産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 吉澤家での暮らし 4
あやめの水着で大騒ぎしている龍一。
『母さん!胸が開き過ぎだから当て布しろよ!こんな胸で共学で男女混合でプールに入ったらいやらしい目で見られるに決まってる!水の中で揉む奴が絶対いる!』
『当て布なんかしたら逆に目立つし…転校生ってだけで注目浴びるのにみんなと違う物身につけてたら何か思う子だっているでしょ!それに胸の大きな子なんて他にもいるでしょ!揉むってそんな痴漢行為学校でする訳ないでしょ!』
彩菜は何で龍一がそんなにムキになっているのかがわからなかった。
『俺はあやめの胸がこんなデカいことに気付けなかった!水着になってビックリしたわ!』
『…お前さ、単に母さんのデカい胸見慣れ過ぎて目に止まらなかっただけだろ?俺は最初に目が行ったぞ?服の上からでも十分目立つぞ?あの大きさは。』
蓮二は龍一が全くあやめを女性として見てなかったことを指摘した。
「あの…あたしの胸…なんかおかしいの?」
突然あやめが話に入って来た。
『腫れ過ぎなんだよ!』
龍一は怒り口調で言う。
「腫れ過ぎ?」
何のことかわからないあやめ。
『あやめちゃんの胸がおっきいってこと。な!リュウ。虫刺されみたいな言い方すんなよわかりにくいだろうが。』
蓮二が笑いながら丁寧に説明する。
「え…やだぁ…。」
胸を手で隠すような仕草をするあやめ。
『恥ずかしがるモンじゃねぇって!俺はむしろ堂々としてる方がいいと思う!世の女の子達は胸を大きく見せるためにブラを熱盛にしたり色んな努力してるけどあやめちゃんはそんなことしなくてもいいんだから!』
蓮二はあやめの大きな胸を誇らしく思えという。
『こんな大きな胸堂々と見せたらガン見するヤツが出るだろうが!』
ムキになって大きな声で怒る龍一。
『うっさいわねぇ!大体まだ学校で男女合同でプールに入るかどうかもわからないのに龍一がギャーギャー言ってどうにかなるもんじゃないでしょ!あやめちゃんは学校に行くの楽しみにしてるんだからもうこの話はもうお終い!あやめちゃんももう部屋に帰りなさい。水着のまんまにされてかわいそうに。リュウとレンはどうするのか知らないけど私はお風呂に入って来るわ!』
彩菜は話を終わらせてみんなをバラバラにした。そうしないと話がいつまで経っても終わりそうにないからだ。
バラバラになったあと龍一の部屋に蓮二が入って来た。
『童貞君。お前はあやめちゃんに対して強く当たり過ぎ!確かに胸も大きいし顔も可愛いしもの凄く目立つから大当たりの転校生だと思うけど実際男子中学生なんて思春期真っ盛りだから女の子とそんなに関わらねぇんじゃねぇの?それにあやめちゃんはクラスの男子何て動物にしか見えてないと思う。お前さ…この家からあやめちゃんを出したくないんだろ。それってあやめちゃんのこと好きてことなんじゃねぇの?』
蓮二は龍一の行動をよく見てるし性格もわかっている。
『…俺が…?』
『あやめちゃんは恋愛を知らなくて自分の気持ちが何なのか天然でわかってないだけで…。お前はお前でガキだって思いがあったからあやめちゃんを好きって認めたくないんだろ。お前が好きって言わない限りあやめちゃんは今の気持ちが何なのかわからないまま過ごすことになるんだぜ?可哀想じゃんそんなの。』
ポテチをバリバリ食べながら語る蓮二。
『蓮二…随分と女の子の気持ちがわかるんだな。お前よく女と遊んでるけどお前にもそういう女がいたことあるのか?』
前々から気になってたので聞いてみた。
『俺?いねぇよそんな女!でも俺の事好きだって告白してくる女のオーラはキャッチできる。お前だってあやめちゃんの気持ち何となくわかってたんじゃねぇのか?』
『あ…まぁ…。』
『因みに俺は女に告白されたから付き合ってるだけ。付き合ってる女がいる訳でもないからいっかぁ〜。って感じ。だからお前みたいにムキになる事がない。』
かなりドライな答えが返って来た。
『好きでもない女とヤるんだな…』
『据え膳食わぬは男の恥ってヤツ?頂けるならもらうけどキスはしない!病気貰いたくないし生理的に無理!』
『お前女にいつか刺されるぞ…』
『ないんじゃない?大体俺がヤクザの息子ってわかったら振られてる。そうじゃなかったら愛想がないとかバイト優先なの?とかウザい事言って振られる。俺から振らないから刺されることはないな!女もコロコロ変わってるけど重なったことないし。まぁお前は俺みたいなことやらないし俺も【お前の】あやめちゃんは取らないから心配すんな。応援してるぜ!』
蓮二の恋愛話は龍一にとって参考に全くならない話だったが蓮二に応援されていることは素直に嬉しかった。
『…あやめ泣き虫だし…大丈夫かな』
龍一は色々と心配になって来た。
『不良に囲まれてて何もなかったんだぞ?不良時代には万引きやカツアゲして来たくらいだからお前が思ってるより強いと思うぜ。』
龍一より一緒にいる時間が短い蓮二の方が冷静にあやめを分析していることに少し驚く龍一。
『そうだよな…。俺、お前に言われて初めてあやめの事が好きだって気がついた。今日一日何でこんなにイライラするんだろうと思ってた。まだ見ぬ誰かに勝手に嫉妬してたと思ったら間抜けで恥ずかしいけど…あやめが好きだから余計なことばっかり考えてたんだな。』
『水着如きで騒いでてま~たヤキモチ妬いてるのかって思ったわ!わかりやすいヤツ!』
ポテチを食べながら笑っている蓮二。
『蓮二も俺みたいな気持ちにさせる女がその内見つかると思う。まだ俺たち17歳だから先も長いし』
まだ高校2年生。いろんな出会いがこの先あるだろう。
『じゃあ龍一は17歳で見つけたって事になるよな。』
『そうだけどそれがいつまで続くかは俺にもわからない。そもそもあやめはまだ12歳だから気が変わる時が来るかも…』
急にナーバスになる龍一。
『まだ始まってもないのに勝手に終わらすなよ!バーカ。その前に告白しろっての。』
『…今はあやめも忙しいだろうから学校でひと段落ついてから…俺からする!』
龍一は決断した。
『あーあ俺も「好き」って言われる付き合いじゃなくて「好き」って思える付き合いしてぇなー!』
『好きって言われても好きじゃない相手と付き合わなきゃいいだけだろ。』
『でもさ好きって告白して来る時の顔は可愛いよみんな。だから付き合っちゃう。でも束縛とかされたらうっとーしくなる。』
『勝手な男だな。お前らしいよ。』
『よく言われる。ノラネコみたいだって』
『ノラネコ…ね…』
実は龍一には蓮二にどうこう言えない事が1年くらい前にあった。素性の知らない女の子から告白されて付き合ったのだ。
理由は蓮二と同じで告白されたから付き合ってみただけで気持ちなど一切なかった。
彼女という存在が欲しかっただけ。
そして彼女がいるステータスに登り詰めた所まではよかったがその先がものすごく面倒くさかった。
彼女の事を何とも思っていないのに彼女と学校帰りに毎日のように用もないのに顔を合わせないといけないしどうでもいい話に付き合わなければいけない。家で全く勉強をしない龍一が家で勉強でもしている方がマシだと思っていたくらい苦痛な時間なのに更に土日まで出掛けようと言われる。拷問か!と思っていた。夜になれば電話がかかって来たりメールが来たり鬱陶しさしかなかったので電話は3回に1回出てメールは返信をした事が殆どなかった。3週間その苦痛を味わってどうしようと思っていたがが幸運なことに彼女の方が優しくないと怒って自分を振ってくれたのでその時開放感でいっぱいになったとういう出来事があった。
これは恋愛じゃなくて女の子に告白された優越感と彼女がいる自分に陶酔していただけだったんだと気付いた。
この話は蓮二の真似をして少し背伸びをしたが自分にはそんな芸当が向いていないと気付かされことを蓮二に話した。
『あったなぁ!お前も俺と同じ穴の狢かと思ったけど1回で終わってたよな!まぁお前の性格上絶対続かないと思って見てたわ~。』
『俺さ、3回目に会ったくらいでやっと顔覚えたし。こんなにどうでもいい存在なのに何でみんな彼女が欲しいと思うんだろう?って真剣に考えたけど…好きじゃないってそんなもんなんだな。だけど好きになった相手っていうのは何をしていても気になるしこの先の心配までしてしまう…今日だって授業が全く身に入らなかった。こんなにも違うんだな。』
『俺にもそういう想いにさせる相手が出来るんだろうか?このままじゃ俺はロクな生き方出来なさそうだけどお前の応援はしてるからさ。まぁがんばれよ!じゃ、俺は部屋でゲームでもしよっかな~。あやめちゃんオンラインゲーム一緒にしねぇかな。』
まともに恋愛話が語れない蓮二は部屋に戻ってゲームでも始めようと思っていた。
『お前がソフト買ってやったらしてくれるんじゃねぇの?』
『あれ?ヤキモチ妬かないんだ。』
『お前には妬かないよ。ゲームの趣味はお前の方が合ってるみたいだし。』
『ソフト…考えとこー!じゃあな!』
蓮二は龍一の部屋を出て行った。
龍一にとって蓮二は兄弟という感覚ではない。お兄ちゃんでも弟でもない。
蓮二がいないと龍一が存在しないそのくらい強力な糸で結ばれていいる。
そんな蓮二に自分が気付こうとしなかったことに気付かされた龍一。
いつからあやめの事が好きだったのかがわからない。自分の近くにいるのが当たり前になってからなのか…その前はただの不良だったし見た目も小学生みたいだったし。財布買ったのも単に何も持ってなかったからただの親切心で買っただけで。携帯も連絡しようがないから与えて…単なるお兄さん的な立場で見守ってた。
髪色と髪型を変え雰囲気が変わって前髪が短くなってはっきりと顔が見えるようになってから可愛いと思うようになった…。その時点ではあくまで顔が可愛いという感覚だったが次第に女の子として見るようになった。龍一はあやめに対して意識し始めたのがその頃だったのかも知れないと思った。
蓮二の言った通り龍一があやめの胸に目がいかなかったのは彩菜の胸が大きいので当たり前過ぎて気にも留めてなかったのだ。同様にあやめの事は家族…妹のような存在で見ていたので胸の事など全く見ていなかった。水着に着替えて突然あの大きな胸が飛び込んで来たので龍一はあやめに女性を感じてしまったのだ。
あやめの胸が大きいから好きになった訳ではない。あやめが子供から女性として成長している姿を目の当たりにして自分の傍から離したくない存在になったと確信した。