中村寛 vs YA-MAN 戦でYA-MANのテクニックに熱くなった話
先日行われたRISE WORLD SERIES 2021の「中村寛 vs YA-MAN戦」を見ていろいろ思ったことがあるので考察や感想なんかを書き記していきます。
開幕早々の打ち合いでYA-MANがダウンを奪い、以降互いが明確なダメージングブローを与え合う激闘だったわけですが、その激闘の中、随所で光るYA-MANのディフェンス力や攻防一体のムービングセンスが印象的に残った試合でした。
YA-MANのスタイル考察
アングラファイターのイメージとそのファイトスタイルからディフェンス度外視ブンブン丸系と中村寛戦を見るまで勝手な想像をしていたのですが、激しい打ち合いをこなしながらもギリギリで致命打を避けるカバーリングや、高く保たれるガード位置など、そのファイトスタイルからは想像できない防御力が内包されていると感じました。
自ら激しい打ち合いを仕掛け、相手の打ち合いにも応じるYA-MANのスタイルは消耗が激しいため、流動的な打ち合いの展開ではラッシングパワーだけでなく攻防一体の動きと基礎ディフェンス力の高さが求められます。
ダメージを与えつつも自分は致命打を負わないことによって相手にゼロサムゲームの展開を押し付けるのがYA-MANスタイルの強みだと思います。
余談ですが、一昨年チャンヒョン・リーがバウトレビューで受けたインタビューで打たれ強い理由は?という質問に対し「よくわからないけど顔と顎が短くて脳が揺れずらいからかも」と語っており、YA-MANもこれかな?と思いました。
中村寛 vs YA-MAN 戦から考察する
試合映像。※日曜日まで視聴可能
https://abema.tv/video/episode/464-13_s160_p18?utm_source=youtube&utm_medium=social&utm_campaign=fs_yt_rise_211114_live_01
試合開始早々YA-MANが打ち合いを仕掛け、右フックで先制のダウンを奪いますが、開幕の打ち合いからYA-MANは攻防一体の打ち合いを披露していました。
・ガード位置
パンチを放つ際にYA-MANのグローブ位置が顔したにしっかり置かれています。
パンチ放つ際、逆側のグローブは顔下に置くことがセオリーとされますが、グローブを高く上げることで顎元の被弾リスクを下げるだけでなく、肩甲骨を外旋させながらパンチを打つことで体軸を安定させ体重をパンチに乗せやすくするためでもあります。そのため自然な動作で手首を外側に回し肩甲骨を外旋させやすいフォームが顔下にグローブを置いた状態になります。
YA-MANはこの安定した打法によりパンチのキレとディフェンス力を両立させています。
・ダッキング
パンチの打ち終わりに即座ダッキングに移行することで頭と身体の位置をずらし被弾リスクを下げているのも見逃せません。打ち合いでは際の攻防が増えるため打ち終わり際のディフェンスケアが求められます。
YA-MANは打ち終わり動作から滑らかにダッキングに繋げ攻防一体のムーブを実践しています。
パンチ動作と同時にダッキングを行うと体軸がずれパンチ力の減少を招くため、パンチのインパクト後からスムースダッキングに移行するのが重要になります。※注
※注:YA-MANのパンチからダッキングの繋ぎは一例であり、体軸をずらしながらパンチを当てる技術を確立しているトップ選手もいるので一概にもこれが正解というわけではありません。
例・ドミニク・クルーズ、長谷川穂積、ティモシー・ブラッドリー・武蔵など
・インサイドワーク
前述したダッキングの頁でも触れた"打撃の打ち終わり後にダッキングしながら態勢をずらすムーブ"ですが、この時、YA-MANが態勢をずらしつつ相手のアウトサイド及びインサイドに大きく回り込みながら次の攻防のセットアップしています。
真正面から打ち合っていたYA-MANが素早く側面に回り込むことで中村は視線を外側に切られるため、視線を切る→態勢を整える→打撃を放つという手順を踏まざるを得なくなり攻防の流れで遅れをとってしまいます。
さらに身長で上回るYA-MANには下から上に向かう軌道でパンチを放つために身体の開きが見破られやすく中村の入り方が直線的で単調になっていたのもYA-MANに打ち負ける要因になっていました。
北井智大戦や山口侑馬戦を見返してもこの多角的な攻めパターンを駆使して見事なKOを披露していました。
脚を止めた打ち合いではグローブとパンチ動作に意識が向きやすく、競技レベルの競った者同士の打ち合いで片方が一方的に打つ勝つのは難しくなります。
しかし打ち合いの中で距離設定や角度を変えることにより身体全体の動きと風景の変化に多くの視覚情報が動員されるため処理が遅れ、テンポの遅れを誘発させます。
YA-MANは元来の打ち合いの強さをさらに引き出すために打ち合いの流れの中でポジションを制し、次の打ち合いの攻防を優位に運ぶためのセットアップが非常に巧みな印象を受けました。
以上、YA-MANの考察でした。
ご拝読ありがとうございました。
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