産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 吉澤家での暮らし 3

吉澤家がヤクザの家系である事はわかった。
ヤクザの家での預かりになるあやめは本当は隣接町の中学の学区なのだがあまり周りに知られないようにもう1つ離れた学区の学校に転校する事を決めた。

慶と彩菜は複雑な家庭事情をなるべく知られないように配慮した。学校から家が遠いので彩菜が毎日送迎する旨を学校に伝えた。新しい学校にはあやめが小学生の頃から学校に通っていないことと地元中学には一度も通学していないデータがあったので新しい中学から心配されたが彩菜はあやめが家でホームスクーリングをして既に中学の勉強に追いついていることをしっかり伝えた。

隣隣接町の中学は公立だが校風も自由で厳しくない学校だと評判がよかった。学生も少なく2クラスしかないという。あやめが入るAクラスはあやめが入って30人という少人数なのであやめも馴染みやすいだろう。
18人が女子、12人が男子という編成。しかも3年間持ち上がりだという。
彩菜は学校に転校手続きの書類を出し終えて隣隣接中学の校長に挨拶をして家に戻って来た。

子供は言われるがままに行動するだけだが大人は色々と忙しい。
あやめはその日夕方になってから龍一が学校から帰った後で勉強を教わって学校に行く準備をしていた。

翌日。

『あやめちゃん、今日は忙しくなるわよ!制服見に行ったり学校指定の物を揃えなくっちゃだから!』
彩菜は朝食時間の時にあやめに声をかける。

「うん!制服…セーラー服だったらいいなぁ。あたしセーラー服好きだから。」

『隣隣接中ってどんな制服か誰か知ってる?』

『さぁ…?』
珍しく秋乃が答えた。

秋乃と明菜は聖セント女学院という私立の小中高一貫の女子校に通っているしスクールバスで登下校しているので公立の中学の制服がどこの学校なのか知らない。

『あやめちゃんの好きなセーラーだといいね。』
秋乃が笑顔であやめに言った。秋乃があやめにこんな風に口を聞くのは初めてだった。

「うん!」
あやめは秋乃に声をかけられたことがうれしかった。

『セーラーでもブレザーでもどっちでもいいけど転校生ってだけで目立つんだから可愛く見えないようにしてろよ!前髪伸ばして顔隠してろ!』
気に入らないオーラ全開で龍一が話に割って来る。

『アンタまたそんな言い方して…女の子なんだから可愛い方がいいに決まってるじゃないの!ねぇ?あやめちゃん。』

「ん?」
あやめは何も聞いてなかったようだ。

『さぁ!アンタ達は早く学校に行った行った!私とあやめちゃんはそのあと色々忙しいんだから!』

龍一はブツブツ言いながら蓮二と玄関を出た。

『お前さ、何がそんな気に入らないんだよ!』
蓮二が龍一に尋ねる。

『今まで学校に行ってないのが当たり前だったけど…学校に行ったら新しい出会いとかあるじゃん?もしも変なヤツが…』

『もうヤンキーじゃないし来ないだろ?』

『変な男とか…』

『送迎にあの母さんが付いてるんだぞ?』

『だってさ…』
不貞腐れた表情の龍一。

一方で彩菜とあやめは台所で食器を片付けていた。店舗が開く時間帯まであやめは家事の手伝いをして過ごした。

時間となり制服を専門に扱っている店舗に出掛けた。
店には学校指定の体操服や水着や上履きや靴などが全て揃っていた。
制服はあやめの好みのセーラータイプだったがブレザー要素も入っている。
冬服は白いセーラーブラウスの上にボレロのような紺色のジャケットになって下は紺色のプリーツのスカート。
夏服は白いセーラーブラウスに紺色のプリーツスカートだった。公立なのに茶色のローファーという珍しい指定靴だった。試着室から出て来たあやめに可愛いと声をかける彩菜。

体操服の夏用は襟のないTシャツタイプで衿ぐりと袖ぐりが赤っぽいチェック模様で下がピタっとしたオレンジ色のホットパンツ。
冬用は上下赤の長袖と長ズボンに白いラインの入ったもの。

水着が通常のスクール水着とは違って見た目が紺色のミニのワンピースのような仕様で身体のラインがはっきりとわからない物だった。
胸元に大きなリボンが付いていてウエスト部分からミニのティアードスカートに見える布が縫い付けてあるデザイン。

「お母さん、この水着可愛い!ワンピースみたい!」

『ホント!最近は色々考慮されてるんですね〜。』

『そうなんですよ!隣隣接中学のスクール水着は可愛いから他校の女子に人気なんですよ。他の中学は競泳用っぽいスパッツタイプの水着が多いんですけどね。』
と店員と彩菜にが話をしている。

『時代が変われば水着も変わるものなのね〜。』

『そうなんですよ〜。』
店員と彩菜が話している間あやめはそのスクール水着を試着して鏡の前でくるくる回っていた。スカート部分がふわふわして可愛らしい。

あやめは小柄だけど中学1年生では普通にいる体型なので店舗にあるサイズの合った物を一式揃えて購入した後で教科書を売っている場所に移動した。

「お母さん!これ同じ教科書だよ!全部!」
とあやめは持って来ていた教科書を出して来た。教科書は全く同じ物だったので買わずに済んだがあやめの持っているノートはキャラクターものばっかりだったので普通のノートを買って店を出た。

試着やスカート丈の直しに時間がかかったけど一通りの事が済んだので2人で少し遅い昼食を食べた。

「お母さん、学校行くの楽しみだけど…緊張するなぁ。みんなの前でちゃんと挨拶出来るかなぁ?」

『大丈夫よ!今のあやめちゃんだったら!心配だったら家で練習する?生徒役ならいっぱいいるわよ?』
彩菜は冗談のつもりで話したけど

「うん!それがいい!」
あやめは本気に捉えて練習する気満々で答えた。

彩菜はあやめとゆっくり過ごしてから家に戻って瑠衣にあやめの制服を披露する為にあやめを連れて母屋のリビングに集まった。

『セーラーだった?』
と瑠衣に聞かれるあやめ。

「うん!セーラーとブレザーを足したような服だった!可愛いよ!見て!」
と制服を広げて瑠衣に見せるあやめ。

『なんか公立っぽくないわね。可愛い!』

『そうなのよ!水着なんか特に!見て!』
何故かあやめと同じテンションで喜んで水着をお披露目する彩菜。

『えー!これだったら恥ずかしくないわね!ワンピースみたいだし!』
同じくテンションが上がる瑠衣。

『これから学校生活が楽しみね!』
彩菜と瑠衣に同じことを言われたあやめ。

「うん!お母さんありがとう!」

『これは四ノ宮さんから預かったお金で買ったの。後で私からお礼の電話入れておくわね。』

「パパが出してくれたの?」

あやめは裕二が自分の為にお金を出してくれた事を嬉しく思った。
それから学校道具は紙袋に詰めてあやめは彩菜と一緒に荷物を部屋に持って降りて服をハンガーにかけたり引き出しに片付けたりした。

その後彩菜は母屋の1階に住む「下積み」と呼ばれている少年達を20人程集めてあやめを紹介して挨拶の練習をさせた。
生徒役が年上のいかにもヤンチャそうな少年ばっかりだったが何度も練習している内にあやめも次第に緊張せず大きな声で
「四ノ宮あやめです。これからよろしくお願いします!」
と言えるようになった。
大きな声で言えるようになったら拍手するように彩菜が前持って伝えていたので最後は拍手喝采だった。

「お兄さん達、今日はありがとうございました!」
と頭を下げて彩菜と一緒に部屋を出た。

その後あやめは母屋のキッチンに行って夕食の手伝いをしながら彩菜に白いジャージのお兄さんが居なかった話をして瑠衣と3人でその話に花を咲かせていた。この話は後ほど。

時を同じくして秋乃と明菜、龍一、蓮二が学校から帰って来た。

龍一は制服を着替えてからキッチンにやって来て椅子に座った。

『あやめ、制服はセーラーだったのか?ブレザーだったのか?』

「セーラーだけどブレザーも入ってる感じ。可愛い制服だったよ。月曜日からあの服着て学校行くんだと思ったら嬉しくって。あとね、今日学校に行ってちゃんとみんなの前で挨拶出来るかお母さんと1階に住んでるお兄さん達の前で練習したの。ちゃんと挨拶できるようになったよ!」

『母さん!あそこに連れて行ったの!?あやめ1人で!?』
大きな声で彩菜に尋ねる龍一。

『私が着いて行ってるに決まってるでしょう!バカな事聞くんじゃないの!』

『あんなヤンチャな野郎ばっかりの場所に1人で行かせたかと思った…母さんがいたなら問題ないや。』
一体何の立場からの物言いだろうか。

夕食も終わりみんながてんでばらばらになるような時間になってもあやめと彩菜と龍一はキッチンにいた。
彩菜は今日あやめと学校に行く準備を殆ど済ませた話を龍一にしていた。

『そうそう!あやめちゃんの行く学校のスクール水着がすっごく可愛くてねぇ!ワンピースみたいでね!』
と彩菜が話していると…

『水着!?何で水着なんかいるんだよ!』

『そりゃ夏だもの。プールの授業があるじゃない。』

『共学だろ!?男子も一緒に授業受けるのか!?ダメだ!水着なんか!』

『何言ってるのよ?授業に一環なんだから受けなきゃダメでしょ。あやめちゃんもプールに入れるって喜んでるわよ?』

『プールのある時期ずっと休んでろ!まして可愛い水着とか…ビキニとかじゃないだろうな!』

『バカじゃないの!?どこにスクール水着がビキニの中学校があるのよ!』

『じゃあどんな水着だよ?着て見せろよ!』
突飛もない事を言う龍一に驚く彩菜。そして何目線で物を言っているのかと同時に思った。

「別にいいよ。下で着替えて来る。待ってて。」
あやめは特に何も思わず自室に戻って水着に着替えてキッチンに戻って来た。



「ほら、服みたいで可愛いでしょ?」
と龍一の前で一回りした。

『背中が見え過ぎ!スカートが短くて尻が見えそうだ!いや見えてる!』
何故か不機嫌な龍一。

『水着だから背中が開いてて当たり前でしょ?お尻の辺りが見えそうなのは仕方ないでしょ。水着なんだから。』
彩菜は不思議そうに答えた。

『そ…それに…なんだよその胸は!…デカ過ぎだろ!俺はそんなの知らなかったぞ!』
龍一は突然目に飛び込んで来たあやめの胸の大きさに驚いた。

『うっせーなぁ。何やってんの?お!あやめちゃんそれ学校の水着?可愛いじゃん!体型隠されてるしいいじゃん!』
騒いでいたので蓮二がやって来た。

『体型隠されてないじゃん!あの胸…俺はあんなにデカいなんて知らなかった!』
龍一があやめを指刺した。

『胸?お前今頃気付いたの!?俺は最初から目に入ってたけど?しかもそんな童貞みたいな反応して。どうしたの?』
蓮二は初めて見た時からあやめの胸の大きさに気付いていたという。

『悪かったな!童貞で!俺はお前みたいに遊んでないからな!』
気付けなかった自分だけ蚊帳の外にいるような気分になった龍一。

スクール水着1着でなんでこんな話になっているのかさっぱりわかってないあやめだった。

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