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旦那さんに読んで欲しい1冊『きみは赤ちゃん』
川上未映子さんの出産・育児エッセイ
『きみは赤ちゃん』
妊娠・出産・1歳までの育児について描かれた一冊です。
書籍情報
35歳ではじめての出産。それは試練の連続だった!
つわり、マタニティーブルー、分娩の壮絶な苦しみ、産後クライシス、仕事と育児の両立……出産という大事業で誰もが直面することを、芥川賞作家の観察眼で克明に描き、多くの共感と感動を呼んだ異色エッセイが待望の文庫化。号泣して、爆笑して、命の愛おしさを感じる一冊。
旦那さんに読んで欲しい理由
妊娠〜育児のリアルを知っておいて欲しいからです。
お腹に子を宿してからの10ヶ月間、妻の体にはどんな変化があって、どんな気持ちでいるのか。どんな痛み・苦しみを乗り越えているのか。
出産がどれほど壮絶で、産後のダメージがどんなものなのか。ボロボロの体のまま、待ったなしで始まる育児がどれほど過酷なものなのか。
自分の体がどんどん変化していく戸惑い、小さな命を守り抜かなければというプレッシャー。
本書では、妊娠してからの心と体の様子が、小説家という表現のプロによって描かれています。
もちろん妊娠経過や出産の状況は人それぞれ違います。(著者はなかなかハードな方かと思います)
しかし、何が起きてるのかわからないまま、妻が情緒不安定になったり、苦しんでいる様子に戸惑うよりは、
「こんな風になるんだ」「この時期はこんなトラブルがあるんだ」など、情報として先に知っおくのは良いことではないかなと思いました。
同じ体験をすることはできないのだから「わかってよ!」と言ったって無理な話。
奥様が妊娠している旦那様、ぜひ本書を読んでみてください。
もしくは、妊婦の皆様。
「これからこんな風になるみたいだから、読んでおいてね」と、旦那様にサラッと本書を渡してみるのはいかがでしょうか。
『きみは赤ちゃん』を読んだわたしの感想
正直、出産や産後が恐ろしくなって途中で読むのをやめてしまいました。(仕切り直して最後まで読みましたが)
さすが小説家。
痛みやしんどさの表現力がすごいのです。
出産を控えた方は、ネガティブになってしまう可能性があるので注意。
また読みたくなったときに再開するのがオススメです。
表現力の素晴らしさゆえのダメージはあるものの、基本的にはコミカルタッチで妊娠〜育児の様子が描かれています。
読みながらププッと笑ってしまうような内容も多々。
出産後・絶賛育児中・育児が落ちついた頃、折々で何度も読み返したいなと思う一冊です。
育児のしんどさ
授乳・夜泣きによる睡眠不足
赤ちゃんがかわいいとか、かわいくないとか、そういうのと別次元で、「眠れない」ということが精神と肉体をどれだけ破壊するものなのか、わたしは自分が体験するまで、そんなことまったく知らなかった。
睡眠とは人格とか理性とか常識とかそんなもんを鼻息で吹き飛ばすくらい人間にとって本質的なものであり、そう、いわゆる人間の「三大欲」のなかでも、ずば抜けて凄絶なものじゃなかろうか。
産後のメンタル
自分の味わっている痛みやしんどさを、この世界のだれひとり、おなじようにわかってくれる人などいないという、考えてみれば当然すぎる孤独だった。
おなじ経験をしたことのある人でも、わかりあえない。
ましてや男で、妊娠と出産を経験しえない、何重にもかけ離れている男であるならさらにそうで、世界でたったひとりのオニを作った相手といえども…
いまもそこで寝息をたてて眠っているあべちゃんにも、わかってもらえないのだ。わかってもらえるはずがないのだ。
それでも、愛おしいが勝つ
本書を読んで1番伝わってきたこと。
それは、どんなに痛くても、どんなにしんどくても、どんなにつらくても……
やっぱり我が子が可愛くて愛おしいのだということ。
その愛おしさというのは、もう小説家でも上手く言葉で表せていないというか、なんというか。言葉で表せるようなものではないんだろうなと。
わたしはいま自分の都合と自分の決心だけで生んだ息子を抱いてみつめながら、いろいろなことはまだわからないし、これからさきもわからないだろうし、もしかしたらわたしはすごくまちがったこと、とりかえしのつかないことをしてしまったのかもしれないけれど、でもたったひとつ、本当だといえることがあって、本当の気持ちがひとつあって、それは、わたしはきみに会えて本当にうれしい、ということだった。きみに会うことができて、本当にうれしい。