったのです。
あらかじめ言っておきますが、女性だからうまく行かなかったと言っているわけではありません。女子でもできるチームもあるでしょう。僕の指導していた選手たちができないものを僕が導入してしまったのです。
つまり、「理論というものは自分のいる環境に適したものでないとうまく行かない」という当たり前のことをこのことから学びました。選手たちには申し訳ないことをしたと思っています。
だからこの理論がおもしろいと思ってくださっても、自分のチームに合わないならゴミ箱に捨ててください。
男子でも女子でもうまくいく事といかない事があります。
だから初めに「批判的に読んでください」と書きました。あの練習デザインだってうまくいく保証はありません。練習は自分で考えましょう。
最後に
終わりの方はちょっとネガティブになってしまいました笑
言いたかったことは、どんな理論も完璧はないよってことです。
戦ピリだって、ポジショナルプレーだって、ティキタカだって、ロングボールだって、ゲーゲンプレスだって、ドン引き Park the bus だって。
完コピしたらうまくいく理論なんてないので、批判的に読みつつ使えそうなことを自分の環境にうまく適応させるのがいいコーチなのではないかな?っていうのを、僕を反面教師としてわかっていただけたらなと思い、今回の記事を締めさせていただきます。
ありがとうございました。
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