バイオリン講師ってどんな仕事?ドイツのハンブルク公立音楽学校での仕事内容
今回は、私の仕事「バイオリン講師」について、お話したいと思います。
バイオリン講師ってなにしてるの?
給料や福利厚生ってどうなっているの?
と気になっている方は、ぜひ参考にしてみてください。
簡単な自己紹介
私は2020年1月からハンブルク公立音楽学校(Staatliche Jugendmusikschule Hamburg)でバイオリン常勤講師をしています。
バイオリンを始めたのは6歳の頃。当時はバイオリンの他にもピアノやスイミングなど、さまざまな習い事をしていましたが、10歳の時、他の習い事を辞め、バイオリンだけを続けることを決めました。
その後もバイオリンを続け、紆余曲折がありつつも、高校を卒業後、18歳の時に単身ドイツにバイオリン留学することを決意しました。
しかし、ドイツに渡ったものの、音大への入学が決まっていたわけでもなかったため、その後2年間は、ドイツ国内のほぼすべての音大に願書を提出し、入試を受けまくる日々が続きました。
その結果、2009年9月、ついにハンブルクの音大に合格!入学後はバイオリンとドイツ語の勉強で多忙な日々を過ごし、2015年7月に無事、卒業することができました。
ただし卒業後、すぐに現在のハンブルク公立音楽学校でバイオリン講師として勤務できたわけではなく、2年制ビザを更新しながら職探しを続け、この先どうしようか...日本に戻るべきなのか...と悩む時期が続きました。
そんなある日、突然、ハンブルク公立音楽学校から「非常勤講師として働く気はありますか?」という電話がありました!
「なぜ私に電話が?」と思いましたが、実は4~5年前に、常勤講師の募集が出ていたハンブルク公立音楽学校に応募していて、当時の履歴書がきっかけとなり、私に電話がかかってきたのです。
このような流れで、現在勤めるハンブルク公立音楽学校のバイオリン講師として働く機会を得ました!
2020年1月からはハンブルク公立音楽学校にて、バイオリン常勤講師として働き始めることができたため、ドイツでの永住ビザを取得し、現在に至るという流れになりました。
詳しくは、【自己紹介】私がドイツへ移住した理由のページもチェックしてみてください。
ハンブルク公立音楽学校について
簡単に、私の勤務するハンブルク公立音楽学校について紹介します。
ハンブルク公立音楽学校は、ドイツ・ハンブルク州にある公立運営の音楽学校です。8つの部署(本部・北・北東・北西・東・西・南・南東)から成り立っている音楽学校で、ハンブルク州全土の学校にて、レッスンが行われています。
公立運営のため、私たち講師の給料と福利厚生は「Tarifvertrag für den Öffentlichen Dienst der Länder」という労働協約に基づいてきまります。この協約には、インフレへの対応策も含まれており、給料の年次見直しが行われます。
さらに、私たち講師はライフプランに応じて仕事量を調整することができます。
たとえば、私の場合は最大値100%の仕事契約書を結んでいるため、週5日25時間のレッスンを受け持っています。100%の仕事契約であれば、家賃高騰が続いているドイツであっても、家賃を月収の1/3〜1/4に抑えることができるため、物価高のヨーロッパでも、特に不自由なく生活することができています。
一方で、将来は演奏家として活動したいと希望する私の同僚は、演奏練習時間を確保するために仕事量を20%に抑えた仕事契約書を結んでおり、週1日5時間のレッスンを受け持っています。
このように、私の勤務するハンブルク公立音楽学校では、講師たちそれぞれのライフプランに合わせた柔軟な勤務体系を選べるため、働きやすい環境が整っています。
バイオリン常勤講師の仕事内容
2020年1月よりバイオリンの常勤講師として勤務を開始し、その時から現在に至るまで、私が担当しているレッスン内容についてお話ししたいと思います。
個人レッスン
グループレッスン
小学校とコーポレーションで行われるグループレッスン
オーケストラレッスン
音楽学校の研修
その他いろいろ
それぞれの仕事内容をちょっと詳しくご紹介します。
1. 個人レッスン
個人レッスンは毎週、30分、45分、または60分のセッションで行われており、対象年齢は5歳から21歳です。
レベルは幅広く、完全な初心者から音楽大学の学部であるシュルムジーク(Schulmusik)の入試準備レベルまでカバーしています。
なお、シュルムジークとは、学校の教員を養成するコースです。
2. グループレッスン
グループレッスンも毎週、30分または45分のセッションで行われており、対象年齢は6歳から15歳です。
参加する生徒の年齢やレベルが均等になるように学校側が調整を行っており、主にバイオリン初心者が多いです。レッスンは2人、3人、5人の小グループで行われます。
3. 小学校とコーポレーションで行われるグループレッスン
ハンブルク公立音楽学校は、他にも提携している小学校とグループレッスンを行っています。
バールスハイデ小学校
ブルグンダーヴェック小学校
それぞれの小学校でレッスン形態がちょっと違いますので、簡単に紹介します。
バールスハイデ小学校
バールスハイデ小学校では、週に一度35分間、学校の楽器庫にある楽器でグループレッスンが開かれています。子供たちはバイオリン、ギター、パーカッションを使って年に2回の合同発表会に向けて練習します。
発表会では楽器演奏だけでなく、合唱やダンスも披露されます。特に注目すべきは、この学校のアプローチで、生徒は楽器を持ち帰って練習することが禁止されており、自分の楽器を持つ必要もありません。これにより、バイオリンのように練習が難しく、高価な楽器が、手軽に楽しめるようになっています。
このユニークなコンセプトは、バイオリンをもっと身近で、アクセスしやすい楽器として親しませる素晴らしい取り組みだと思います。
ブルグンダーヴェック小学校
ブルグンダーヴェック小学校では、毎週金曜日の午前中に45分間のグループレッスンが行われています。参加する子供たちは9歳から10歳で、各グループは5人から7人で構成されています。
バールスハイデ小学校と異なり、ブルグンダーヴェック小学校では、子供たちが自分の楽器を購入するか、楽器工房から借りてレッスンに参加します。このため、自宅での練習が必要な曲が多く扱われ、初心者でもしっかりとした準備が求められます。
日々毎日通う学校で、必ずバイオリンに触れる時間があり、自然と楽器を手にする習慣がつくのが良い点だなと感じています。
4. オーケストラレッスン
ハンブルク公立音楽学校の生徒は、オーケストラのレッスンを無料で受けることができます。在籍していない生徒も月額12ユーロ(約2000円)で参加可能です。
オーケストラレッスンは毎週1時間(A, B, Cオーケストラ、弦楽オーケストラ)、または1.5から2時間(総合オーケストラ)開講されます。
レッスンはレベルに応じてAから総合オーケストラまで6段階に分かれています。
A(初心者)
B(中級者)
C(中〜上級者)
弦楽オーケストラ(超上級者)
総合オーケストラ(長年弾いてきたティーンエイジャーで構成。エルプフィルハーモニー・ファミリーオーケストラとのコラボ運営で、吹奏・打楽器も加わった、完全オーケストラ)
私は西支部・Bオーケストラの指導を受け持っています。
Bオーケストラは中級レベルで、主に10歳から14歳の生徒による弦楽アンサンブルです。このオーケストラ用には、「Dorico」という作曲ソフトを使用して、各生徒のレベルに合わせた楽譜を作成しています。また、年に2回、発表会に参加しており、都度異なるプログラムを準備するため、自宅での作業時間も不可欠です。
作曲ソフトにまだ完全に慣れておらず、すべての楽譜を完成させるのに最長で、3時間かかることもありました。これからはこのソフトの使用頻度を増やし、より効率的にアレンジができるように、スキルを磨いていきたいと考えています。
5. 音楽学校の研修
最後に、ハンブルク公立音楽学校では、楽器のレッスンだけでなく、研修への参加も業務の一部として含まれており、私たち講師は年間30時間の研修を受けることが義務付けられています。
※過去に受けた研修のお話はこちら
研修は主に週末に行われ、休日を大切にするドイツの文化の中でも、学びの時間は正式な業務時間とみなされ、ちゃんと給与が支払われます。
毎年、重複することなく様々なテーマが用意されるため、新鮮な気持ちで参加でき、新しい発見や学びがあるのが魅力です。
研修で得た知識は実際のレッスンにも活用され、教師の指導力が向上することで、生徒とのレッスンがより活性化されます。これがハンブルク公立音楽学校全体の教育品質の向上維持に繋がっていると感じています。
6. その他いろいろ
これまでに紹介した楽器のレッスンや年30時間の研修以外にも、私たち講師にはやらなければいけない業務が、まだまだあります。
部署別や楽器別で行われる会議の出席
発表会の準備
年に1回開催の検定テストの審査員、及び生徒指導
年に1回開催の保護者面談
オープンスクール、オーケストラワークショップのスタッフ業務など
私の職場では日々のメールチェックが欠かせません。迅速な対応が求められるため、メールだけでは解決しない急ぎの案件が発生すると、レッスン前に上層部から直接電話がかかってくることもあります。
特に大変だと感じているのは、保護者面談です。生徒数が多く、約50人の生徒の家族と面談を行う必要があります。面談前には話す内容や予想される質問を事前に準備し、毎年この時期は緊張とストレスが増します。そのため、6週間に及ぶ夏休み前にこれらの面談を行い、夏休みを前にした一大イベントとして乗り切っています。
一方、私はバイオリン奏者としても活動しており、音楽学校での勤務と並行して、代行レッスン、プライベートレッスン、オーケストラ、自主開催のコンサートを開催しています。
このように忙しい日々を送る中で、過去や未来に思いを馳せる余裕はなく、「今この瞬間」を全力で楽しむ生活を心がけています。
余談ですが、もともとはこのような前向きな性格ではありませんでした。公立音楽学校での勤務を始めてから、自然と肯定的な考え方が増えてきました。
職場だけでなく、プライベートでも、同じ考えを持つ仲間や生徒、そしてその生徒さんの家族との関わりを大切にし、これからも音楽活動を通じて人生を豊かにしていきたいと思います。
個人レッスンもやってます
最後に、私が行っている個人レッスンについてご紹介します。
私はハンブルク公立音楽学校の勤務とは別に、個人で「オンラインレッスン」と「対面レッスン」を開講しています。
オンラインレッスン
私のオンラインレッスンは、以下のような方におすすめしています。
遠方からでもレッスンを受けたい
フレキシブルにレッスン日程を決めたい
移動や準備時間を節約したい
毎週末にフェイスタイムを使用したオンラインレッスンを開催しています。
ただし、研修やオーケストラの演奏、自主開催のコンサートなど、音楽学校以外の活動も週末に予定することもあるため、レッスンの日時は都度、生徒さんと調整して決めています。
対面レッスン
私の対面レッスンは、以下のような方におすすめしています。
ハンブルクに住んでいて、先生と直接一緒に演奏してレッスンを受けたい
コンスタントに毎週受けて、計画的にステップアップしていきたい
その場に一緒にいながら、解決できること(例えば楽器メンテナンスの相談や楽器の選定、バイオリン備品の説明紹介など)を明快に理解したい
対面レッスンは、平日にハンブルクの私の自宅で行っています。
なお、平日は音楽学校で週25時間勤務しているため空き時間が少なく、現在対面レッスンを受講いただいている生徒さんは1人だけです。
この生徒さんは、対面レッスンを通じて直接先生の演奏を聞くことでより多くを吸収できると感じており、すでに4年近くレッスンに通い続けていただいています。
お問い合わせ
私が提供するバイオリンレッスンの詳細は、Noteやホームページでも、紹介しています♪
私が現在、公立音楽学校での勤務、コンサート、オーケストラなど、幅広く活動させていただいていているのも、ハンブルク音大で学んだ指導法や経験がしっかりとした基盤となっているおかげだと実感しています。
また、レッスンを通じて、生徒から紹介される新しい曲を演奏したビデオを作成し、YouTubeにアップロードしているので、興味がある方はチェックしてみてください。
これから出会う新しい生徒との時間も、非常に楽しみにしています。
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最後までご覧いただきありがとうございました!
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