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for serendipity981「ジョゼフ・ドロルムの生涯と詩と想念」

詩人・佐々木幹郎さんの『中原中也~沈黙の音楽』(2017)に紹介されていた中也の印象的な逸話より。中原中也は思いがけなく、30歳の若さで病気で帰天します。死んでしまうとも知らない1か月前、友人・小林秀雄のもとを訪ね、「いつか本になれば」と詩集『在りし日の歌』の原稿を託します。「自分が持っているよりいいだろう」と。そのころ、中也はフランス語の勉強をしていて、ひかれる仏文をノートに練習筆記していました。そのなか、サント・ブーヴの『ジョゼフ・ドロルムの生涯と詩と想念』があったそうです。それはサント・ブーヴが架空につくったジョゼフ・ドロルムという若い詩人の追悼のための詩集という設定です。若い詩人が書き遺した手記を「生涯」と「詩篇」と「想念」の章にわけ、友人たちが一冊の本にしたという体裁の本でした。虫の知らせか、中也は小林秀雄に没後、本になる原稿を渡しにやってくる。中也はその1か月後に思いがけず、病気で帰天することに。預けず、自分で持っていたら、本になったかわからない。埋もれ、焼失するかもしれないし、金子みすゞのように発掘されたかもしれない。佐々木幹郎さんの『中原中也~沈黙の音楽』はまた読み返したい本になりました。



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