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推しちゃいけない人を推しちゃった件

顔が好きだった。結論はそれである。
世の中結局顔と金であると、かぶれちゃった系ニヒリストがよく言っている。まあ世の中そんな暗いもんじゃないぜ、と、鬱に片足を突っ込みながらも、「為せば成る、為さなくてもなるようにはなる」を復唱し続けている。

だが顔がいい人を好きになるのは人間の本能といえる。逆らえない、抗えない。硝子細工の美しい造形物と、泥団子。どちらかを選ぶなら?といわれれば、きっと大多数は前者を選ぶ。
えっ、恋人を顔で選ぶってサイテー!…と、中学の時の友達が言っていたけど、結局のところ、統計学はブサメンよりイケメンを選んでしまう。この社会はそうなるように出来ている。まあ、それは、そうなるよ、と。

閑話休題、一回無駄話はここで休止して、ぼくの推しの話をしたい。
最近の推し。それは。

単刀直入にいえば、上祐史浩氏である。

元オウム真理教外報部長。緊急対策本部長。
ああいえば上祐と揶揄されるほどの詭弁を、専門家の包囲網の中で振りかざし、一部の界隈では教祖以上の人気を獲得した輩である。
まあ、なんか好きになっちゃいました、って‪コトで…

ぼくは最近宗教犯罪に興味があって、個人的にそれについて調べていた。
とりわけオウム真理教に関心があった。
前々からアルカイダやISなどという、イスラム過激派のテロ組織に関心があった。中でもISはかなり異質だった。だって、ただのテロ組織(あんまりこういうこと言いたくないけど)が、一つの中小国レベルの軍事力をもって、イラクに喧嘩ふっかけて、イスラム社会の復活させるべく「カリフ国成立宣言」みたいなものを発令するやべえ〜やつらである。
しかし日本にもそんなことをしようとして失敗した人達がいることを我々はもう既に認知しているであろう。

そう、オウム真理教である。

日本で最も悪名高い宗教団体、もといテロ組織である。
元々はヨガなんかをやっていた普通の教室ではあったが、段々と宗教色が強くなり、そしてあそこまでの巨大な団体になってしまった。
そして科学開発に手を伸ばし、国家転覆のため、いや、自分たちの信じる真理のために、1995年のあのおぞましい事件をはじめとした、一連の悲惨な事件を引き起こしたのである。
上祐氏はそれらの事件が教団の関与するものでは無いと主張するためにメディアに出演しまくっていた人である。

そんな彼をなんで好きになったのか。

まあ結論は顔である。

彼のちょっとふてぶてしい、常に人を小馬鹿にしたようなあの表情が何かに刺さった。あとまつ毛が長いのも刺さった。

それでいて、ワイドショーや会見なんかでたまに見せるあの笑顔である!
あれがたまらなかった。世界一完璧な煽りスマイルである。そりゃあもう、刺さってしまう。キモオタだから。

まあ理由はあともうひとつある。
オウムを調べ始めた時に、それを題材…というか、元ネタにした漫画を読んだ。

それが……

割とマジでこれだった。

「悪の華」四谷シモーヌさんより

まあ見ての通りオウム真理教インコ真理教のやおい漫画である。

オウム真理教のBL漫画とかあるの?と、友達に聞いてみて、あるよ!って言われて。で見てみたらこの漫画がKindleで100円くらいで売られていたから、興味本位で買って読んでしまった。

内容がめちゃくちゃ好みだった。

面白いかはともかく好みだった。それで余計に、上祐氏に対して興味が湧いてしまった…そんな不純な動機である。それゆえぼくは一貫して上祐史浩顔ファンを名乗り続けている。

まあ、あとはそういうオタクだから、生い立ちが心に来た、というのがある。上祐氏は早稲田大学理工学部から大学院に行って、そこで修士課程を取ってから宇宙開発事業団(現JAXA)に入団した、という輝かしい経歴を持ってたりする。で、宇宙関係に興味・憧れを持った理由。それが、

1962年のアポロ11号の月面着陸である。

これを知った時ものすごい親近感が湧いてしまった。いや湧いちゃいけないけど、湧いてしまった。
元よりぼくはSFキッズだった。特に宇宙には強い関心があった。そこまでの知識は無いが、小学生の頃は宇宙の本を読み耽って、その内容を丸暗記するぐらいには宇宙が好きだった。
それでたまたま顔が好き!ってなった人にそんな感情があったと思うと、何かこっち側意識というかそういうのを抱いてしまう。(もはやこれは自分の悪い癖だと思っている…)

それからあったお金を投じて、彼の情報を集めた。集めまくった。
その過程で読んだ本があった。
渡辺正次郎さんの、「上祐史浩 亡国日本に咲いた芥子の花」という著作である。これは上祐氏のロングインタビューが載ってると聞いて買った本なのだが、これが中々面白かった。完璧なオウム人たる上祐氏の人間的なところに触れるところが多かった。
わりと語りづらい、彼と実の父親との確執だとか。彼の政治観だとか。言っちゃえば彼が童貞を捨てた年齢まで書いてあった。

そういう人間的なところに触れて、なんかより彼にのめり込むようになったというか……いやあんまりこういうこと言いたくないんだけど……

と、同時に、彼が宗教にハマらなかったら?ということを考えるようになった。

なんとなく残念なのである。彼は賢い。逆らえば殺されるようなあの教団で、教祖にわりと反抗するような人間だったのに、よく生き残れたものである。
しかも、完全真っ黒の教団を守るために矢面に立たなければいけない、しかし周りには専門家がいる。そんな四面楚歌にも等しい状況の中、ワイドショーであんだけ対抗できるだなんて、相当頭の回転が速いんだと思う。
水道橋博士との対談では、彼が一々上祐の話をさえぎって話さなければいけない、と思うほどの話術を振るった。「ああいえば上祐」は今でも健在である、とまで言わせた。

はっきり言って、その賢さには恐怖すら覚えた。
本当は言ってないだけで、いい感じに逃げきれただけで、余罪がまだあるんじゃないか?という疑念まで感じてしまった。

だからこそ、彼のその頭脳が宗教団体のために使われた、というのが残念で仕方がなかった。本当は彼は優秀な技術者になっていたのではないか?
もっと違う道に行っていたのではないか?
そう思うだけでなんか少し悲しくなった。こういうのにたらればなんかは通用しないとは思うが、どうしてもそういう事を考えてしまうのがキモオタの宿命である。

今後も上祐氏の動向はあくまで批判的に捉えながらも、ずっと見守るつもりだ。今、彼はオウムの影響、また、麻原への信仰心を廃したとは言っているが、オウム時代誰よりも修行に夢中になっていた彼が、麻原を父親のようなものだと捉えていた彼が、今でも影響を脱しているとは考えずらい。
しかしそれでも彼はぼくの推しである。こっちからすれば彼は完璧で究極のアイドルなのである。

まあ、だから、余罪とかそういうのを今更追求するつもりは無い。ただ生き残った側の人間として、あの教団のことを語り継いでいく役割を担って欲しいと思うし、被害者の方々に償って欲しいと思う。その償いが賠償という形で済んだなら、今やっている団体を解散して、猫カフェでもなんでもやって欲しいと思っている。

一顔ファンとして、俗世の人間としての幸福を捨てた彼が、そういう幸せを手にしてくれたらなあ、と一ミリだけ願っておく。

最後にこの記事を書くきっかけとなったぼくのフォロワーに最大限の感謝をここで述べさせて頂きたい。




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