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【エッセイ】若い人におごられて、お礼にクーポン渡して、中学時代を思い出した話

「ご馳走さまでした!」
この言葉が聞こえたら、どんな状況を想像するだろうか?「飲み食いをおごってもらったとき・または、おごったとき」と答える人が大半ではなかろうか?

ときどき、エロイ漫画とかでは、先輩女子が後輩男子くんと一夜を共にして、先輩女子が「ご馳走さまでした!」なんてゲスイ使い方することもあるの?ないの?というようなことは、我らの現実世界および並行世界では起きないので、やはり「ご馳走さまでした!」=「飲み食いをおごってもらった」の意になるかと。

おごりのシステムよ、そこになおれ!

仕事柄、喫茶店で打合せしたり、取材先にディレクター同行でそのまま一緒にお昼に行くこともある。年齢的にたまーに年下の取引先やらディレクターと一緒になるのだが、ご馳走した方がいいのか、いや、ご馳走すると仕事欲しいと思われるのもなんだし、と逡巡する。

そもそも、ご馳走=おごりのタイミングってのは、厄介だ。「今日はご馳走しますね」なんて入店前に言うのも野暮だ。ダサい。今日はうまいトンカツが食べたいなんて相手が思っていたらなおのこと。自腹なら高いのも食ってもいいと思うんだけど、おごりって聞いてたら、ちょっと遠慮しちゃうもの。僕はそうだ。遠慮して食うメシのまずいこと。

ランチなんてものは食後のコーヒーを200円でつけられる、最高のオプションがある。だが、「ご馳走しますね」なんて言われたらどうだろう。僕なら「あ、僕いいです」と言ってしまう。ということを想像すると、入店前に「今日はご馳走します」なんて言いにくい。

おごるってのは、やはり食後、サッとレシートを手に取って「今日は私が」ぐらいがいいと思う。

ここで、おごられた側は、アドベンチャーゲームなら以下の3つから選ぶみたいになるんだろうな。

1「それなら、もっと高いの食っときゃよかった」
2「こんど、お返ししなくては」
3「今日はラッキー」

ご馳走サマメモリアルより

飲み食いする相手が、女性という場合もある。よくあるのが、出入りしている先で偶然(必然か?)会う同業者。お茶でも、飯でもと声をかけることもある。となると、声かけた方がご馳走した方がいいのか?とまた余計なことを考えるわけだ。

お茶やケーキ、昼メシをご馳走したぐらいで、男女がどうこうなるわけでもないのだが、しかも結婚もしてますし私。そういうのは置いといても、下心あるなんて思われると面倒だなぁと。そんな人ばかりじゃぁないけれど、迂闊に女性にご馳走するってのは、やめておこうとなるわけだ。しかも、入店前に「ご馳走するね」とは言わない。飲食後に「じゃぁ、ここは私が」ってのも、先述のとおり、下心警報が相手先に鳴るとこちとら困ってしまう。

となると、女性とのランチ・お茶はオジサンの聖地・喫茶店ではなくて、チェーン店カフェに行けばいいと相成った。そう、先払いシステムだからだ。これなら、おごることも、おごられることもない。極めて平穏!

そんな、禁止技あったんかい!

ある日のこと、新しい女性ディレクターと打合せ終わりにお茶でもと。アイスコーヒーがうまい季節だなと、あ、ロールケーキでもつけようかと。「甘いモノお好きなんですね」ぐらいの会話には尻込みしない、だってオジサンだから。居直りでも開き直りでもないけども。

で、列に並び、僕、女性ディレクターの順に。

ショートコント:困ります、ロールケーキ頼んだから

「えーと、アイスコーヒーのMとロールケーキください」と僕
「プレーンのロールケーキが品切れしまして、50円高くなりますがイチゴのロールケーキでしたらご用意できますが」と店員さん
「じゃぁ、そのイチゴのロールケーキでお願いします」と僕
「お会計980円になります」と店員さん
「あ、こっちと一緒でお願いします」と女性ディレクター
「あああ、いや、いいですよ」と僕
「いえ、経費で落としますんで」と女性ディレクター

彼女もケーキ頼んでた

ケーキはあかんやろなー。経費で落ちにくいやろなー。たぶん、自腹なのかなー。こまるなぁ。そうや、「ご馳走様でした!」言わなあかん。とここまで2秒。ご用意できるまで、こちらでお待ちくださいエリアで、女性ディレクターと横並びに。「あ、●●さん、ご馳走様です」とでしたではなく、ですの現在形に整えてのお礼。「いえいえ」とライトな返事。内心、サラリーマン生活が長かったものとしても、ケーキは経費で落ちないと知っている僕。(落ちにくいよね、そうだよね、みんな)

ロールケーキいちごとモンブランを交えたティーパーティーという名の雑談を終える頃にはぐったり。おごられるって、慣れていない。この状況で、おごろうとしてなかった私、ケチって思われていたら嫌だなぁと。

店を出る時に、1,000円返すのもなんだし、「今度は私がご馳走しますね」なんてのは、マッチングサイトで気に入った人に言うテンプレらしいし。さりとて、これから仕事でいくつか案件を一緒にすることにもなろうし、愛想よくイイ感じの人をアピールせねばならない、個人事業主がここに一人。

店を出て改めて「ご馳走様でした。おいしかったですね」と会話しつつ、1,000円渡すのも、今度ご馳走しますも禁じたものとして、何ができるか!おもむろに、財布をごそごそと探り、近くの定食屋のクーポン券「好きな小鉢1品無料」をありったけ差し上げた(たぶん5枚ぐらい)。

「これ、良かったら。そこの角の定食屋。ほうれん草のおひたしとか、ひじきとか小鉢が無料になるって」

「ありがとうございます!同僚と行きます!」
と明るく返してくれた●●ディレクター。思い出したよ、中学生の頃。お金がなくて、でも初めて同級生の女子と映画を観に行った帰り。彼女から妹の誕生日ってことで、小さいポーチをプレゼントしてもらった。

次の週末、彼女の家にチャリで行き(まだ付き合っていません・結局付き合っていません)何かプレゼントをせねばと思い、カバンに入れてた「なめ猫のぷくぷくとした立体ステッカー」と、どこかの会社の創立記念で配られた「金色のテレフォンカード」をプレゼントした。

小鉢無料券<なめ猫のステッカー<金色のテレフォンカード という値打ちだろう。中学を卒業して35年、ほんとこの感じで良く結婚できたなぁと今でも思う。

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