【職場のトリセツ】脳の仕組みを理解すればうまくいく。上司と部下のコミュニケーションエラーはどうして起きるのか?(講演会のまとめと感想)
黒川伊保子氏の研究とは
人工知能研究者 AI元年といわれる1983年全く新しい人工知能を研究する一員として富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(現富士通)で14年間にわたり人工知能(AI)開発に従事。1991年に4月に全国の原子力発電所で稼働した世界初の日本語対話型データベースを開発。AIのペルソナは「35歳美人司書」。そこで、映画やドラマをなどの人間関係をシステム工学で観察すると男女の会話に違いがあり、脳に流れる電気信号にも差があることを発見する。
この特徴を捉えて会話をすると家庭も職場もコミュニケーションは劇的に改善されることがわかった。
ポイントは以下の3つ。
①この世の対話には2種類しかない
1つは「問題解決型」。「問題解決型」は男性脳とも言われ、特徴は今すぐ出来ることを考える。例えば子供が熱を出したときに、今日が土曜日であればまず、診察を受け付けている病院を探し、車を手配するような行動を起こす。危険が迫っているときに一刻も早く手を打つ行動を行なおうとする。
もう一つは「共感型」。「共感型」は女性脳とも言われ、ことのいきさつを反芻するプロセス。そういえばがキーワード。例えば子供の左手に湿疹を発見する。この湿疹は何故出来たかを考える。「そういえば夕方公園で遊んだときに何かに触れたかもしれない。」などと過去を遡り判断する。その理由は二度と繰り返したくないから。プロセスに大切なことが入っており、記憶を再現し、根本原因に触れることを特徴としている。立場によっても変化する。上司は「問題解決型」、部下は「共感型」になりやすい。
②「問題解決型」「共感型」に対してどう対処するとよいか?
「問題解決型」は客観性事実以外は捨てて聞く傾向が強い。「問題解決型」は出来る方法を考え、問題点の指摘、直接原因を直したいと思っている。そこに部下がプロセスから話すと、結論まで行き着かずに1つ1つ論破されてしまう。上司はしっかりとアドバイスが出来たと自己満足をする。実際部下は上司が話を聞いてくれず、我慢を強いられてやる気を失ってしまう。「問題解決型」の上司からすると、プロセスから報告してくる部下が言い訳ばかりする頼りない部下に見える。しかしながら、上司も社長に報告する場合は「共感型」に変化する。外部からは社長におもねるように見えるが、本人からすれば説得の為、まわりの状況が何故その結果に結びついたのかを、1つ1つを大切に理解してもらおうとするから、プロセスから話をしてしまう。
「共感型」に対しては話を聞いて遮らない。とにかく「いいね」「わかる」で聞く。人の話を共感で聞く男性はまず少数なので女性からモテル。しかし、共感ばかりする上司では仕事は進まない。その場合はどうするか?その場合はねぎらいながらも、自分はこう思うとアドバイスを行なう。
③否定から入らない
海外の言葉には主語が入っている。だから「ダメ」といわれても何がダメなのかを理解出来る。日本語の場合は主語がない。この場合対象に対し「ダメ」は部分的な「ダメ」なのか?全体の「ダメ」なのか?また、自分がダメと言っているのか?会社がダメといっているのか?世間が「ダメ」と言っているのか?否定された側はより傷ついてしまう。いいねと受けながら○○ならもっと良い。過去にこんなことがあったから、もう少しやり方を工夫すると良いねと言った言い方がよい。「いいね」から入るのは国際標準であると考える。
結論
人の話は「共感」で受ける。自分の話は「問題解決」で話す。問題解決型の上司からの言葉でも「共感」を嫌がる人はほとんどいない。よかれと思い一生懸命仕事をする「問題解決型」の上司が、部下のやる気を削いでいるのは残念なことである。部下もよかれと思い、上司の理解の及ばないプロセスを中心に一生懸命説明する。上司からするといつまでもつづく結論の見えない報告を聞くことになる。我慢ならず上司が遮った場合、結果は重大になる。脳は無駄なことはしない。一度頭ごなしに否定されると「発想そのものを停止」する。発想を広げる会議は共感型が必要である。どうも日本には共感が少ない。20世紀は市場が夢を持って企業が問題解決をやってきたのでうまくいった。21世紀は企業自身が夢を見ていいねを集めないと存在すら出来なくなる。グーグルの研究では心理的安全性(チームの誰もが、非難される不安を感じることなく、自分の考えや気持ちを率直に発言できる状態)が担保されると生産性がもっとも高いチームになると結果が出ている。上司も部下も正しく脳の働きを理解し、いいねを集めないと日本の生産性は上がらない。
黒川伊保子さんのお話は一部人事部の担当者が聞くだけではなく、凝り固まった日本の上司にこそ聞いて欲しい講演である。