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産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 中学生活 5
「この服可愛いのにリュウはどうしてダメって言うの?パンツなんか誰が見るの?家でしか着ないのに。」
言われてばかりも嫌だったのであやめは龍一に言い返した。
『そう言えばあやめちゃんって出掛けないよな。』
蓮二が言う。
『それにいつも龍ちゃんか蓮ちゃんが側にいるよね?』
秋乃も続けて言う。
『龍一がそんな風に縛り付けるから友達に誘われても断ってんじゃないの?』
明菜が痛い所を突いて来た。
『え?何?俺ってそんな束縛して…る…?』
龍一は皆の顔を見ながら宿題の手を止めた。
『今までの龍一の発言見て来たけど…彼氏として言ってるなら相当ウザい。』
明菜が龍一をゴミを見るような目で見る。
『蓮二もそう思ってたのか?』
『ウザいというか…そのワンピース普通に可愛いじゃん。男が皆あやめちゃんをお前みたいな目線で見てなっ……』
龍一は蓮二の後頭部を思いっきり叩いた。これ以上言われると都合が悪い。
『あやめちゃんが喜んでたら龍ちゃんは嬉しくならないの?』
秋乃が龍一に素朴な質問を投げかけた。
『…そりゃ…今日も蓮二にゲーム買ってもらって嬉しそうにしてるの見た時俺もよかったなって思った…。』
『でしょ?だったらお洋服だって一緒じゃない?可愛いって龍ちゃんに褒めてもらえたらあやめちゃんはもっと喜べるのに。』
普段喋らない秋乃が一番大人の意見だった。
『俺は可愛いと思うよ?明菜その服よく着てたから何となくイメージわかるし!龍一だってわかるだろ?』
蓮二はさりげなく龍一に振った。
『明菜…胸ないじゃん。背も高いしイメージ湧かないよ!』
さりげなく失礼な発言をする龍一。
『失礼ね!胸はあるわよ!控えめなだけよ!』
上手いこと言う明菜だが話が逸れかけていた。
『総まとめな!龍一はあやめちゃんに対して超過保護!束縛彼氏!ウザい!お前が居ない時はあの母さんと行動してるんだぞ?誰が手を出せると思ってんだバーカ。という意見でまとまりましたー!』
蓮二が勝手に色んな意見をくっつけて皆の前でまとめた。
「あの…リュウはあたしの彼氏なの⁉」
あやめの発言で時が止まった。
あやめの天然がここまでだと誰も思ってなかったので吉本新喜劇並みに全員ズッコケた。蓮二が何で龍一がミニスカートを拒否しているか細かく説明してやっと把握出来たようだ。
「やだぁ…パンツ見えないようにするね。」
全員「そこかーぃ!」となった瞬間だった。
蓮二は余りにも恋愛に対して余りにも純粋なあやめに同世代の女の子として秋乃と明菜に恋愛の事を少し教えてやって欲しいと頼んだ。
『明菜、頼むわ。』
蓮二は龍一と自分の部屋に戻って行った。
『あやめちゃん、龍一と付き合い始めたのね。』
明菜はあやめに尋ねた。
「付き合う?…好きって言われちゃった…」
両手で頬を挟んで恥ずかしそうに下を向いた。
『お姉ちゃん?変なこと言っちゃダメだよ?』
秋乃が明菜に注意する。
『……付き合うってのは…』
『お姉ちゃん!』
『…なんて言えばいいの…?』
明菜はどう言っていいかわからなかった。
『あやめちゃん、少女漫画読んだ事ある?』
秋乃は漫画で読めば少しは意味がわかると思った。
「ゴミ箱に捨ててあるのなら何度も読んだよ?」
『ゴミ箱?ちょっと待ってて…』
リビングから出て行った秋乃。
しばらくして戻って来た。手には紙袋に入った少女漫画の単行本が10冊。
「こんなの読んだことない~。」
あやめは目を輝かしている。
『これ恋愛漫画なの。漫画なら絵もあるしわかりやすいと思うの。これは10巻で完結だからすぐ読めるわ。主人公が初恋の人と付き合うまでのストーリーだから今のあやめちゃんと龍ちゃんに近いかなって思って。』
秋乃は漫画が好きで沢山持っていたから今のあやめに丁度いい内容の漫画を探して持って来た。
「いいの⁉ありがとう!お風呂上がったら読む!」
あやめは秋乃が持って来た漫画とドリルを紙袋に入れて自分の部屋に戻った。
『秋乃。アンタ意外と上手いわね。』
明菜が感心した。
『だってお姉ちゃん今にも下ネタ言いそうだったんだもん。…だから漫画を勧めたの。』
『下ネタってね…。』
『今にも言いそうだったじゃない!』
2人もいい時間だったので2階に戻った。
――あやめの部屋—―
部屋に戻って風呂から出てベッド横のサイドテーブルに積んだ秋乃から借りた漫画を読み始めた。読むと次々気になって全巻一気に読んでしまった。そして余韻に浸っていた。
(あたしがリュウを想ってたのは初恋だったんだ…リュウもあたしのこと好きって…ウソみたいだけど本当だった。付き合うって…デートしたり一緒に居たり…もっともっと好きになるのかなぁ…)
あやめは少女漫画を読んでキュンキュンして恋愛の事が少しわかったような気分になった。そして何度も読み返して最後は寝落ちした。
――翌朝—―
あやめは早い時間にキッチンに上がって来て秋乃に借りた少女漫画を紙袋に入れて持って来た。
『お母さんおはよう。今日は大丈夫なの?』
『おはよう。昨日はゴメンね。』
彩菜は申し訳なさそうに謝った。
「お母さんだってしんどい時もあるよね。…ねぇ、秋乃ちゃん起きてるのかな?」
唐突に秋乃が起きているかどうか尋ねた。
彩菜が内線で瑠衣に秋乃が起きているか尋ねたらさっき起きて来たと言っていたのでもうすぐキッチンに来る事をあやめに伝えた。
『珍しいわね。秋乃ちゃんと話があるだなんて。』
彩菜が不思議そうな顔をする。
「恋愛の話なの!少女漫画の!」
紙袋を彩菜に見せて楽しそうに笑顔を向ける。
『あら!そういうの気になるようになったの〜!おませさんね!』
ませてはいないが。慶から龍一とのことを聞いていたので微笑ましく見守ることにした。
『おばさん、おはようございます。』
秋乃がキッチンに入って来た。
「秋乃ちゃん!この漫画すっごくよかった!一気に読んじゃった!他にも少女漫画持ってるの⁉」
前のめりで勢いよく秋乃に話しかけるあやめ。
『あるよ?純愛ものがいいよね。食べたら持って来る。』
あやめの勢いに驚きながらもレーズンパンをもぐもぐしながらどの本にしようか秋乃は考えていた。
「ねぇ、秋乃ちゃんの部屋に行ってもいい?」
『ん!今すっごく散らかってるからまた今度…』
本当は散らかっていないが大人過ぎる漫画がいくつかあったのでそんな物を見られたらどう思われるか…もしくはあやめが気絶しないか気になった。
食べ終わって落ち着いたので秋乃は新しい漫画を紙袋に入れてあやめに渡した。あやめは秋乃に礼を言って自分の部屋に戻った。
『少女漫画ねぇ…長いこと読んでないわ。私も今度借りようかな?』
彩菜まで興味示して来た。
『おばさんも前はの読んでたの?もし読むなら昨日あやめちゃんに貸した漫画ここに置いとくよ?』
秋乃は漫画を置いて2階に戻って行った。
彩菜はパラパラっとめくってから自分の中学生時代の慶との初恋を思い出しながらキッチンの片付けをした。
――あやめの部屋——
今回は憧れの先輩に告白したが性格が悪くてショックを受けた後、幼馴染みの男友達が現れて告白…やがて2人は想いあってるのにすれ違い…唐突に性格の悪いライバルが出現するが…2人の愛は決して崩れないという王道のストーリーだがあやめには全部新しいものだった。
「何で?好きなのに?どうして?この女嫌い!」
あやめは思わず声に出して文句を言っていた。
結局はその幼馴染みと想いが通じてキスして最終回。その漫画も一気に読んでしまった。
(キスしたら終わりなのかなぁ?さっきの漫画、嫌な女が出て来てたけどリュウにそんな女いないよね?バイト先に女の子いるよね?リュウのこと好きだったら嫌だなぁ…リュウいつバイトに行くのかな?キッチンに行こう!)
あやめは漫画に影響されて急に龍一の事が気になったのでキッチンに向かった。
『どうしたの?龍一か蓮二に用事?』
彩菜は秋乃の漫画を読みながらあやめに声をかけた。
「バイト行かないの?」
あやめは早口で聞いた。
『龍一?今日は休みよ?徹夜で宿題たから寝てるんじゃない?今から瑠衣ちゃんと今日の食材買いに行って来るから皆でお留守番お願いね!』
彩菜にそう言われてホッとするあやめ。
『おっはよー!』
明菜が丁度入れ違いでキッチンに上がって来た。
「これ昨日もらった服。気に入っちゃった!」
あやめは昨日明菜にもらった服を嬉しそうに見せていた。
「ねぇ明菜ちゃん、バイト先にリュウの事好きな女の子っているの⁉」
後ろに大きな般若を纏った紫色オーラが出ていた。物凄く恐ろしいオーラだった。
『ちょっと待って!急にどこから龍一の事を好きな女が出現して来たのよ⁉』
ヤクザに慣れている明菜でもあやめの纏ったオーラの恐ろしさに怯えた。
「え…漫画で好きな人を横取りする女が…。」
『漫画…』
明菜はあやめの純粋さに参ってしまった。
『龍一はあやめちゃん以外興味ないからそんなの出て来ても断るから。龍一はあやめちゃんのことが大好きなの!わかった?』
あやめは純粋なので今漫画と混同しているので明菜ははっきりと言い切った。
「…あたしったら…やだぁ…。」
勝手に妄想を暴走させた事に恥ずかしくなって来た。
『そういうところが龍一には可愛く見えるんだろうなぁ〜!私なんて女の子らしい部分ないからすぐ振られちゃうの!いい女なのにさ!』
誰も言ってくれないので自分でいい女だと明菜は主張してみた。
「明菜ちゃんは可愛いよ?」
あやめは素直に見たままの事を言った。
『あやめちゃんはわかる女ね!わからない男が多くて困っちゃう!』
色々聞いて欲しいところだが相手があやめなのでこれ以上の事は言わなかった。
キッチンで盛り上がっている明菜とあやめの間に龍一が入って来た。