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産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 中学生活 9

あの騒動後、龍一はあやめがまだ事態を掴めていないのに大人の関係を迫ってしまった事に対してひたすら謝った。
殆ど無理矢理に近い状態で関係を持ったのに許されているのはあやめの方が龍一を愛する想いが強いから結果的に許してもらえていることは間違いない。

――お盆——

吉澤家は常に親族で過ごしているのでお盆に特別な行事はない。実家はあるが帰れない人間しか居ないのでいつもの日常である。

あやめはお盆までに宿題を済ますことが出来たので蓮二とモンペハンターで遊んでいた。
相変わらずよく分からないゲームだがファンにとってはそこがいいらしい。

あやめが一緒にゲームしている相手が蓮二なので龍一は全く気にしてなかった。これがネットの知らない人だったらソフトはあやめから取り上げてしまうだろう。
蓮二に「ネットには危ない奴がいるから」と注意されていたので蓮二としかゲームはしなかった。


お盆を過ぎたら日が暮れるのも早いし日が経つのも早い。夏休みも終わりに近づいて来た。


蓮二とゲームばっかりしていると龍一が拗ねるのであやめは龍一との2人の時間も作っていた。
2人で普通に話していたのに龍一が急にイチャイチャモードになって手を出して来てはあやめに拒否される事が続いていた。

今日もまったり2人で過ごしていた途中で龍一があやめの胸をさりげなく触って来た。

「もう!なんでおっぱい触るの!?えっち!」
あやめは龍一の手を甲をつねった。

『だって…目の前にこんな大っきいの見たら触りたくなるじゃん…。それに…アノ日以来全然ないんだもん。あやめ…エッチするの嫌なの?ちゃんとゴムも持って来てるから…しようよ。』
龍一は性懲りも無くあやめに甘え始めた。

「イヤ!すっごく痛かったから!」
2トーンくらい大きな声で思いっきり拒否された。

『そんな大っきい声で拒否らなくても…じゃあ…痛くならないところまで…』
あやめの機嫌を取りるように猫撫で声で近寄る龍一。

「色々恥ずかしいからイヤ!」
プイっとそっぽを向くあやめ。

『じゃあ…ぎゅーってするのは?…』
龍一はイチャイチャしたくてたまらなかった。

「もう!!えっちなこと考えてるんだったら母屋に帰って!!」
あやめは生理前で機嫌がすこぶる悪かった。
龍一からしたら「知らんがな」という理由だ。

余談だが発情期の猫はオスの主張は関係なくメスの機嫌に寄って拒否されたり受け入れられたりする。メスに選択権がある。
今の龍一とあやめがその関係に等しい。

ここまで来たら何だか龍一が可哀想になって来るがあやめが嫌がっているから仕方がない。

ひと夏の経験を過ごしたあやめと龍一。
龍一にとっては散々な事が起きた1日なので一生忘れる事がない夏休みの思い出となった。初めてを済ませた直後に全裸姿でいるところを母親に見つかり後に家族中に知られる男なんてそうそういないだろう。
甘酸っぱいどころか苦い経験となった。

そしてあっという間に夏休みが終わり2学期が始まる。

あやめは登校初日制服に着替えて母屋のキッチンに向かった。

私立の4人組はもう学校に行ったらしい。初日だけ早い時間に出るのが決まりで初日からみっちりと授業が始まる。
いつも賑やかな食卓を囲んでいたのに1人しか居ないから寂しいと思っていたら彩菜が向かいに座って一緒にクルミパンを食べながらカフェオレを飲んで今日から学校でクラスメイトの顔を覚える話をした。
あやめは1学期の終わりに転校したのでクラスメイトの顔を殆ど覚えていなかったのだ。

その後学校に送ってもらって短縮授業なのでお昼には家に戻り彩菜と2人で昼食を食べていた。

「お母さん、10月には運動会があるんだって。あたし運動音痴だから嫌だなぁ。」

『玉入れなら大丈夫でしょ!』

「あ!ホントだぁ!玉入れに出るって先生に言わなくちゃ!」

『10月の事なのにもう練習するの?』

「来週から始まるんだって。お母さんは運動会の練習しなかったの?」

『私は私立の進学校に行ってたから運動会がなかったのよ。』

「お母さんも明菜ちゃんと秋乃ちゃんの通ってる学校行ってたの?」

『セントだったら自由でよかったんだけど…私の行ってた学校は堅物学園っていうそれはもう校則の厳しい学校でね〜。自由なんて全くなくってひたすら勉強っていう学校だったのよ』

「何だか学校の名前だけで厳しそう!」

『髪は三つ編み前髪はピンで留める。スカートの丈は床から40cm…毎日校門で測られてたわ。慶ちゃ…お父さんと出会った頃もそんな見た目だったのよ。』

「【慶ちゃん】でいいよ!お母さんお父さんの出会の話聞きたい!どうやって出会ったの??」
あやめは恋愛話が聞きたくてたまらなかった。

『そうね…スクールバスが使えない時期があってしばらく電車で通学してたのよ。いつも同じ車両に慶ちゃんが乗ってたの。背が高くてカッコいいなぁって思って憧れの眼差しで見てたの。たまたま近くに立ってた日があってその時に凄く電車が揺れて思わず慶ちゃんのこと掴んじゃったの!もう恥ずかしくって。そしたらそこにいたら危ないからって出入口の近くに引っ張ってくれて…そこからかな。話するようになったの…懐かしい。』
彩菜は照れくさそうに昔話をした。

「お母さんその時お父さんのこと好きになったの?」

『そうね。格好いいし大人っぽい感じで…』

「今も好き?」

『え?…勿論好きよ。とっても。』
彩菜は恋バナをする少女のようになった。

「素敵!ねぇ、それからどうやって結婚することになったの⁉︎」
あやめも恋バナに夢中だ。

『私の家は厳しい家だったから遊びに行くのが禁止だったけど図書館に行く振りして慶ちゃんに会ってデートしてたの。それから…高校生になって…15歳で赤ちゃんを身籠ったのよ。』

「えぇぇ!?アフターピル貰いに行けなかったの?」

『私の時代にはそんなのなくって…わからなかったのよ。翌月生理が止まってもしかしたら赤ちゃんが出来たかも…って思ったけど誰にも相談出来なくて徐々にお腹が出てるってわかった時に怖くなって慶ちゃんに相談して一緒に産婦人科に行ったら4ヶ月目だってわかったの。しかも双子…。両親に言えなくて…慶ちゃんに家に来てもらって親に告白したら狂ったように怒り出して…それに慶ちゃんがヤクザの息子だってすぐに分かって親から放り出されて絶縁されたの。』

「えぇ…妊婦さんなのに追い出すなんて酷い…。」
あやめは涙目になって聞いている。

『でも私、家も学校も厳しくて嫌だったからそれでよかったと思ってるわ。それに吉澤のお義母さんがそんな家捨てて16歳になったらすぐに籍入れましょ。って言ってくれて私が16歳になった時慶ちゃんはもう18歳だったから高校生だけど籍を入れたの。私は高校中退したけど慶ちゃんは男だし問題無いから大学まで行って卒業して…やっと家族が収まったって感じね。

「16歳で子供産むの怖くなかった?すごいなぁ…」

『子供産むのは怖かったけど産んでから龍一と蓮二の顔を見たら痛さも怖さも消えちゃった。嬉しかった…でもねやっぱり10代で子供を産むより大人になってからの方がいいと思うわ。だって何もわからないんだもの。お義母さんが居なかったら何も出来なかった。』
思い出しならがら笑みを浮かべる彩菜。

「なんか今のあやめみたい…あやめも子供だからお母さんが居ないと何も出来ないもん。」

『じゃあ歳を取ったら存分に付きっきりで介護してもらおうかしら!なーんて。こんな話よりお昼も食べ終わったし部屋でくつろいで来ていいのよ?』

「あやめ今日お母さんと恋の話が出来て楽しかった!またしたいな!」
あやめは恋バナが楽しかった。自分が今その真っ最中なので色んな人の体験話が聞きたいと思っていた。

夕飯時に秋乃と会った時にまた少女漫画を貸して欲しいと頼んだらいつもより大きめの袋に沢山単行本が入っていた。

『これも続き物で面白いよ!』

「秋乃ちゃんいつもありがとう。」

毎回あやめがハマるような内容の物を選んでくれるので楽しみにして部屋に持ち帰った。
漫画を読んでいると龍一が部屋に入って来た。

『また鍵かけ忘れてる!』

「うわぁ!ビックリしたぁ。でもこの家の敷地内のビルだから絶対泥棒は入って来ないよ?入って来ても家族だけだし。」

『お前が鍵かけ忘れたせいで俺は全裸状態で母さんに出会したんだからな。鍵閉めといたぞ。ってかまた読んでるの?漫画?』

「恋愛のこと知りたいから読んでるの。」

『そんなの俺に聞けばいいじゃん?』

「リュウはえっちなことばっかりだもん。」

『恋愛の延長線上にエッチがあるんだから仕方ないだろ。それにあやめが可愛いから悪いんだぞ!』

「可愛いって言われるのは嬉しいけど何でえっちに繋がるの?」

『理由はない!可愛いものは可愛い!ぎゅってさせて!』

「あん!もう。」
と言いながらくっついていることは苦痛じゃないあやめ。むしろ嬉しい気持ちだった。

「今日お母さんと恋のお話しちゃったー。」

『母さんと!?』
龍一としてはイチャイチャしている時に聞きたくない名前だ。

「中学生の時にお父さんに出会って好きになって…今も大好きだって言ってた。あやめもリュウのことずーーーっと好きでいられるのかなぁ。」

『母さんがそんなことを…今も父さんとイチャイチャしてるもんな…』
龍一は今日こそは…と盛っていたが…両親の話をされたらその気がどこかに行ってしまった。なのでしばらくくっついて手をつないだり抱き寄せたりしたが脳内で両親がチラつくので諦めて部屋に戻ることにした。

あやめは漫画の続きを読み始める。家族中に経験したことを知られてしまったので秋乃も少し責めた内容の漫画を貸した。あやめはそうとも知らず読み始めて途中からやや性的な描写が出て来てその内容がどんどん濃くなって…あやめは恥ずかしくなって漫画を読むのをやめてお風呂に入ることにした。

(あたし…あんなやらしいことしちゃったの!?うそ…やだぁ恥ずかしい!)

滝行をしているかのようにシャワーに打たれていた。
お清めの儀式のように。
やはり恥ずかしい時に妙な動きをするのがあやめと龍一の共通点のようだ。

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