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for serendipity724「生ましめんかな 原子爆弾秘話(詩・栗原貞子)」
8月6日に、原爆詩人の一人といわれた栗原貞子さんの詩「生ましめんかな」をブログやフェイスブックで紹介するようになって10年以上経っています。詩に出てくる産婆さんに、僕は提唱する「半農半X」コンセプトでいう「エックスなるもの」を感じてきました。ぼくたちもあの産婆さんのようにいきなければと。今年はnoteでも8月6日に、こころをこめて贈りたいと思います。
***
生ましめんかな 原子爆弾秘話
栗原 貞子
こわれたビルディングの地下室の夜であった。
原子爆弾の負傷者達は
ローソク一本ない暗い地下室を
うずめていっぱいだった
生ぐさい血のにおい、死臭、汗臭い人いきれ、うめき声
その中から不思議な声が聞こえて来た。
「赤ん坊が生まれる」と云うのだ。
この地獄のそこのような地下室で今、若い女が
産気づいているのだ。
マッチ一本ないくらがりでどうしたらいいのだろう
人々は自分の痛みを忘れて気づかった。
と、「私が産婆です、私が生ませましょう」と云ったのは
さっきまでうめいていた重傷者だ。
かくてくらがりの地獄の底で新しい生命は生まれた。
かくてあかつきを待たず産婆は血まみれのまま死んだ。
生ましめんかな
生ましめんかな
己が命捨つとも
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己が命捨つとも。
「半農半X」のエックスとは、
この産婆さんのようでありたいと思うのでした。
これからもこの詩のことを
半農半Xの精神をあらわす象徴としても
伝えていきたいと思っています。
数年前より、一人娘が広島で就職をして、
年に数回、広島に行くようになりました。
写真は散歩時、撮影したものです。
(塩見直紀)