地域をベースにした終活を目指す "まちの終活 佐藤春華さん"
看護師時代に終末期医療に携わり「人の最期」と向き合う経験をされ、その後コミュニティーナースとして地域の中で活動。現在は「まちの最期」と向き合いながら「まちの終活」をコンセプトに出会った一人ひとりを大事にしながら活動されている佐藤さんにお話を伺いました。
プロフィール
出身地:秋田県男鹿市
活動地域:京都府
経歴:大学卒業後、看護師となり終末期医療に携わる。その後、京都府綾部市のコミュニティーナース(地域の中で住民とパートナーシップを形成しながら、その専門性や知識を活かして活動する医療人材のこと)として従事。
活動:現在は京都府の嘱託職員として京都全域の地域活動に携わりながら、「まちの終活」につながる企画を考案し、活動の幅を広げている。
「最期まで安心で幸せなコミュニティづくり」
Q.現在、どのような夢やビジョンをお持ちですか?
佐藤春華さん(以下、佐藤) 「最期まで安心で幸せなコミュニティづくり」を、一生をかけてやっていきたいと考えています。
「最期まで」という言葉には亡くなるまで・命尽きるまで、「安心で」という言葉にはマイナスをなくすこと、「幸せな」という言葉にはプラスを増やすことという意味を込めています。
「コミュニティづくり」というと以前は地域・土着のものということを思っていたのですが、それだけではなく人と人が繋がるものだと今は考えています。
「地域をベースにした終活がしたい」
Q.「最期まで安心で幸せなコミュニティづくり」を具現化するために、どんな目標や計画を立てていますか?その目標に対して現在どのような活動をしていますか?
佐藤 まちの終活という活動をやりたいと考えています。終活というと一般的に人を対象に行われているのですが、まちの終活は地域をベースにした終活です。
まちの終活において、「ムラツムギ」という有志の団体を作って活動しています。現時点では、週一回のオンラインミーティング、活動を広げるためのトークイベントの企画、論文の執筆などをしています。また2年間住んでいた綾部市の限界集落のインタビューに頻繁に足を運んでいて、有志でニーズを調査したり、京都府内の集落のエンディングノートを作ろうと企画しています。
2019年は様々な活動をして、その中から事業化するものを決め、2020年からは法人格を持って活動を開始できたらと考えています。
「どう亡くなりたいか=どう最期まで過ごすか」
Q.「まちの終活」という活動につながった背景には、どんな気付きや出会い、ご自身の変化があったのでしょうか?
佐藤 私が生まれ育った場所は限界集落でした。将来無くなるかもしれないという中で、生まれ育った地域が無くなるという現実を思いながら育ってきました。
また、コミュニティーナースとして綾部市で活動していた時に、故郷である秋田と重なるところがありました。
「田舎だし、人がいないし、寂しいし、人が帰ってこないし、若い人がいない。そして、この地域がなくなる・・・」
そんな現状なのですが、「だから、どうするのか」ということを誰も語らないんです。そこに違和感がありました。
地域の最期もきちんとデザインされると、過疎化などが問題にならないのではないかと思ったのです。でも、そういう活動をしてる会社に会ったことがないですし、世の中を見たら地域活性化や地方創世しかなく、そういったところにたくさんお金が使われている実情でした。
でも実際にコミュニティーナースとして地域に出てみたら、おじいさん・おばあさんが「自分の最期も分からない」のにも関わらず、地域活性化に疲弊している姿を見ました。
そんな経験をしていく中で、地域活性化だけではなくて、地域が無くなるということが前提とされたサービスづくりがしたいと思うようになりました。
「どう亡くなりたいか=どう最期まで過ごすか」だと思うので、このサービスをきちんと事業化したいと考えています!
「死って不幸じゃない」
Q.その気付きや出会いの背景には、何がありましたか?
佐藤 大学卒業後、看護師になり勤務したのが療養型の病院でした。亡くなるまでいること・死が前提の病院でしたので、死から目を反らせない環境でした。
死とは、ただ死なのではなく、「生きて・生きて・生きて」その積み重ねられた“生”というものがあっての“死”なのです。「生きる」というコアな部分がないと死の瞬間は作られません。だからどうやって生きていくのかを考えないといけないんです。
私が病院で意識していたことは「どう死にたいか」を「どう最期まで生きるか」と考えて、スタッフみんなで看護ケアを考えることでした。そして、そうやって迎えた最期はとても暖かいものだったんです。幸せと言ったらおかしく聞こえるかもしれませんが、「こんなこともできた、あんなこともできた」「幸せそうな顔だったね」と思えた時に、「死って不幸じゃないな」と思いました。
このような亡くなる瞬間にもプラスの気持ちが生まれる病院での経験があったので、地域にも置き換えられるものがあるのではないかと思うようになりました。
現実に向き合うのことは辛いことかもしれませんが、「最期までをどう過ごすか」を考えるのと考えないのでは全く違います!だから私は、最期の瞬間に向き合っていきたいと考えています。
記者 なるほど、とても深いですね。お聞きしながら胸に響くものがあります。普通は不幸と思ってしまうようなことでも、そこに向き合う在り方を変えることで、きっと現実も変えていくことができるのでしょうね。佐藤さん、貴重なお話をお聞かせ下さり、ありがとうございました!
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●佐藤さんのブログ
【編集後記】
お話を伺って、かなり考えさせられました。普段考える機会の少ない死というテーマですが、誰にとっても本当は身近な存在なのだと感じました。いざ訪れてから後悔するのではなく、その分生きることを大事にできる死の意味を大事にしていきたいと思います。
人として本当に大事なものを持っていらっしゃる佐藤さんは、笑顔もまた魅力的な方でした!佐藤さんの益々のご活躍を応援しています!
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この記事はリライズ・ニュースマガジン“美しい時代を創る人達”にも掲載されています。