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産業廃棄物のお姫様 あやめ外伝 エピローグ

某3月31日。あやめは今日で16歳となった。龍一は20歳になっていた。
2人は双子用のベビーカーを押しながら区役所に行って婚姻届を出して受理してもらった。

『今日から吉澤あやめだな。』

「ずっと一緒に居たのにね。改まるとなんだか照れ臭いなぁ。」

大河と銀河は龍一の子供として認知されていたので生まれた時から吉澤の苗字を名乗っていた。あやめは4年経ってやっと吉澤の苗字を名乗れる事に喜びを感じていた。

あやめは身長が少し伸びて154㎝になって雰囲気も少し大人っぽくなっていた。

大河と銀河は2歳半になった。年齢の割によく話すし理解力があって頭のいい子であった。吉澤家の家系だろう。

大河は物静かで大人しいが次男はヤンチャで勝手に走り回って勝手にコケて「ママぁ〜」と号泣するのが日常だった。
長男の性格はあやめ似で次男は龍一に似ている。

あやめの誕生日は学生が春休みなので披露宴パーティーをするには持って来いの時期だ。

龍一とあやめは婚姻届けを出す数ヶ月前に友達だけ招待した披露宴をしようと考えていた。
親抜きで考えていたが彩菜と慶が居ないと子供達が飽きた時に困るので端の方に席を用意していた。

あやめは披露宴の3ヶ月前に中学の友達の4人と悠梨に招待状を送っていた。高校生でも来れるよう3千円という会費制にした。

全員出席すると言うハガキが届いた。


――当日ーー

慶の親友のエリック・岩崎が持ってるレストランの店舗で披露宴を開く事になった。
友達だけ呼んでするには大きすぎるくらいだった。一流のシェフのいる店なので料理は期待出来る。皆が満足して帰れる事は間違いない。

普段はただのレストランなので普通にテーブルが並んでいるが今回披露宴と言う事で花道を作ってくれた。岩崎家と長年付き合いのある吉澤家のイベントだったので特別仕様に変えてくれたのだ。

「みんな来てくれてるのかな…?ちょっと恥ずかしいなぁ。」

『前だけ見てたら恥ずかしくないって!』
龍一はあやめを元気付けるように声をかけた。

龍一とあやめは腕を組み真ん中を歩いた。その後ろに大河と銀河が花嫁の長いベールを持ってちょこまか歩いている。その2人の手にはあやめが修学旅行で買った新選組マスコットが握られていた。

「双子かな?かわいい!あれって四ノ宮さんが修学旅行で買ってたマスコットだよね。親戚の子供かな?」
清水達はその姿を微笑ましく見ていた。

すると司会の女性が
『新郎新婦のお子様の双子の大河くんと銀河くんが新婦あやめさんのベールを持って歩いています。今年の8月で3歳になるそうです。皆さま温かい拍手をどうぞ!』

あやめに子供がいることに清水ら4人は混乱した。

新郎新婦が席に座ってから順番に料理が運ばれた後、乾杯してから清水ら4人があやめに近付いて来た。

『四ノ宮さんおめでとう!すっごく奇麗!この1年ですっごく大人っぽくなったね。それに…こんなに早く結婚するとは思わなかった!この子達…四ノ宮さんの子供なの!?』
腹に居るならまだしももうすぐ3歳になる子供だ。不思議に思っても仕方がない。

「うん…実はずっと内緒にしてたけど中学2年生の夏休みに産んだの。学校に行ってる間はお母さんに面倒見てもらってて…あ、いつも送り迎えに来てたお母さんって私のお母さんじゃなくて実は彼のお母さんなの。」

『え!?四ノ宮さんのお母さんだと思ってた!そうだったんだぁ…子供は四ノ宮さんに似てるの?』
双子を覗き込む清水。

「顔は彼にそっくりだよ。痛い思いして産んだのに…。私に似てないの。長男の性格は私に似てるかな。次男は彼というか彼の双子の弟の方に似てるかも…。」
5人で笑い合った。

一方龍一は大学生のノリで騒いでいた。
キスコールが起きて大盛り上がりになって皆の前でキスをした。あやめは同級生が見てる前だったので恥ずかしかったけど大学生の盛り上がり方は最高潮に達していた。
同級生も盛り上がって写真を撮っていた。

盛大に盛り上がった後は賑やかにお食事タイムとなり
【花嫁からの手紙】という披露宴で欠かせないお涙頂戴の時間が来た。

あやめは緊張しながらマイクを取った。

「私は実母に恵まれませんでした。だけど周りの大人にとても恵まれました。森本のおばちゃん、吉澤のお父さん、お母さんそして吉澤一家の方々…皆さまのおかげで今の私がここにいます。ここにはいませんが森本さんにはとても感謝しています。あのままだったら私は非行の道に走っていたでしょう。その後森本さんに吉澤家の方々を紹介されて今に至ります。金髪の不良少女だった頃に龍一さんと出会いました。その頃の私はこの出会いで大きく変わるとは思ってもみませんでした。中学を転校してその年に妊娠しました。龍一さんとの恋愛は私が幼な過ぎて今になるとちょっと笑ってしまいそうなエピソードがありました。今もまだ幼くて無知なところはありますが当時に比べたら前進しているとっていますがどうでしょう?中学生で出産する事を決めた私のわがままで母には本当に迷惑をかけたと思います。吉澤のご両親には子供の事や学校の事で大変な思いをさせてしまいましたがいつも私に優しく接してくれました。…私を吉澤家で預かってくれた事、私のわがままを沢山聞いてくれた事、本当にありがとう。龍一さん、私に大河と銀河に会わせてくれてありがとう。私を母にしてくれてありがとう。中学1年生になってから素晴らしい出会いをすることが出来ました。皆様にはありがとうとしか言う事が出来ません。披露宴に来て下さった方、ありがとう。今日という日に感謝します。あやめ。」

拍手喝采だった。遠くから見ていた彩菜と慶は涙ぐんでいた。

あやめは涙でぐしゃぐしゃになって最後までちゃんと言えたのかわからなくなっていた。あやめが泣いているので大河と銀河までつられて泣いてしまったので龍一が銀河を肩車をしてあやし始めた。すると急に泣き止んではしゃぎ出した。大河はあやめに抱かれて泣き止んだ。

落ち着いた後皆はスマホやデジカメでで撮影し始めた。

蓮二が彼女を連れて2人の側にやって来た。

あれから蓮二は本当に変わったのだ。今日連れて来た子は結婚を視野に入れて半年くらい前から付き合っている瑠璃という彼女。あやめと龍一は蓮二と瑠璃に挨拶をした後耳打ちをした。

「この後大河と銀河が花束を持って来てくれるの。その後その花束を受け取ったらブーケトスするから蓮二と瑠璃さんに向けて投げるからキャッチしてね。」
ヤラセ感満載だけどそれでいいのだ。カップルは1組しかいなかったから。

その後大河と銀河とで小さな花束を持って来た。

司会の女性が

『とても小さな2つのブーケですがこれでブーケトスを行います!会場の皆様テーブルに気をつけてキャッチして下さい。では行きますよー!』

そう言うとあやめと龍一は瑠璃と蓮二に向かって小さなブーケを投げた。見事2人がキャッチした。大きな拍手で2人も祝われた。きっと次は2人の番だろう。

子供達は飽きて来ていたので両親に預け龍一が立ち上がりあやめはその横に一歩引いて立った。

『本日は私達の為にお集まり頂き誠にありがとうございました。私達はまだまだ若くて未熟者です。私に至ってはまだ学生なので人の手を借りないと何も出来ない半人前以下ですが慌てず時間をかけて一人前になりたいと願っています。結婚は通過点です。私はあやめの10代という大切な時期を奪ってしまいましたがあやめは何一つ文句を言いません。こんな女性何処にもいないと思います。私は何十年先であろうとあやめを愛し続けることを皆様の前で誓います。そして子供達の成長も楽しみにしたいと思います。やっと夫婦となり家族になりました。どうぞこれからもよろしくお願いします。』

盛大な拍手が起きた。

披露宴は滞りなく終わった。

あやめと龍一は着替えて子供を抱きかかえた。
子供達はすっかり寝ているので龍一の車につけているチャイルドシートに座らせてあやめが龍一の車に乗ろうとした時、あやめの同級生達が駆け寄って来た。

『四ノ宮さん!今度みんなでショッピングでも行こうよ!』
あやめの謎が解けたので遊びに誘って来た。

「嬉しいけど…小さい子が2人もいるからみんなに迷惑かけちゃう。気持ちだけ貰っとくね。ありがとう。」
そう言うとあやめは龍一の車に乗った。

『別に1日くらい構わないのに。』
龍一はもう昔のようにうるさくない。

「いいの。自分だけ学生じゃないからきっと話が合わなくなってると思うの。1人だけ取り残されちゃうの嫌だし。だったら悠梨ちゃんと子供の話してる方が楽しいと思うの。」

同じ年齢でも女子高生と子持ちの主婦では話す内容が全く異なる。女子高生の中に入って浮いてしまうより何でも話せる悠梨の方が今のあやめには大事だった。 

『…そっか。無理して行くぐらいなら会わない方がいっか。じゃあその仲良しの悠梨からせっかく温泉のチケットもらったし…プチ新婚旅行に行きますか!』

架空都市部から少し離れた郊外の温泉旅館のチケットを3日前悠梨からプレゼントしてもらったので4人で行く事にした。部屋に露天風呂がついているらしい。

「今年はもう桜も咲いてるし…夜桜とか見れるのかなぁ?」

『俺は夜桜を見ながら露天風呂に入るあやめが見たいなぁ。』

「もう…えっち…」
まんざらでもない返しをするあやめ…後ろの席で子供が寝ていることを忘れている二人は龍一の両親に何となく似ている。

温泉に着いた頃が夕方だったので旅館で豪勢な夕飯を食べた後子供を布団に寝かせて部屋の縁側で寄り添う龍一とあやめ。

「今日はお昼も豪華だったしお腹いっぱい胸もいっぱい。」

『それ以上胸はいっぱいにならなくていいよ?』

「もう!えっち!」

『湯船に浮いてる花びら奇麗だな。』
2人は露天風呂を足湯にしながら手を繋いで寄り添った。

「せっかくだし…入りたい!」
あやめは潔く浴衣を脱いで裸になって露天風呂にぴょこんと飛び込んだ。龍一も一緒に飛び込んだ。

「三日月が素敵…桜も奇麗…。」

『よし!これから毎年ここに来よう。』

「大河と銀河が嫌がるまで一緒に来たいな。」

『嫌がったら2人だけで来よう。』

「ずっと嫌がらずについてきて欲しいなぁ。」

『それじゃ2人っきりになれないじゃん。』

「今寝てるから2人っきりだよ…リュウ…大好き。」

『俺もあやめが大好きだよ。これからもずっと一緒だよ。』

そっとキスをする2人。

花びらの舞い散る湯船の中で永遠の愛を誓った。
夜空の月の光に照らされ桜の花びらが舞い散る景色はとても幻想的で美しかった。



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