たまに観る映画レビュー『母と暮らせば』
この三連休、風邪気味ながらもいろいろな用事を済ませて三日目の今日はお昼過ぎからめでたく完全オフ! せっかくだから映画でも観ようかな?とAmazonPrimeを検索。吉永小百合さんの『母と暮らせば』が上がってきたので、「あ、観たかったあれだ!」と思い込んで決定。ニノが登場した時点でも”アレ”ではないと気づかず、しばらく進行してしまい、そのまま惹きこまれて最後まで観てしまいました…。ちなみに、”アレ”とは、吉永小百合さんが初めておばあさん役を演じられたという、大泉洋さんと母子役の『こんにちは、母さん』。こちらは、また近いうちに…。
長崎の原爆投下の悲劇から続くお話。いかにも、こういうことはあっただろうと思われるストーリーです。
医学生として大学で授業を受けている最中に原爆で亡くなった息子を二宮さんが演じています。ニノファンってわけじゃないけれど、ニノ主演の映画、いくつか観ていて、演技派と評されるだけあって本当に良い役者さんだと思います。
舞台が長崎で、墓標に記された名前や、お食事・就寝前のお祈り、また教会でのシーンから、この家族もカソリックのクリスチャンであるという設定は一目瞭然。でも会話の中にそれらしい要素はないかな~と、プロテスタントの私は個人的に思うのですが、それはカソリックとプロテスタントの違いからなのか、そもそも、設定以上の、信仰的なものが映画に含まれていないからなのか、わかりません。なんとなく後者な気はします…。
別にストーリーに文句つけるつもりはありませんが、本当にクリスチャンだったらそもそも死んだ息子が幽霊になって出てくる時点で、それはない、です。真の信仰があったなら、どんなに会いたい母親でも、未練の残る恋人が地上にいても、天国から戻って来る選択はないはず…なのですが、そこに注目しちゃうと映画自体を鑑賞できないので、パス。
ということで上記はさておき、映画として鑑賞する分には十分良いお話です。あり得ない設定ながらも(苦笑)、母と息子の会話、お互いへの思いやり、生きていても死んでいても人間としての辛い思いを抱えてて、それと向き合い…という設定が、心に沁みます。
母子の会話の、二人の思いの中心が、息子が残していった恋人の女性のことで、そのけなげな若い娘を黒木華さんが可憐に演じています。こういう役が本当に似合う役者さんだなあと思います。
亡くなった恋人を思い続けて嫁のように自分を気遣い世話を焼いてくれるその子を実の娘のように・嫁のように愛しく思いつつも、やっぱり幸せになって欲しい、そうあるべきと思って幽霊の息子に彼女を諦めて幸せを祈るように説いて聞かせるお母さんの思いと、一方で辛い心情もよくわかる。
最初は反発しながらも段々と彼女の幸せのために諦める息子も、幽霊ながら、もし心が残っていたとしたらそうなんだろうなあと思わされて、一緒に哀しくなってしまいました。
敗戦直後の暮らしの事情-乏しい衣食住事情や、話には聞く闇商売のこと、小さな子供が父親の戦死の知らせを家族の代表として聞かされる悲痛な状況などなど-も織り込まれているので、改めて、あの頃の厳しい時代を生きてきた方々のことに思いを馳せながら、ふと、ウクライナとイスラエルの地では、今まさに、これが進行していることを思うと、一刻も早く戦争が終わるようにと祈らずにいられません。
息子が幽霊になってお母さんのところに現れて昔話や、もはや自分が幸せにすることが叶わない恋人の今後について会話するという設定自体が夢物語ではありますが、最後の、寂しさ極まった母が世を去るシーンは、夢物語に拍車掛かり過ぎ、な印象を受けました。でも山田洋二監督が、このお母さんのためにそういう優しいエンディングを用意してあげたかったのかなあ、なんて思ったりして。いずれにしても夢物語なんだから、思い切り夢物語でいいのでしょう。
毎日、なんとなくルーティンに過ぎていくだけの生活に意味があるのかしらん?とつい思うことも、正直、よくあるのですが、でも、かなり物騒さが増したとはいえ、世界の中での比較でいうなら、まだ平和なほうな今の日本に暮らしていられるのは、この映画で描かれている時代に生きていらした方々の悲しみや苦労や犠牲の上にあることをいまさら、思わされました。同時に、繰り返しになりますが、ウクライナやイスラエルで進行中の悲劇と不幸の一刻も早い終結を祈ります。
うちの牧師先生が山田洋二監督の大ファンなせいで、いくつか勧められるままに観ているのですが、この作品も本当にしみじみ良かったです。また観たいリストに入れておきます。
そして、吉永小百合さんと大泉洋さんの母子ドラマも観てみなくちゃ!
冒頭の写真は、何年か前に長崎を訪れた時に自分で撮った大浦天主堂です。映画の中で、幽霊のニノが、生前に彼女と結婚式の相談をした時のことを嬉しそうに母に語るのです「結婚式は絶対、大浦天主堂で映画みたいな真っ白いドレスを着せてあげたい…」って。切なかった…。