18時から

学校から近い位置に家があるので、この時間になると「ばいばーい」「またねー!」と生徒たちの声が聞こえる。私が学生の頃は、寮生活だったのでこの時間まで一緒にいれなかったなぁとか、私と学校でバイバイしてからみんな何してたって言ってたかなぁなんてことを薄ぼんやり考えながら瞼を閉じた。

出席番号順に並んだ窓際の一番後ろの席に座りながら、日本史の教科書を広げている彼女。後ろの席へ体を向けて一緒に教科書を眺める私。窓を開けているせいで部活動をしている生徒たちの声が聞こえるが、テスト前だからか休んでいる部活も多くいつもより少し疎らだ。
日本史が得意な彼女は、いつも物語を子供に聞かせるようにして、私に話してくれる。何人かで集まってそれをきいてた時、「えっその人悪くないのに可哀想!」なんて言っちゃって、テストの出題範囲に関係ないのにWikipediaで調べてみたりしたっけ。「ちゃんと報いを受けるべきことしてたね、同情する必要ないよ」って言われて「なーんだ笑」って皆でわらったよね。結局テストに名前だけ出題された時には、思わず笑っちゃいそうなくらい嬉しくなって、テスト終わりに目が合ったっけ。
カーテンが風で揺れて鬱陶しいって怒ったり、窓際って虫入ってくるから嫌だよねって文句言いながら、毎回私の後ろの席にわざわざ座ってきてテスト勉強するんだもん。はいはいって言いながら私が窓閉めて、勉強中に人の声聞いてると集中出来ないなんて思ってた時もあったけど、教科書の味気ない文章より、相槌を入れながら読んでくれる方が記憶を取り出しやすくなってた。

「〇〇ちゃん、聞いてる?」
その声にハッとして、目が覚めた。真っ暗な部屋に横たわっている私は、休日に夕寝したことに気付いて脱力する。枕元にあった携帯で時間を確認するついでに、メッセージを送っておいた。
「ねぇ、今度本屋さん行って日本史の教科書見てみようよ」

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