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産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 中学生活 6
『何を朝から盛り上がってるんだ?』
寝起きの龍一と蓮二がキッチンに来た。
『見て見て!今日のあやめちゃんの服!昨日あげたワンピース早速着てくれてるのよ!私が着てた時と雰囲気違うと思わない?』
明菜はハイテンションで2人にあやめの姿を見せた。
『めっちゃ可愛いじゃん!』
蓮二も朝からテンション高い。
『お前ら高血圧か?朝からうるせぇな。』
徹夜で宿題したのでテンションが低い龍一。
「リュウ…あやめに興味ないの?…」
ムッとした表情になるあやめ。
明菜はさっき見たオーラが怖かったのでまたあのモードになったらヤバいと思ったので龍一の足を思いっきり踏んだ。
『いった!…そんなにミニじゃないし可愛いな…。』
素直に可愛いと思ったので口から出たがちょっと恥ずかしくなった。
「本当!?嬉しい!明菜ちゃんありがとう。」
『私よりあやめちゃんの方が似合ってる。』
あやめの機嫌が直ったので胸をなでおろす明菜。
「今まで貰った服も選んでくれた水着もみんな可愛い…明菜ちゃんってオシャレだね。」
『あやめちゃんが龍一と付き合ってるの知ってたらもっと攻めた水着選んであげたんだけどなぁ!』
いたずらっ子のように笑う明菜。
『攻めなくていいよ!』
レーズンパンにがっつきながら文句を言う龍一。
『【龍一の為に】なのに?』
明菜は龍一に迫った。
『俺はあのスク水で十分だ。』
『ウチの学校のスク水も可愛いけど所詮スク水なのよ!学校と海とじゃ別!ねぇ?蓮二!』
秋乃と明菜の学校のスク水はスク水界ではレアもののように扱われるくらい可愛いと有名だった。
『女の子は同じ物着ないね。行く場所に寄って水着を変えるくらいの子が多いよね!可愛く見せてナンボだからね!』
女の気持ちだけは詳しい蓮二。
『男連中が多いからあやめちゃんには胸が目立たないデザインを選んだんだけど胸が大きくて中々合うのがなかったのよー!』
明菜は腕で胸をボーンと大きく見せる仕草をした。
『女から見てもデカいんだ…』
『…多分DカップかEカップはあるぞ。』
耳元で囁く蓮二。
『それって…』
ABC…と数える龍一。
「下着売り場と水着売り場のお姉さんに65のEかっぷって言われたよ。1かっぷ小さいの着たら胸の谷間がくっきりするんだって言ってた。なぁに?かっぷって?たにまってなあに?」
あやめは恥ずかし気もなく下着のサイズを言い始めた。知らないのは恋愛の事だけじゃなかったのか!と明菜は思った。
明菜は胸のカップの事や谷間の意味を教えた。
あやめは自分が発したことがとても恥ずかしい事だと知って手で顔を隠した。
『あやめちゃんのその天然なところ可愛いよなぁ。』
蓮二は笑いながらフォローした。
『確かにあやめって天然だよな。カツアゲした金で森本さんにお礼しようとしてたし…。』
龍一は納得した。
『カツアゲ⁉︎あの不良時代に⁉︎他にも色々あるけどそれは笑えるわね!』
明菜を筆頭に全員が笑っていた。あやめは何で皆が笑っているのかわかっていなかったが一緒になって笑っていた。
『そう言えば海っていつ行くの?』
突然蓮二が明菜に聞いた。
『伯父さんが8月の3日にするって言ってたよ。楽しみ!』
吉澤家は毎年夏になると大勢海に連れて行く。一部をプライベートビーチにしている場所と施設を借りる。一般客とかなり離れた場所にあるのでゆったりしている。吉澤家の場合はヤクザなのでそうしているが、金さえ出せば誰でも貸し切る事が出来る場所なのだ。架空都市部からは少し離れている。
「あたし、海って生まれて初めて行くの。」
ウキウキしているあやめ。
『海楽しもうね!ビーチボール持って行かなきゃ!ビーチバレーしよ~っと!』
明菜は気が早いけど海に持って行く物の用意をしに2階に戻って行った。
『俺は昨日の徹夜が応えたから2度寝する…。』
龍一は自室に戻って二度寝する事に。
『俺はゲームしよーっと。』
蓮二は例のモンペハンターをしに部屋に戻った。
「あたしもモンペハンターしたいけど…宿題が先!」
あやめも宿題をしに部屋に戻った。
子供達が夏休みに入ってからいつも朝と夕方だけ賑やかな家が朝から晩まで賑やかになった。
賑やかと言えば実を言うとこの家の中で常に賑やかなのは1階の下積みと呼ばれる男連中がいる場所が一番賑やかなのだ。
前にあやめに白いジャージの男がいて怖いと言われていた男は前田という高校を中退して間がない不良上がりの16歳。同室にいる者に注意されても白ジャージを止めなかった。幹部に注意されても止めず。何かを貫く事は悪い事じゃないけど他人を怖がらせる事がしたいならこの組じゃなくて他所に行けと優に注意された翌日から普通の出で立ちに変わったと。優にその方が似合ってると頭を撫でられてから前田は同室にいる者に対して態度も変わった。ここは非行少年がヤクザに憧れて自ら志願して来る場所なので入ったばかりの少年は前田のように偉そうにしているパターンが多い。先に部屋にいる者も元暴れん坊だが新人の事は黙って見るように躾られている。心を開き始めると皆が仲良くし始める。大体が20歳までここに住み込んでいる。
途中で居なくなるのは悪事から足を洗えないか薬物中毒者のどちらかだ。吉澤組はあからさまなヤクザではないので派手な動きがない。ヤクザに憧れて入ったのにみんな大人しくなって学生のようになっている事が気に入らなくて外で組を名乗って暴れる輩も出る。
その類はここを出る訳ではなく何処かに連れて行かれる事が多い。それがどこか知っているのは組長と若頭と一部の幹部だけ。薬物中毒者も同様。吉澤組は薬物を毛嫌いしているので見つかり次第問答無用に何処かに連れて行かれる。残っている組員は警察が出来ない役割を熟す。ただ何処に連れて行ってどう始末しているのかわからないところはやはりヤクザだと言えよう。
基本的に吉澤家の大人はみんな呑気で大らかな性格をしている。しかし緊急で何かあった時は大人は瑠衣だけ残してどこかに出ることがある。今は特に何もないので下積みに見廻らせているだけで慶や優は殆ど家にいるか1階の事務所にいるかのどっちかだ。組長と双子の次男も似たようなものだ。事務所でこれといって決まったことをしている訳でもない。
慶は毎回海に行く時は組長一派と一部の幹部だけ残して下積みの少年達を全員連れて行く。
バスは毎回レンタルする。大型免許を持った者がいるので任せている。
昼食時間になったので慶は事務所からキッチンに戻って来た。
『やけに静かだなぁ。昼メシの時間なのに。』
彩菜は漫画を読んでいたが手を止めた。
『何読んでるの?』
慶は彩菜が本を持っていたので気になって尋ねた。
『恋愛漫画…ピュアで懐かしいわ。』
『彩菜は今もあの頃と変わらないよ?ってか誰も居ないの?』
『さっきまでみんないたけど…。私がいるだけじゃダメ?』
彩菜は不満げに答えた。
『誰も居ないなら俺の膝に座って。』
慶は彩菜に甘えた。
『龍一か蓮二がいつ部屋から出て来るかわからないからダメ。』
膝には座っていないが横の椅子に座って膝をくっつけている彩菜。
『じゃあ…』
慶は彩菜に軽くキスをした。この夫婦は見られてないと思っているだけで龍一も蓮二もイチャついている姿によく遭遇している。毎回見て見ぬフリをしている。
17歳の子供が居るのにまだ新婚のような夫婦である。
『黒いビキニ似合うだろうなぁ。』
慶は彩菜の胸を突いた。
『だーめ♡』
『けーち!』
ラブラブ夫婦はさて置き…
とうとう海に行く日がやって来た。
――8月3日—―
明菜はあやめの髪を結い化粧を施して…龍一ウケのいいようにした。
『絶対可愛いって言わせてやるんだから!』
明菜は自分の事でもないのに気合を入れた。
彩菜と瑠衣はお弁当やバーベキュー用の肉や野菜と飲み物をクーラーボックスに用意して準備万端だ。下積み達は色んな物を用意してバスに運んでいる。少し遠いので小旅行といった気分だ。
――海到着—―
無人だが管理されている海の家はプライベート用なだけあって奇麗だった。海の家の中に荷物を置き男連中は人数が多いので交代で荷物の番をしながら順番に更衣室兼シャワールームで着替えて行った。女性陣は少ないので皆で女子更衣室で水着に着替えた。
明菜がビーチボールを持って一番に浅瀬ではしゃいでいた。
『みんなぁ!一緒にバレーしようよー!』
下積みの子達と輪になってバレーをして遊んでいた。明菜を好きだと思っていた子が数人いたが恐れ多くて告白など出来なかった。
日陽射しが強かったので龍一は陰を求め2つ並んだ岩の間がいい感じに陰になっていたのであやめを呼んで岩の間に並んで話をした。
『あやめ化粧してる?なんかいつもと違う。可愛い。』
「明菜ちゃんがリュウに可愛いって言わせる!って言ってた。あたし化粧するの下手で…明菜ちゃん上手くて嬉しくなっちゃった。」
『そっかぁ。今日の水着も可愛い。でもパンツ見えてる…』
「やだぁこれはパンツじゃなくて水着だよ!」
『でも尻が…』
「え?お尻が丸見えなの?ちゃんと水着着てるのに?」
あやめは自分の尻を見るように体を捻った。履き忘れているのかも知れないと思って手で尻を確認した。ちゃんと水着を着ていることに安心した。
「ちゃんと水着着てるじゃない!もう。」
龍一のファッションチェックは海水浴場に来ても止まらない。
明菜にオヤジみたいでウザいと言われたのに直っていなかった。
『ゴメンあやめ…もう言わないって言ったのに…』
またやってしまったと思ったので龍一はあやめにひたすら謝った。