産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 父親との再会 2

翌日吉澤夫妻と共にあやめは架空都市部へと戻って来た。

龍一の家の門はとても大きくてお殿様でも出て来そうな雰囲気だった。
門を入ると日本庭園が広がっていて足元には砂利が敷き詰めてあったが玄関までは石畳になっている。その石畳を30mくらい進んだら真ん中に日本家屋の3階建ての家がドーン横に広がってるような形で建っていた。真ん中に物凄く広い玄関があった。
その家を挟むようにに5階建のビルのような建物が東西に建っている。

その西側1階の半分があやめの部屋だと言われた。お風呂も洗濯機もトイレもキッチンも付いていて中学生1人が住む部屋とは思えない広さだった。
あやめの住んでいたアパートよりも広かった。

『あやめちゃん、お夕飯は母屋に来てみんなで食べましょうね!母屋って言うのは真ん中、今日入って来た家の事ね。ウチは3階にキッチンがあって慶さんと次男の優さんの2家族でいつもお夕飯食べてるの。優さんの家には瑠衣ちゃんって奥さんがいて明菜ちゃんと秋乃ちゃんっていう娘がいてね〜!明菜ちゃんが賑やかでね。あやめちゃんもすぐ仲良くなれるんじゃないかな?秋乃ちゃんはあやめちゃんと同い年で大人しいし人見知りするタイプだからあやめちゃんと同じタイプかも。明菜ちゃんはリュウとレンと同じ年で社交的なタイプよ。会うのがとっても楽しみみたい。あと着れなくなった私服をあげるって用意してたわ。』

「え!?いいの!?うれしい…」
あやめは地元中の制服と体操服と加奈子がいらなくなった服数枚貰ったものしか持ってなかったので嬉しかった。

『あと…これおばさんくさいかなぁ…私の服なんだけど…店員さんに乗せられてピンクのワンピースなんか買っちゃったけど着れなくて。やっぱおばさんっぽくて嫌かな?』

彩菜はピンクのシフォン生地に小花柄の清楚な模様のワンピースを持って来た。

「可愛い!絶対今度着る!」
彩菜から貰ったワンピースはあやめには少し大人っぽいけれどあやめは気に入ったようだ。

1週間程経った頃祐二から次の月曜日に休みをとって3連休にしたから裕二家族が住んでる家で家族と顔合わせしてショートステイをするのはどうだろうという事を彩菜に相談して来たのでそれもいいだろうと思いあやめに告げた。

彩菜は金髪のままじゃ印象が悪いからあやめを美容院に連れて行くことにした。
あやめは彩菜から貰ったワンピースを嬉しそうに着て出て行った。

(お母さんから貰ったワンピース…かわいい。)

あやめの髪は何年も放置していたので前髪で半分顔は隠れていて後ろは腰より長かったけど肩甲骨辺りまで思い切り切って前髪も顔が見えるくらい短くして髪色は根元に近い色に染めた。

今まで金髪のせいでヤンキー臭がしていたし子供っぽい感じだったが一気に清楚な美少女風に雰囲気が変わった。

この姿をみて龍一や蓮二はどう思うだろう?

彩菜は面白がってあやめに玄関で龍一達の帰りを待つように促した。
とにかく玄関に立ってたらいいとあやめに指示をしていたらいい感じに帰って来た。

『ただい…え?あやめちゃん??マジすげぇ可愛い!絶対こっちの方が可愛い!うわぁ!こんなに変わるんだ!な?龍一?めっちゃ可愛いよな?』

と蓮二がはしゃいだ。

彩菜に貰ったワンピースを着ている髪型を変えたあやめ



『…あやめ…?…母さん…あやめを可愛くする必要ないだろ。もっと地味でブスにさせとけよ!!』

龍一にとってあやめはただのガキであって欲しいのに【美少女】になっていたので戸惑った。

『龍一!女の子に向かって地味にブスって何なのよ!こんなに可愛くなったのに!』

彩菜は龍一を叱りつけた。

『大体あやめちゃんが可愛い事なんて金髪の地点でわかってたんじゃないの?』
龍一の口の聞き方に腹を立てる彩菜。

『…だって…そんなこと思いもしなかったよ…あんまり可愛くなって…ビックリした…嫌な言い方してごめん…』

ちょっと目を逸らし頬を赤くする龍一。

「リュウに嫌われたと思っちゃった…」

髪型ひとつで浮き沈みしてるあやめと龍一。

あやめは龍一が好きなんだけどその気持ちが【恋愛】だとわかっていない。

龍一は急に【美少女】になったあやめにどう接していいかわからない。ガキだったはずのあやめが大人に見えたので気持ちが追いつけない。

(あやめってこんなに可愛かったっけ?)

その1日龍一はあやめとどう接していいのか戸惑っていたが日が経てば徐々に慣れて来た。

そうしている内に1週間経って土曜日が来た。

その日龍一はあやめを送りに出ず部屋から顔も出さなかったが変わりに蓮二が出て来た。

『リュウのヤツよくわかんねぇけど拗ねちゃって!ゴメンな!気をつけてな!」
と見送ってくれた。
あやめは少し寂しかった。

あやめは架空都市部の駅のホームまで彩菜に送ってもらって1人で架空東海地方に向かう新幹線に乗って行くことに。
新幹線に乗るのは初めての出来事。ちゃんと降りる駅を確認して向こうでは裕二が待っていると聞かされていたので降りる駅さえ間違えなければ大丈夫だ。

(パパの家ってどんな家かな?龍一の家の大きさには絶対勝てないだろうな〜。)

色んな妄想を抱いて新幹線に乗ったあやめはまだ会った事のない家族を想像していた。
ずっと窓の外を眺めていたらいつの間にか駅に着くアナウンスが流れた。

慌てて列車から出てホームに降りたら裕二が待っていた。
「パパ!」

『お!あやめ髪型変えたんだな!可愛いじゃないか!』
裕二は髪型を変えたあやめを褒めた。

「ねぇパパ…あたしって誰に似てるの?」

『パパの妹にちょっと似てるかな。血筋は四ノ宮家の血筋だな!』

「ホント!?よかったぁ」

『…じゃあ今から車で家まで行こう!』

道中色々裕二と思い出話をしていたらあっという間に家に着いた。
裕二の家は2階建の一軒家だった。

『どうぞお入り下さい。お嬢様。』
裕二はガレージで助手席に回ってドアを開けた。

「ヤダもう!パパったら!麗華さんは?」
今日は麗華に会えるのでウキウキしているあやめ。

『ここの扉開いたら居るよ。今日は調子がいいみたい。』

ガレージがリビングと繋がっている作りになっていた。その入り口は玄関ではないが裕二はここから入るようにあやめに伝えた。あやめはそっと扉を開いた。

「こんにちは。麗華さん…二日ほどお世話になります!」
あやめは彩菜に教えられた通りに挨拶をした。すると…

『あ〜…この子?裕二さんと前の嫁の子供なんでしょ?こんな子どうせアバズレになるんだからウチで見る事はありません!こんな汚い子に我が家の敷居を跨がせないわ!アンタはガレージで十分!シッシッ』

麗華の母親があやめを上から下まで舐め回すような視線で見た後いきなり塩を振りかけて来た。

(誰?おばあさんにしか見えない。この人が麗華さんだとは思えない…)
「ヤダ!やめて!目が痛い!」

あやめはかけられた塩を払った。
裕二が義母の動きを止めた。

『お義母さん!なんてことするんですか!大体何でここに居るんですか?あなたの家でもないのに!ここは私の家ですよ!敷居を跨がせないって何ですか!この子は私の娘です!私と麗華が話し合って納得した上でこういう形を取っているんです!口を出さないで下さい!』

あやめは塩を振りかけられたショックでガレージに戻った。とても辛くて悲しい気持ちになった。

家の中で裕二と義母が言い争っている。あやめは母親にマトモに育てられてはいないが怒声を浴びせられた事がなかったので言い争いがとても怖かった。

何故このおばあさんが汚い言葉で自分を罵っているのか理解が出来ない。この人は誰なのか。

あやめは泣きながら龍一に電話をかけた。
見送りに出なかった割に電話には直ぐに出た龍一。あやめは泣きながら今起きている事を話した。

「聞こえる?この言い争い…怖い…もうヤダ…リュウの家に帰りたい…。知らない場所だし駅までどう行けばいいのかわからないし新幹線の乗り方もわからない…今すぐ帰りたいよ…リュウ…」

龍一は自分がどうしようも出来ないと思ったのであやめの現状を彩菜に伝えて電話を変わった。

『は!?塩!?今すぐ迎えに行く!時間はかかるけど待ってなさい!』

と言って彩菜は最速で架空東海地区に行くようにして慌ててあやめを迎えに行った。

あやめには彩菜が来るまでの時間が物凄く辛く悲しく長く感じたが彩菜には怒りがいっぱいで短く感じた。

彩菜は駅に着いたらタクシーに乗って裕二の家に直行した。
玄関に着くなりインターホンを鳴らした。裕二がドアを開けた。

『四ノ宮さん!一体なにがあったんですか!?』

彩菜は何故こんな事になったのかを尋ねた。
玄関に麗華の母親が出て来た。

『騒々しい女ね!アレは私には血の繋がりが一切ありません。アレは汚れた子供です。アレがウチに入って来たらウチの血が汚れます!吉澤さんでしたっけ?大体あなたがこんな子の事で裕二さんを探したりするからウチの家がややこしくなったのよ!』

確かにあやめの父親を探していたがこんなクソババアの事は探してもない。

『血が汚れるねぇ…人間が腐ってる人に言われたくないですわ。あやめちゃんはキレイな血ですよ。アンタと違ってね!」
彩菜は頭に来ていたので思った事をそのまま口にした。

『ところで四ノ宮さんは婿養子じゃなかったですよね?何でこんな好き勝手お嫁さんのお義母さんに言わせてるんですか?申し訳ないですがこんな意地悪鬼婆が居るような所にあやめちゃんを住ます訳にはいきません!あやめちゃんは私どもで面倒見させて頂きます。念の為に我が家から中学に入学させる為の書類も持って来ました。サインが書き終わったら架空都市部に連れて帰りますから!』
彩菜は幾つかの書類を並べた。

『吉澤さん…あやめは本当にこんな事になる予定はなかったんです…今日あやめに渡すプレゼントが…あって…あ…」

裕二の持って来た箱はボコボコに踏みつけられていた。ゲームが入ってたと思われるパッケージ。ババアの仕業だ。

『こんなの見せれないのでウチで同じ物を買って渡します…こんな義母がいるようじゃ二度目の結婚…正直長引く気がしませんわ。』

ドアの向こうからババアが勝ち誇った眼で見ているが彩菜には関係なかった。

彩菜はあやめが心配でガレージに行きあやめを宥めるように背中に手を当て

『まだ夕方だし架空都市部に帰れるわ。帰って気分を切り替えましょ!あやめちゃんは隣隣接町(となりりんせつちょう)の中学校に入学してもらうように手続きをするわ。帰ってかた忙しくなるけどこんな所にいたらあやめちゃんは確実にババアに虐められるわ!書類を貰ったら帰りましょ!』

彩菜はあやめが吉澤家で預かった方が幸せだとその場で即決して連れて帰った。

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