東京旅行記(瓜を破る巡礼)
5月を待っていた。2ヶ月前から飛行機と宿をとって準備をすすめていた。
東京へ私を連れだしたのは板倉梓の漫画『瓜を破る』である。基本的に今回の旅はそれに関連することを中心に組み立てていた。作中舞台のモデルとなった場所を訪れる、いわゆる聖地巡礼だ。昨年も2.5次元の観劇のために東京へ行ったのだが、劇場と宿以外に用がなかったため観光は全くしていなかった。最後にゆっくりと旅をしたのはいつだったか覚えていない。もしかしたら学生の時かもしれない。もともと出不精かつ土地や食べ物に対する関心が薄いせいでほとんど旅をしない。そういう自分がフラフラと出て行くきっかけは、やはりオタク心が燃えた時なのである。
この記事は自分用の備忘録であり、オチは特にない。時系列で出来事を書いておこうと思う。
今回のために吊り下げ式トラベルポーチと、徒歩の時間が長いので新しいスニーカーを買った。どちらも役に立って、買って良かったものだ。
5月3日(金)
今年のGWはカレンダー通りであれば前半3日間と後半4日間に分かれていた。体力がない(ほうだと思う)私でも1日休みに充てられる後半に予定が組めて良かった。
16時半ごろ、羽田空港に到着。機内で1手詰の詰将棋を84問解いた。近々この第一ターミナルで予定されているという名人戦はどこで行われるのだろうか、とあたりを見回してみたがよく分からなかった。
思っていたよりも荷物が多くなっていたのでまずはチェックインを済ませる。秋葉原駅近の女性専用カプセルホテルをとっていた。ビジネスホテルのベッドでもなぜかあまり良く眠れないので、基本的に私の宿はカプセルで十分なのである。女性専用なだけあって設備が気が利いていて良かった。
19時ごろ、ブックファースト新宿店へ。ここの店舗用の特典ペーパーがついている瓜を破るコミックスを購入。自宅へ配送を依頼できたので助かった。いままで全て電子で読んでいたため物理本でもお迎えできて嬉しい。
次に東京メトロ丸ノ内線に乗って霞ヶ関駅で降り、日比谷公園へ。
ここは5巻で鍵谷とまい子が映画デートのあと、一旦別れたものの名残惜しくてウロウロしていたら再会するという場所。
到着したのも20時ごろと、作中の時間と近い(近そうな)時間に行けた。
日比谷公園のことを何も知らなかったので、まず、読んでいた時のイメージよりもずっと広いし外からの人目が少ない場所だという発見があった。ここで再会したら嬉しい驚きだなというのと、このロケーションならキスしてもいいのでは? って気になりそうな感じが理解でき、本当に来てよかった。
この時点でもう旅の元が取れた。幸せすぎた。
JR有楽町駅周辺で一人呑みしてからJR秋葉原駅へ戻る。
5月4日(土)
冒頭で説明を省いたが、そもそもはこの日にビッグサイトに行くというのがこのGWに上京した一番の理由だった。
4日と5日は友人がほぼほぼ付き合ってくれた。(そしてなんと瓜もこの日までに最新刊まで読んでくれた。嬉しい)
会場内では友人と解散・集合を繰り返しながらお互いに満喫した。
その後、新丸子駅へ移動→徒歩で多摩川を経由→久が原駅に至る。
2日目の宿は五反田のカプセルホテル。
チェックイン後いろいろな気持ちが去来し1,2時間ほど放心。
駅周辺を少し散策する。
5月5日(日)
友人との待ち合わせまで時間が少しあったので五反田駅近辺を探索。
鍵谷が9時〜18時勤務だとしたらだいたい通勤時間帯だなと思いながら歩く。
千駄ヶ谷で友人と待ち合わせる。東京・将棋会館と鳩森神社へ。将棋会館は今年移転が決まっているため私にとってはおそらく最後の訪問のチャンス。ここで奨励会もプロの対局も行われる、瓜に限らずリアルの将棋界やその関連作品にとって超重要な場所である。(基本観光用の場所ではないのだが、予約などなくても1階部分は一般の人でも入れる)
売店にていくつかグッズを購入。フレークシールなど観る将にとっても手に取りやすいポップでお洒落なものや、観賞用のカレンダーなどといったものから、研究書や、駒や盤といった本格的に指す人向けの品物もある。
中学生の鍵谷が電話していた場所も一目でわかる。
将棋会館すぐ傍にある鳩森神社もとても有名な聖地。瓜には直接には登場していないけれど、奨励会員だったならまず間違いなく鍵谷もここに居たはずだ。
原宿駅方面へ歩き、ランチしながら語らったあと、羽田から帰途へ。
3日通して刺激的な旅だった。フィクションを透かして現実の風景の意味が増える感覚は非日常的で面白い。コマの外の空間の広がりや空気、通りすがりの人もふくめた土地の雰囲気、実際に移動することによって地理を(Googleマップ上ではなく)時間と空間の感覚をもって把握することなどは聖地巡礼をすることで得られるものだなと思った。
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