会社辞めてからようやく「競争心」が生まれた話

 今まで誰かに対して競争心を抱くことに、一種の罪悪感がありました。「勝ってやる!絶対追い抜かしてやる!」と思うのは、争いのもとになるんじゃないかという不安がありました。
 そんな私の中にようやく抑圧されることのない「競争心」が生まれたのが、会社を辞めてからでした。辞める際にこんなことを言われたのです。
「こんな辞め方したらもう二度とグラフィックデザイン・DTP業界に居られなくなるよ」
「こんなことでくじけるようじゃ、どこへ行ったって仕事なんてできない」
 この言葉で、「じゃあこの会社にいる誰よりもいいデザインして、お客様に満足してもらえるようになってやるよ!負けないぞ!」という気持ちになりました。


講評会で絵を比較されるも、競争心は生まれず

 中学3年生から美術予備校に通い始めた私は、そこで初めて本格的な講評会を受けました。

絵の講評会とは?
 絵を順番に並べられて、「ここが良い、ここが良くない」と講師からアドバイスをもらう会です。

完成度の高い絵:上段の真ん中
そうでないもの:中段
良くない   :下段

こういった感じで並べられます。
 同じ段の中でも真ん中に近づくほど評価が良く、外側に行くほど評価が良くないという採点方式です。

 講評会が終わる度に友人から「真ん中に行きたい」「あの子は何であんなに上手いのか」という話を聞くのが苦手でした。真ん中に行きたいならコツコツ描き続ければいいし、アドバイスは素直に聞き入れ、今回足りなかった部分を補うようにしていけばいいだけの話だって思っていました。
 別に誰かと争わなくても、自分と真摯に向き合っていけばいいだけの話だし、誰かを蹴落としたりするのは綺麗じゃない。そう思っていました。


開業してからますます競争心が生まれた

 争うなんて綺麗じゃないとか、それだけじゃやっていけないと思いました。高校生の頃から全然絵上手く描けなくて、紙の目が潰れるまで描いては消してを繰り返す日々でした。もうその次点で綺麗でもなんでもないんですよね。今までのやり方もスマートじゃないし、私は泥臭くやることしかできないんですよ。
 そこに「辞めた会社の人に負けないくらい稼いでやる」って気持ちが加わっても、本質が何も変わるわけじゃないんだなって。頑張ろうって気持ちを後押しするだけの要素が増えただけなんだなって気付きました。

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