2月28日

 heisoku『ご飯は私を裏切らない』について書く。

 この漫画を構成するモチーフに「生物」と「労働」がある。

 まず主人公のモノローグでは、生物の名前が何度も出てくる。一般的に知られているものや、日常口にする名前以外も多く含まれる。たとえばトナカイ、アメリカギンヤンマ、エディアカラ生物群など。ヨトウムシを飼うエピソードや魚を解剖するエピソードは中心的にとりあげられるし、食物連鎖になぞらえた人生に関する持論もくりひろげられる。主人公は、決して勉強ができるという人間ではないのだろう(小学校の算数にも苦労していたという話がある)。それと同時に、好奇心を持つ、生命に関する興味を持つということが彼女のなかに両立している。

 また労働の描写についてもリアリティがあり、読みどころとなっている。主人公は物語のなかでティッシュ配り、倉庫作業(ピッキング)、軽作業(花火大会の撤収作業)、おもちゃ屋の接客、食品工場を経験する。バイトの求人情報を読むのが趣味という、切迫しているのに自らそれ(仕事を渡り歩く)を楽しみにしている(と言い切れるわけではないが、少し似た何か)ことにアンバランスさを感じ面白い。

 「命」と「労働することが必須の人間社会」の考察として、「ロボットは必要な企画を満たすように造られる、人間は必要な水準(労働能力)を満たさなくても生まれてしまう」(要約)というモノローグにはなんだか納得させられた。人生というものの元来の意味のなさについて言及していると感じられた。


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