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究極の癒しを求めてひとり旅-日本最南端 波照間島-
海と癒しの歴史
疲れたとき、失恋したとき、なぜだか「海へ行きたい」と思った経験がないだろうか?
海が人を癒してくれる効果については研究報告がなされており、フランスでは「海洋療法:タラソテラピー」に保険が適用されている。
日本でも江戸時代から「潮湯治」という文化があり、海水浴の原点ともされている。
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昔から人間は海に生かされて、癒されてきた。
かつての自身も海に心を癒された経験から、嫌いだった海を愛するようになった。
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昔は海が嫌いだった。
沖縄移住も3年目。
休日が近づくと天気や海況とにらめっこ。
海で遊ぶことばかり考えるぜいたくな生活。
だけど、ぼくは小さな頃から海が嫌いだった。
アトピーを持って生まれたぼくは、幼い頃から服や布団を血だらけにしていた。
幼少期の生活療養で、とりわけ苦い思い出に残っているのが「海水浴」だ。
昔から母親がダイビングを好きだったこともあり、小さな頃によく家族で海水浴へ行っていた。アトピー治療には海水浴でミネラルを取り込むことが有効とされているので、カラダのためを思って連れて行ってくれていたのだと思う。
海水浴に対するぼくの記憶は「こわい」「いやだ」というネガティブな感情で、楽しい思い出は何一つない。
その影響か、大人になってもぼくは海が嫌いだった。
それなのに、今では休みのたびに海へ通い、ライフワークとして沖縄の海を守る観客活動へ参加している。
何がぼくの人生を、大きく変えたのか。
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癒しをもとめて現実逃避
社会人一年目で就職した会社は、絵に描いたようなブラック企業。
休日のボランティア活動や、業務前後の勉強会へ参加することが、任意という名の必須課題だった。
さらに自分自身が「曖昧」「テキトー」を許せない性格だったこともあり、自らストレスを溜め続けて心を壊した。
生きる楽しさや自分の存在意義まで問いはじめ、会社を離れることを決めた。
そんなとき、だれに言われるでもなく「とにかく遠いところへ行きたい」と思い立つ。
そこで決めた旅先が、有人最南端の波照間島だった。
これが人生の一人旅。不安だらけのはずだった仕事へ行くことを考えると動かなかったカラダも、旅となればとても軽かった。
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波照間島の行き方
東京から約2000km離れた、離島というより孤島が正しい波照間島(はてるま島)。
島の名前は、【果て+うるま(サンゴ)イゴールはてるま島】が由来の一説と言われている。
飛行機はないので移動は高速船のみ。
海が荒れやすく、欠航も珍しくない。
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バリバリと波を割るように走る当時の高速船「ぱいかじ」
安栄観光「ぱいかじ2」
石垣島離島ターミナルから1日3便
■所要時間:片道60〜80分
■運賃 :大人片道4070円
■石垣発 :8:00、11:45、15:30
■波照間発:9:50、13:15、17:20
運行状況の詳細は、直接の問い合わせがおすすめ
天国との出会い
当時は古い船で、石垣島から高速船で2時間。
シートから体が浮き上がるような荒波を越えて、波照間島に到着。
まず向かった先は、島で一番人気のニシ浜ビーチ。
永遠に歩いていけそうなほどに遠浅で透き通った青い海を、旅人は「波照間ブルー」と呼ぶ。思わず、「天国みたい」と呟いてしまうほどの海だった。
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やさしい南風に身を任せ、とにかくぼーっとしてみた。
島に上陸して数分後、「生きていてよかった」と思った。
打ち寄せる波に足を浸けているだけで、なぜか生きる力が湧いてきた。
目線を下ろすと、水色の小さな魚が数匹の群れで行ったり来たり。
流れに抗うでもなく、身を委ねながら、うまく波に乗りながら自由に泳いでいた。
「そうか。こういう生き方もあるのか」
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何もしないを楽しむということ
宿は初めてのゲストハウス。
寝室には時計もTVもない。
宿泊客はテラスでゆんたく(おしゃべり)をする人、PCで仕事をする人、昼からビールを飲む人など思い思いに過ごしていた。
夕飯の時間をたずねると、「日が暮れてからでいいよ」
常に分刻みで電車の時刻表と争っていたぼくには、時間が決まっていないことに戸惑った。
雨が降れば行くところも、することもない。
宿のテラスで雨音を聞きながら、オリオンビールとかっぱえびせんを食べながらぼーっとして過ごした。
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「全力でがんばることが正しい」
「時間の無駄がないようにどうしたらいいか」
そんな価値観を強く握っていたぼくには、離島のすべてが衝撃だった。
「旅行へ来たのに何もしないの?」
「時間が決まってないって、どういうこと?」
はじめは戸惑いばかりだった。
しかし、自転車で島をまわるうちに、テキトーに身を委ねる感覚が心地良くなっていく。
野生のヤギ親子、4月に満開のひまわり
どこまでも一本道のサトウキビロード
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すれ違う人もなければ、人工的な音が聴こえない。
サトウキビの葉が擦れる音と、遠くに聴こえるさざなみだけが島のBGM。
ここには時間というものが存在するのだろうか?
本気でそう思った。
すべてが新鮮で、とにかくおもしろかった。
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海にココロを救われた
はじめてシュノーケリングにも挑戦したくなった。
海が嫌いだったはずのぼくが、気づけばビーチへ急いでいた。
波照間ブルーに心を打たれ、伸び伸びと泳ぐ生きものに魅せられ、180度人生が変わった。
無重力の水中では、あらゆるものからの解放感が快感だった。
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初めてウミガメに出会った時の感動一生忘れない。
あんなにも嫌いだった海という世界が、当時のぼくに必要だったのかもしれない。
忙しなく毎日を何かに追われ、生きづらさを抱える人間。
姿カタチが異なる生きものが、争いや差別もなく、互いのために自由に共生する海。
こんなに豊かな世界があるのか、と衝撃を受けた。
それと同時に、「こんなふうに過ごせたら、もっと生きやすいのかな」
海と自分の人生を重ね合わせてみた。
それから海は、ぼくのパワースポットになった。
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沖縄はウェルネスの聖地
近年では、「デジタルデトックス」「リトリート」「浄化」など、海とウェルネスの関連性に注目が集まっている。
実際に、
・海のある土地へ行く
・海のそばを歩いてみる
・砂浜の上で立つ、歩く
これだけで海の恩恵を受けて、心身にリラクゼーションや健康効果があるというものだ。
沖縄の琉球大学でも荒川教授はじめ専門的な研究者が、沖縄旅行×ウェルネスが持つ可能性について研究を進めている。
きれいな海があるだけでなく、心と身体を豊かにしてくれる亜熱帯気候の沖縄。
ぼくはまさに、沖縄が持つ海の力で生き返った。
離島の旅がくれたもの
滞在期間はたった2泊だが、疲れ切っていたぼくは帰る頃には毎日が楽しみになっていた。
「がんばるために、休むことが必要なんだよ」
「もっとテキトーに生きなさい」
自分を追い込み生きづらさを抱えていたぼくに、波照間島という環境が、楽に生きるためのヒントとパワーをもらった。
まちがいなく波照間島の旅が、海を愛するきっかけになった。
心にゆとりを持ち、人生を楽しめるようになった今は、自分を救ってくれた沖縄の海に恩返しをしたいと考えている。
また、沖縄での旅を通して一人でも多くの人が、豊かに生きていくきっかけを作りたいと思っている。
これからも、海と人が豊かに生きるためのヒントを探して島旅を続けていきたい。
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