産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 中学生活 2
しばらくの間、転校生フィーバーだったがあやめが転校してきたのは期末テスト前だったので騒いでいる場合ではなくなった。あやめにとっては周りが自分に興味を示さなくなったことに安堵した。
テストが近くなって来たので科目ごとにテストの範囲とテストに出そうな問題のプリントを授業中渡された。あやめは家に帰ってから自室で問題を解いて龍一の部屋に内線で電話して3階のリビングでプリントを見て欲しいと頼んだ。
『所々間違ってるけど…ここまで出来てたらいい方だと思うよ。』
龍一は間違っている箇所の説明をしながら答えを書いて渡した。
「あたし…リュウみたいに賢くないから…」
『みんなが同じように勉強出来たら成績なんて要らなくなるじゃん。あやめは今まで学校に行ってなくて塾にも通ってないのにこれだけ出来たら十分だよ。まぁ俺のおかげでもあるけど。』
龍一はドヤ顔で人差し指を鼻の下で左右に擦って鼻水を伸ばすような仕草をした。
あやめは小学4年生の3学期から殆ど学校に行ってなかったが今日見た英語、数学、国語は問題なく解けていた。
海の為に頑張っているあやめが可愛くてしょうがない龍一。
「リュウはテストないの?」
『いや、同じ時期にあるよ?』
「リュウは勉強しないの?」
『勉強は授業中にやるもの!それ以外はやらない!』
龍一も蓮二も同じスタンスで家で殆ど勉強しない。
「リュウの成績は?」
『俺が2位の時は蓮二が1位。蓮二が2位の時は時は俺が1位。』
「天才なんだぁ…」
『そんなことないよ。俺は勉強ができるだけ。だけど俺に出来なくてあやめに出来ることはいっぱいあるだろ?あやめだって何かの天才かも知れないじゃん。』
「…なんだろう?わかんない。」
龍一はあやめを【可愛いの天才】だと思いながら見つめていた。
テスト期間が来た。
期間中は3時間か4時間で終わる。龍一もテスト期間なので家に早く帰っている。あやめは龍一に勉強を見てもらうことで長い時間一緒に過ごせることが嬉しかった。
テストが終わると夏休みまで短縮授業だ。
テストが終わり数日後、廊下に成績順位が貼り出された。廊下は賑わっている。
あやめは何位を取ったか携帯のカメラで撮って龍一にメールで送ろうと思いついた。
「何位かなぁ?」
転校当日に話をするようになった清水と須藤と園田と香川と5人で一緒に過ごすことが増えたあやめ。5人でうろうろしていた。
『四ノ宮さん!11位で出てるよ!』
野田という成績上位のクラスメイトに声をかけられた。
「え?うそ⁉︎」
あやめは野田のいる方まで走った。そこには【11位 四ノ宮あやめ】と貼られていた。順位表を携帯で撮って龍一にメールを送った。
『誰にメールしたの?』
野田に聞かれる。
「あ…お母さんに…」
『まぁ11位だもんね!私もお母さんに報告しよーっと!』
3位だった野田も写メを親に送った。
『私は家で言う…。』
清水は真ん中辺りだったので報告するほどの事でもないと思ったようだ。
「あたしね、成績が真ん中より上だったら海に連れて行ってくれるって約束したの!だから頑張ったの。清水さんは真ん中だし別に悪くないよ?」
『良くも悪くもないけどね~。私も次のテストの時お母さんと何か約束しようかな…そしたら頑張れそうな気がして来た!』
清水の表情が明るくなった。
『ねぇ、夏休みになったらみんなで遊ばない?』
清水がいつものメンバーとあやめに話しかけた。
「あ…あたしは…ちょっと難しいかも…」
友達が出来て遊びに出ることに彩菜から何も言われないと思うが龍一が黙っていないと思ったのであやめは断った。
龍一はあやめが中学校に通うようになってからまた不良に戻らないか厳しくチェックしているんだと思い込んでいた。
そして何事もなく短縮授業も終わり夏休みに入った。
夏休み初日。
明菜が海に行くための水着をみんなで買いに行くと言い出したので女性陣全員で出掛けて行った。
退屈なので蓮二の部屋に入る龍一。
『明菜のヤツあやめにとんでもない水着コーディネートしねぇだろうな…水着なんてあのスクール水着でいいじゃねぇか!』
相変わらずあやめのファッションに厳しい龍一。
『また水着のこと言ってるのか!スク水とプライベートは別だろ!中学生でも女の子は女の子!おしゃれしたいでしょ!あやめちゃんにその意識がなくっても明菜がそれを許さないだろ!』
蓮二は女の子の心情がわかってない龍一に笑いながら指摘する。
『ビ…ビキニとか選んだら俺はあのスクール水着に変えてやる!』
『あやめちゃんのビキニ…破壊力ありそうだな。』
蓮二はスクール水着であれだけ騒げるんだからビキニなんか着たら気絶するんじゃないかと思うとおかしくてたまらなかった。
『ビキニなんか下着と変わらねぇだろ!あやめはまだ12歳だぞ!あんなの着て紐とか解けてあの大きな胸が見えたりしたら…どうするんだよ!』
『俺に言われてもなぁ。あんなのってどんなのだよ!あやめちゃんだって明菜にいくら勧められても胸や尻が丸出しになるヒモみたいなビキニ断るだろ!』
大笑いする蓮二。
『あの明菜が何選ぶかわかったもんじゃねぇ!サッサと帰って来いっての。』
『まぁまぁ女の買い物は長いんだからさ~気長に待てって。』
蓮二はイライラしている龍一を見てるのが面白かった。
待ちきれない龍一は拗ねて自分の部屋に戻ってふて寝をすることにした。
16時頃になって女性陣がワイワイしながら帰って来た。家の中が急に賑やかになった。皆で集まって3階のリビングで買って来た水着を皆んなで見せ合いっこしている。
龍一はまだ部屋で寝ていた。
『お~!賑やかだなぁ!俺も混ぜて!』
賑やかなことが大好きな蓮二が仲間に加わる。
『え?この黒いビキニ誰の⁉』
蓮二は手前にあった黒いビキニを指さした。
「お母さんのだよ?」
あやめが答える。
『こんなの着るの!?ヤバいっしょ!』
蓮二はめちゃくちゃ否定的な言い方をした。
『何がヤバいのよ!』
『おばさんが張り切ってビキニとか!痛いじゃん!』
蓮二は彩菜のことをからかうようにして笑う。
『ちょっと!おばさんですって!?私まだ33歳なのよ!まだビキニだって本当は着れるわよ!?』
実は彩菜は16歳でこの双子を産んだのでまだまだ若かったのだ。
『産んでくれって頼んだ訳じゃないって言うかも知れないけど10代でアンタ達産んで20代で育てて手が離れたら30過ぎてたのよ?若い時の時間吸い取っておいてその言い方ないじゃないの!』
彩菜はついムキになって蓮二に文句を言った。
『悪い!言い過ぎた。ゴメンって。』
蓮二は彩菜の地雷を踏んだと思ったので咄嗟に謝った。
賑やかにしていたので龍一は目を覚ましリビングに行った。
『これは何を?』
途中参加なので把握できてない。
『水着の品評会よ!』
明菜が元気よく答えた。
『…あやめの水着は!?』
龍一は何よりもあやめの水着が気になった。
「あたしのは…明菜ちゃんが選んでくれて…」
『明菜が!?お前変なの選んでねぇだろうな!?』
龍一は明菜を睨んだ。
『どういう意味よ!ちゃんとあやめちゃんに似合いそうなビキニタイプだけど胸が目立たない可愛い水着選んであげたのよ!上からパーカー着るって言うから合わせて買ったし!』
明菜はそう言うとあやめに選んだ水着を龍一に見せた。
『あ…思ってたのと全然違う…胸は目立たないけどビキニタイプってところが気になる…でも可愛いと思う。』
『龍一は私が何を選ぶと思ってたのよ!失礼ね!』
明菜が怒っていたので蓮二が2人で話ていた事を笑いながらバラした。
『龍一がさ、胸や尻が丸出しになりそうなヒモみたいなビキニを選んだらどうしようって悩んでたんだよ。』
『胸とお尻が丸出し⁉︎馬鹿じゃないの⁉︎そんなの選んだとしてもママとおばさんが許す訳ないでしょ!ホント馬鹿じゃないの⁉︎』
明菜が大笑いしている。
明菜の大爆笑で水着ショーは終わった。
ショッピングの帰りが遅くなったので大人達は寿司を注文して和室でお酒を飲みながら談笑し子供達はリビングでピザを食べながらさっきのヒモ水着ネタを掘り返されて龍一はみんなに大笑いされた。散々笑われた後、みんなで部屋をで片づけして各部屋に戻っていった。
その後龍一は和室で談笑している大人の目をかいくぐってあやめの部屋を訪ねた。
あやめの部屋のインターフォンを鳴らした。
「リュウ?どうしたの?こんな時間に?」
あやめは龍一の顔をカメラで確認したのでドアを開けた。
『ちょっといいかな…』
龍一は部屋に入っていいか尋ねた。
「うん。ジュースか何か出そうか?」
『いい。』
「どうしたの?」
『テストの順位11位って凄いよな。よかったな!』
「うん!リュウのおかげだよ!」
『…。』
「どうしたの?…お腹痛いの?」
『…』
あやめは首をかしげながら龍一の顔を覗き込んだ。
『あやめ!俺…お前の事が好きなんだ…。服の事言ったり水着の事言ったりあやめに意地悪なこと言って…悪いと思いながらもついアレもダメコレもダメって決めつけて言ってた!それに学校で俺以外の誰かと仲良くなったらどうしようってヤキモチ妬いてて…ゴメン…あやめのこと好きだからつい…』
龍一はあやめに告白したが一気に色々言い過ぎてちょっと訳が分からなくなっていた。
「え?好きって?ピザが好きなのとは違う感じの?」
とんちんかんな回答が返って来た。
『え?…あやめはピザが好きなのと俺の事が好きなのと同じ感覚だったの?』
「どうしてあやめがリュウの事好きなこと知ってるの?でもこの好きはピザが好きなのとは違う…これって何なの?」
『…それは【恋愛感情】って言うんだよ。恋してるんだよ!俺も同じ気持ちなんだよ!何回も言わせんな!』
「…あやめ…時々リュウのこと考えてたら胸の奥がキューってなるの。今何してるのかな?って思うと。恋してるからなの?」
『多分…きっと…俺もあやめの事よく考えてる…』
「うそ…うれしい…」
あやめは嬉しすぎて目が涙でいっぱいになってうるうるしている。
『嬉しいのに泣くなよ~!』
「だってあやめがずっと恋してたリュウの方からあやめのことが好きって言われたんだよ?嬉しいに決まってる!」
目に涙を溜めて一生懸命話しているあやめがとても可愛く見えて龍一は思わずあやめのおでこにキスをした。
『かわいかったから。じゃあな!お休み!』
龍一は自分のした行動が恥ずかしくなってあやめの部屋から出て自室に戻って行った。
龍一は顔から火が出るくらい暑かった。いや熱かった。これは夏のせいじゃない。部屋に入るとエアコンを19℃のハイパワーにして扇風機とサーキュレーターを自分に向けて更に上半身裸になって妙な暑さ…熱を下げる行動を取った。