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【連載小説】 産業廃棄物のお姫様 プロローグ④

紗希は柚子に白いワンピースに白いカーディガンを羽織らせ飾りのついたピン留めで長い前髪を留めて後ろの長い髪は高めの位置でお団子にした。ハイネックのセーターを着せていたので首筋は寒くないだろう。

昨日の夜に白いタンクトップで出された柚子は同じ白でも冬用の子供服に身を包まれて暖かくて嬉しくなって紗希の周りを走り回った。

「ごめんなさいごめなさい調子に乗りました…。」
突然急に泣きそうな声で構えている柚子。

『柚子…。私ははしゃいだくらいで怒らないわよ?子供ははしゃぐものなのよ?』

「…折れた竹刀で刺して来ない?」

『そんな物家にないわ。胸の傷は竹刀で突かれた痕だったの?』

「うん…。」

『辛かったね。痛かったね…。今度病院に行って診てもらおうね。…そうだわ今から何か食べましょ?』

紗希は話題を変えた。

『西田さん、おじやでも作って貰えるかしら?』

「いやぁ!オヤジはいやぁー!」

『オヤジじゃなくておじや…雑炊よ?何でそんなに【オヤジ】が嫌なの?』

「ママが…30万のオヤジって人連れて来るの…そのオヤジが来た時だけママはゆずに優しくて、ママが背後から柚子の脚開いて…オヤジの顔の前で…大切な場所を見せるの…」

『えぇ!?もしかして何かされてたとか!?』

「オヤジは見るだけ。ママがもっと沢山お金を払ったら何してもいいのよって言うんだけどそのオヤジはゆずが処女だから価値があるんだ。とか言ってただ近くでじっと見つめてた。言ってた意味はわからなかったけどじっと見られてるのが嫌だった…。そのオヤジが来る前には無理矢理お風呂で大切な所だけママに力いっぱい洗われてて嫌だった…嫌がったら叩かれるし…」

『オヤジの特殊性癖によって運良くそれ以上の事にはならなかったのね…。他に柚子に興味を示す人はいなかったの!?』

「30万のオヤジだけ…見られるのが怖くてお漏らししたらママにぶん殴られたけどオヤジが喜んで20万余分に払ったから次も漏らせってママに言われて…出なかったら後で打たれてた。」

『ホントにお金の事しか考えてないのね!そもそも産まれた時どうやってたのかしら?』

「ゆず産まれたのは架空北海道って所らしいよ。ママが機嫌いい時だけ喋ってくれた。電器屋さんの社長の夫婦って人に全部面倒見させて柚子が歩くようになって架空長野に帰って来たって言ってた。ゆず、おじさんとおばさんが「柚子ちゃん」って呼んでくれてた記憶が少しだけある。こっちに来てからはママにベランダで飼われてた。」

『托卵してたのね…。飼われてたって…柚子のママは色んな意味で最低最悪…。』

紗希はそう言いながらオヤジではなくおじやを柚子と食べる事にした。柚子はスプーンを使った事がないのでどうやって食べていいのかがわからなくて戸惑っていたので沙希がスプーンの使い方を教えた。

『そうそう。少しすくったら思いっきり息を吹いちゃダメよ。ふぅふぅって言って冷ますの。』
紗希は加減がわからないだろうからすくってふぅふぅして見せた。それから柚子の口にスプーンを入れて食べさせた。

「おいしい!」

『テーブルにこぼしても怒らないから自分でふぅふぅして食べてみて。』
2歳児にはまだ早いけれど頭のいい柚子ならすぐに出来るようになると思って紗希は覚えさせた。案の定すぐに慣れておじやをキレイに完食した。

『柚子、食べ終わったら【ごちそうさまでした】って言うのよ?』

「ごちそうさまでした!美味しかった!」
柚子は西田に向かって満面の笑みを浮かべた。

『ありがとう柚子ちゃん。』
西田も柚子に微笑みを返した。

ーージリジリジリジリーー

けたたましく紗希のスマホが鳴り出した。
よく見ると相手は輝行からだった。
『輝行?どうしたの?』

『あの子どうなったの?』

『今ご飯食べ終わったところよ。服も買って来たしキレイになったわよ。顔には青あざがしばらく残ってると思うけど今朝より可愛くなったわよ。』

『いつまでいるの!?』

『お父さんが帰って来てから色々考えるつもり。それまでは確実に家にいるから心配しなくていいわよ。』

『やったぁ!あの子、妹になるの?』

『その話はまた…。』

『わかった!じゃあね!』

紗希は電話を切ってから色々と考え事をしていた。

リビングには紗希が買って来た【しめむら】の物が大量に袋から出されていた。西田が全部の値札を切ってナイロンと紙とゴミに仕分けていた。突然紗希は我に返った。

『やだぁ!西田さんごめんなさいね!私ったらボーっとしてしまって。』

『いいんですよ。家政婦の仕事なんですから。柚子ちゃんの事色々考えてたんでしょう?』

『えぇ…まぁ…。』
不安がないとは言えない。

色々考えている内にあっという間1週間が経った。
柚子は輝行が帰って来たら一緒に遊んで貰ってから夕飯を食べるのが日課になっている。夜になったら沙希と一緒に寝る。そして紗希のおっぱいを触りながら眠る。
柚子はベランダで放置されていた頃、自由な時間に寝起きしていたので朝起きるのが苦手だった。

今日は歳三が帰って来る日だ。

『柚子、今日はお父さんが帰って来るのよ。』

「うぅん…お父さん?」

『そう。』

「…どんな人なの?」
今日は【お父さんが帰って来る】という新しいワードで柚子を起こす事が出来た。


ピンポ~ン

インターフォンが鳴ったのでカメラを覗いて見たら歳三が映っていた。
沙希は柚子を連れて玄関を開けた。

『歳三さん、おかえりなさい。この子が前に話した…。』

『おぉ~!柚子だね。まだ顔に痣が残ってるけど可愛い子じゃないか。私がお父さんだよ!…さて、とりあえずリビングに行こうか。』
歳三は柚子の頭を撫でて家の中に入った。

「お父さん…かっこいい!」

紗希は意外な言葉が柚子から出て来てちょっとビックリしていた。

「だってママの所にこんなかっこいい人来た事ないよ?」

『そうなの。』

『さて、色々話し合うのはまどろっこしいから病院に直接行こう。その方が早い。』
歳三はビジネス以外で細かい話し合いをするのが苦手だった。

紗希は柚子の事は可愛いと思っているけれど柚子と歳三の親子関係が一致した時自分の気持ちがどうなるか不安になっていた。でも親子だと分かれば柚子をこの家に入れる事は簡単だけど気持ちの整理がなかなか出来ない。

とりあえず病院に向かって2人の称号をするものを調べてもらうことにした。


後日検査結果が家に届いた。

紗希と歳三は夕飯を食べ終わって輝行と柚子を寝かしつけてからじっくり結果を読む事にした。

【99.9%親子関係が一致した】
という結果だった。

しかし歳三には全く身に覚えがない。

歳三は酒に睡眠薬でも混ぜて寝ている内に女の方から無理矢理関係を持って子供を作って強請る気だったんじゃないか?
と、仮定した。すると全てが納得出来る。
何故なら歳三は酒に強いので酔う事がない。

何故ウチの家の前に置き去りにしたのか。歳三の子だと自信を持って書いて来た事…
柚子をネタに強請ろうとしたが歳三が海外に出る事が増えたのでコンタクトが取れないから用無しになって「要らなくなった子」と書かれていたのではないか?
歳三の居ない間に事務所に柄の悪い男と女が「社長に孕まされた」と怒鳴り込みに来た事があるが子は連れてなかったという話を何度か聞かされていた。
沙希に変な不安を与えたくなくて事務所での出来事は沙希に聞かせないようにしていた。
やはり答えは柚子は強請る為に作った子供という所に行き着いた。

それ以外考えられない。
そう思うとアンという女は恐ろしい女だ。

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