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My Best Exhibition in 2023 『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』

嬉しいことに、2023年は美術館へも何度か足を運ぶことができました。本当は行ってみたかった展示はまだまだあったのですが、子育てと仕事をしながらなので、いくつか行くできただけでも幸せなことです。

そんなこんなで、 #マイベスト展覧会2023 企画に参加させていただきます〜!

マイベストは、6/24(土)〜9/3(日)の会期で東京都庭園美術館で開催されていた『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』展。

富山〜茨城〜山口を経て、現在は岐阜県現代陶芸美術館、その後は兵庫陶芸美術館へと巡回する予定のようです。

アートグラスの美しさが引き立つ、東京都庭園美術館。

1933年に皇族朝香宮家の自邸として建てられた本館

今年訪れた展示は印象的なものばかりでした。そんな中でも、『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』展をマイベストに選んだ理由は、展示作品と会場の東京都庭園美術館の空間が絶妙にマッチしていたから。「その時、そこでしか見ることができない美しさ」がそこかしこにあふれていました。

美術館や展示では、作品そのものを鑑賞することがメインの目的になりますが、どれだけ作品が素晴らしくても、その作品が展示された空間や見せ方によって作品の印象も展示体験自体も変わるな〜ということをあらためて感じさせてくれる展示でした。

ちなみに、東京都庭園美術館の本館は、1933年に皇族朝香宮家の自邸として建てられ、1983年に美術館として開館。主要な部屋の内装には、フランスのアール・デコ様式における著名デザイナーが起用されていて、2015年には国の重要文化財に指定されているという、建築そのものが見応えたっぷりなんです(詳しくはWebサイトをぜひ)。

建築自体が装飾的でかなり個性もあり、フランスの香りが漂うアール・デコ様式。そこに、どちらかといえば削ぎ落とされた、澄んだデザインを得意とするフィンランドのグラスアートをどう合わせるのか?

ドキドキしながら、展示室をめぐりました。

制作途中のアアルト・ヴェースと木型

そこにあったのは、遊びごころあふれる、絶妙なバランス感覚で内装と融合するように展示されたガラスアートたちでした。

《アアルト・フラワー》は、華やかな背景との対比が印象的でした
個性が強めの壁に絶妙にマッチしていた、Gunnel Nymanの作品たち
泡入りガラスとグリーンの色合いが美しい作品

大きな花柄の壁の前に展示されていた、Gunnel Nyman(グンネル・ニューマン)の作品は、主張は控えめですが、不思議と壁との対比で引き立っていました。

花瓶が展示されている空間には窓もあり、眺める角度によって印象が変わる様も面白かったです。

Gunnel Nyman《真珠のネックレス》(左)をはじめとする花瓶
暮らしの中にグラスアートがある雰囲気を味わうことができました
Kaj Franck《Prism》

Kaj Franck(カイ・フランク)の《Prism》もとても素敵でした。展示室には窓があるので、訪れる日や時間帯によっても作品の見え方は変わるんだろうな〜。

Kaj Franckのアートグラスたち

こちらのKaj Franckの作品には、ひと目惚れしました。使われているカラーはブラウン系とイエロー、ホワイトと少しばかりのブラックという、どちらかというと地味なチョイスですが、とても惹かれるものがありました。

Kaj Franckの1972年の《Art-object, unique》

内装にもうっとりしながら展示をめぐる、贅沢な時間。

東京都庭園美術館は建物自体のディテールも素敵なので、時間をたっぷりとって館内をめぐるのがオススメです。

展示の合間に上の方を見上げてみると……

次に紹介するのは、Tapio Wirkkala(タピオ・ヴィルッカラ)の《Fjeld》。ガラスの中に閉じ込められたフィヨルドの風景自体も美しいのですが、3つグラスピースの配置のバランスといい、展示室の壁紙やカーテン、透けて見える外の風景とのハーモニーに感動しました。

Tapio Wirkkala《Fjeld [3405/3805]》
Tapio Wirkkalaの1951年の《Art-object [3869]》と1952年の《Bamboo [3537]》

Timo Sarpaneva(ティモ・サルパネヴァ)の作品がずらりと並んでいた部屋は、天井が高く、カーテンそのものが作品のような空間。ブルーの透明感が目をひく《Sun Ball [2000]》をはじめ、空間と見事に調和するように作品が展示されていました。

空間全体を眺めて、各作品を眺めるということを繰り返していました。《Sun Ball [2000]》は近づいてみると、球体の中側にとても繊細なあしらいがあり、驚きました。

Timo Sarpaneva《Sun Ball [2000]》
Timo Sarpaneva《Sun in the Wood》

階段のところの装飾もめっちゃ好みです……。

インテリアは北欧デザインのようなシンプルでナチュラルテイストに惹かれますが、装飾的であっても直線と曲線を絶妙に組み合わせて、品があるこの感じは良いな〜と、毎回訪れる度に思います。

Timo Sarpaneva《Gateway to Dreams》

そして、「ずっとここでガラスアートを眺めていたい〜」と思ったのが、Timo Sarpanevaの《Gateway to Dreams》(夢へのゲートウェイ)という作品があった部屋。鏡があるからか、外の緑の効果なのか、作品も展示空間も含めて心地よい鑑賞体験がそこにはありました。

こちらもTapio Wirkkalaのアートグラス。質感や色合いが素敵

新館ギャラリーでは現代作家の展示も。

東京都庭園美術館には新館ギャラリーもあって、そこでは『Finnish Glass Art Today(フィンランド・グラスアートの今)』というセクションで現代のフィンランドのガラス作家の展示がありました。

どうやって作ったのでしょうか……とにかく色がきれい!

本館で見てきたグラスアート作品たちとは、雰囲気もガラッと変わっていて、これはこれで面白かったです。

本館とは異なり、新館ギャラリーは個性が極力削ぎ落とされた展示スペースなので、主張が強めの現代作家たちの作品とは相性が良いかもしれません。

陰影も含めて、面白い……!

好みかどうかは別として、鮮やかでユニークな形状の作品が多かった新館ギャラリーでの展示。本館とはまたちがう鑑賞の楽しみがありました。

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フィンランドのガラスというテーマで思い出したのが、昨年Bunkamura the Museumで開催されていた『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』。こちらの展示はiittalaにフォーカスし、ブランドの哲学を13の視点で紹介して深掘りするというアプローチで、構成も展示の印象も『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』展とはまったく異なりました。

『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』も好きでしたが、あくまで「展示のためのスペース」にプロダクトが並んでいるというごくふつうの展示という感じでした(もちろん、それが良くないということではないです)。

だからこそ、近しいテーマでも「こんなにも展示のアウトプットはちがうんだ〜!」という点も含めて『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』展にはとても心動かされました。本館の各部屋に展示する作品を決める工程はかなり大変だったのでは……。どんな感じだったのかな〜と、展示構想段階での進め方が気になりました。

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作品そのものの美しさや面白さはもちろん、美術館の空間に「いる」という体験や時間が本当にインスピレーションにあふれていた『フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン』展。

久しぶりに日常から抜け出して、感覚を研ぎ澄ませて過ごすことができた貴重な1日でした。

2024年も素敵な美術館や展示との出会いに期待して。

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