ビジネスマン02

案外コスパが悪い? デザイン依頼での「試しに作ってみて」

 デザインを依頼する時に「とりあえず成果物を見ないとわからないし、試しに作ってみてよ」と言うことはありませんか? 実はこれ、コスパが物凄く悪いんです。理由としては以下の5つが挙げられます。

①曖昧な目的設定のまま作業に取りかかることになる
②その結果、制作側の修正回数が増える
②修正回数が増えると依頼側も確認作業が増える
④目的が曖昧だと修正する際の基準がなくブレがち
⑤何を作ればいいのかわからなくなる

 上記を見ると「最初にデザイン費固定で契約しておけば修正費発生しないんだし関係なくない? 大変なのは制作側でしょ?」と考えるかもしれません。
 しかし、③に書いた通り、依頼側にも負担がかかるのです。


作業時間を確保するために外注に回したのに、かえって仕事が増えてしまう

 例を挙げて考えてみましょう。ある会社員が販路拡大のための営業を任されたとします。そこで、「うちの会社と取引することにこんなメリットがあるよ、とまとめたものが欲しい」と提案があります。会議の結果、営業用のパンフレットを制作し、そのデザインは外注することに決定しました。
 外注をする意味について考えてみましょう。

・通常業務が忙しくて手が回らない
・残業をして作ったとしても希望の納期には間に合わない
・短期間で質の高いパンフレットを作りたい

 かなりざっくりですが、上記のことが考えられます。外注することで社員は自分の仕事に集中する時間を確保できるわけです。

 では、タイトルのように「とりあえず作ってみて」とデザインを丸投げした場合、どのようなことが起こり得るか考えてみましょう。

社員「見てみないとわからないから、とりあえず作ってみてください」
デザイナー「わかりました(この事業内容だからアピールするならこういうイメージかな……)」

デザイナー「できました」
社員「おっ、かっこいいですね! これでとりあえず進めてみてください。後日社長に見せてみます」

社員「すみません、社長がこれだと全然イメージと違うって言っています。もう一回、作り直してほしいんですけど……」
デザイナー「わかりました。御社の社長は具体的にどういったイメージが良いと言っていましたか?」
社員「うーん、ただ『全然イメージと違う』とだけしか……特にこのページは気に入らないみたいで」
デザイナー「なるほど。では、ダメ出しされた部分を踏まえて、こんな感じで作り直してみようと思うのですがいかがでしょうか」
社員「とりあえずそれでやってみてください」

 こんな感じになります。このまますんなり修正内容にゴーサインが出る場合は稀で、最後までどうしようどうしようと捏ね回す場合が多いのではないでしょうか。せっかく自分の仕事時間を確保するために外注しているのに、確認工程が増えてしまうとそれだけ時間が削られてしまうのです。
 二者間で完結するならまだしも、社長から仕事を任されて外注先のデザイナーと連絡を取り合うパターンだと辛いですよね。外注先のデザイナーと社長の間に入って、伝言ゲームのように正確に互いの要望を伝えなければいけないわけですから。
 これは何も会社員に限った話ではなく、自営業でも同じです。せっかく自分の作業時間をカットして「ばりばり稼ぐぞ!」と思って外注に出すのに、作業時間がどんどん増えてしまうのです。


作る前にデザイナーとよく話し合ってみよう

「とにかく早く作ってほしい」
「急いでいるから話し合う時間さえない」
「時間がないから依頼してるんだけど……」
 こういう気持ちもよくわかります。そうだとしても、作る前に社内意見をまとめてから依頼することをおすすめします。急がば回れと言いますが、最初に構想をきちんと練っておくと結果的にあなたの作業時間を短縮できるのです。

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