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エピソード3:検査

心室細動を起こし搬送されてから9日後にICUから一般病棟に移る事になりました。ここからは経過観察を続けながら、心室細動を起こしたそもそもの原因を探っていく事となります。
私の一般病棟での検査・治療は、転棟→心電図検査→人工心肺を取り付ける際に切開・縫合した股関節部分の抜糸→この頃からシャワー浴び始める→耳鼻科(睡眠時無呼吸症候群の検査)→MRI(造影剤投与)→主治医からの説明→心臓カテーテル検査(アセチルコリン負荷)→心筋シンチグラフィ→運動負荷テスト→頭のリハビリのテスト→呼吸器科→眼科→、という流れでした。全ての検査が終わった後ICDを付ける手術をする為に転院をしました。一般病棟に移ってから転院までは約1か月でしたが、これはコロナの影響ですぐに転院出来なかったりしたので、あまり参考にならないと思います。検査内容も患者それぞれで違うと思います。搬送されてすぐICD埋め込む人もいるかもしれません。

心電図検査
一般的に健康診断等でも行われる、あの心電図検査です。健康診断等と違う部分があるとすれば、検査結果を心臓の専門の先生が診てくれるという事でしょうか。こちらは10分程度、横になってるだけで終わりました。不整脈の種類によっては、この心電図検査で原因が分かる人もいるかもしれません。

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抜糸
転棟して初日か次の日、看護師さんに「シャワー浴びていいよー。」というお言葉が。実に10日ぶりですね。服を脱いだら足の付け根の所に絆創膏的なものが貼られていたので捲ってみると、なんと縫った後が!看護師さんに確認してもらったら、人工心肺つけた跡だから、後ほど先生に抜糸してもらいましょう。気にせずシャワー浴びてOKとの事でした。翌日の朝に先生が抜糸してくれました。

耳鼻咽喉科
こちらでは、まず鼻からカメラをいれて咽喉の検査を行いました。扁桃腺が大きいとの診断と睡眠時無呼吸症候群の簡易な検査をやってみましょうとのお話しが。簡易な検査とは就寝時に指と鼻に小型の機械を取り付けて、寝ている間の呼吸の状態を記録するというものでした。2日間に渡って行いました。結果からいうと、こちらの検査では「軽度の無呼吸症候群」という診断を頂きました。

MRI(造影剤の投与)
右腕に造影剤を投与する点滴のルートを作り、MRI室へ向かいました。横になり機械の中へ入り、まずは30分ほど撮影。この際、「息を吸う」「息を吐く」「息を止める」等の指示があるので、それに従います。たまに結構な時間「息を止める」指示があるのですが、もちろんムリはしなくても良いとの事でした。30分後位に右腕につけた点滴から造影剤の投与が行われました。その際痛み等はないかの確認があります。痛かったらすぐに伝え、一度MRIを出て造影剤が漏れていないかなどの確認を行うと思います。まぁ、かなり稀なケースでしょうが。
その後再び30分位、撮影しました。多分計1時間位だったと思います。こちらも横になっているだけなので、そんなに疲れたりはしないと思います。

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リハビリ
一般病棟に移ってからはリハビリも徐々に負荷を上げていきました。運動のリハビリは午前と午後の2回行いました。午前は歩行と階段の訓練を行い、午後はエアロバイクを漕ぎました。自分の足でかなり動けるようになってからは午前も午後もエアロバイクを漕ぐようになりました。頭のリハビリも毎日行います。数字を線で結んだり、間違い探しをしました。低体温療法様々で、心身ともにそこまで後遺症が無い事が分かってきました。

主治医からの説明(家族を呼んで)
心電図検査やMRI検査の結果を踏まえ、一度家族と共に先生から心臓の容態説明と今後の治療方針の話し合いを行いました。
これが3月26日の事。一般病棟に移ってから1週間後、救急搬送されてから16日経過していました。この16日間で、再び心室細動が起きる事も無く、リハビリの経過も順調でした。
そう、私は完全に油断していたのです。私の中では「心臓の状態も悪くないし、リハビリも順調で後遺症も見られないし、来週位には退院出来そうですねー。」なんて話をされるとばかり思っていました。それに加えてコロナの影響で面会も基本的に禁止されていたので、妻に合うのも10日ぶり位だった為、話をされる前はかなりご機嫌だったと思います。

一度でも心停止した人間の現実
先生の話が始まりました。まず心電図やMRI検査の診断から。結論からいうと、その2つの検査ではこれといった病気は発見されなかったとの事。不整脈が起こりやすい心電図ではなかった事と、MRIで心臓の確認をしたが心筋梗塞の原因となるような動脈硬化は見当たらなかったというお話がありました。考えられる原因として「いずれかの心筋症」か「冠攣縮性狭心症」の可能性がある為、心臓カテーテル検査を行った方が良いと言われました。
そしてもう一つの重大な、そして心室細動・心停止を起こした人間が避けては通れない決断を迫られます。それが体内埋め込み型除細動器、いわゆるICDの埋め込みです。
簡単にいうと、常時心臓の動きを監視し、生命を脅かす不整脈が起きた際に自動でそれを感知し即座に電気ショックを発動するという機械を体内に埋め込むのです。
突発性の致死性不整脈を100%治療・予防する事は出来ません。心室細動に対して唯一の治療法が電気ショックです。心室細動等の致死性の不整脈が発生した場合、即座に心臓に電気ショックを与える事で、90%以上の確率で命を救う事が出来ます。今回、私は妻の早期発見と救急隊員や病院の先生方の迅速かつ的確な蘇生処置のおかげで生き永らえる事が出来ましたが、正直かなり奇跡に近い事だったのは間違いありません。
本来、心停止や脳梗塞等で意識を喪失した人間は原則として今後一切車の運転は禁止されますが、埋め込み型除細動器を付けた上で半年以上不整脈が発生しなかった場合に限り、医師の診断書を貰って普通車の運転のみを許されるのです。
上記だけを見れば、ICDを入れる事は良い事尽くめのような気がしますね。
しかし当然ながら体内に機械を埋め込むのですし、ICDの種類によっては心臓に直接リードを通す手術を行う事になります。ごく稀とはいえ、手術による死亡を含む合併症のリスクもあります。そして体内にICDやペースメーカーを埋め込む事によって、生活そのものに決して少なくない制限を負う事になるのです。
まとめると、
☆ICDを入れた場合のメリット
・再び心室細動が起きた場合、90%近い確率で助かる
・かなりの条件付きだが、車の運転が許可される
☆ICDを入れた場合のデメリット
・手術に伴う合併症のリスク(死亡や脳死含む)
・今後の生活に制限を伴う
・ICDの電池は5年~10年で切れる為、その都度再手術が発生し、もちろん毎回合併症のリスクを負う
★ICDを入れない場合のメリット
・今後不整脈が発生しない場合に限り、車の運転を除き普通の生活に戻れる
★ICDを入れない場合のデメリット
・再び致死性不整脈が発生した場合、そこそこの確率で死亡または脳死
・その日が明日又は今夜にでも来るのではないかと震えながら、残りの人生を過ごす

正直かなり辛かったです。予想してた話とはあまりにもかけ離れすぎていたし、車の運転の事も知らなかったので、かなり凹みました。先生の話も後半はあまり頭に入ってきませんでした。
妻は、私が倒れてからこの日に至るまで相当色々調べており、冠攣縮生狭心症やICDに辿り着いていたそうです。凄いですね。

ICDを入れるかどうかはその場で判断するわけではないですが、実質一択ですね。選択の余地は無いのです。覚悟を決めるしかないのです。死にたくないなら、入れるしかないのです。

妻曰く「ICDは命のお守り」と考える、との事です。その通りですね。命を守ってくれる現状唯一の方法なのです。科学も医療も日進月歩で進んでいます。ICDの小型化も電池の寿命も延びて再手術も要らなくなる日がくるかも知れないし、そもそもの不整脈を治療する医療も将来確立されるかも知れません。その日まで、命を守ってくれるのがICDなのです。
落ち込む私に妻がそう教えてくれたおかげで、私も少し時間がかかりましたが決心する事が出来ました。心室細動で倒れたあの日すぐに気付き通報してくれた事に続いて、妻に命を救われたのは2度目という事になりますね。一生懸けても返す事の出来ない恩を受けました。


本当なら転院するまでの流れを一気に書きたかったのですが、長くなりそうなので一旦今日はここまでにします。次回はエピソード4:心臓カテーテル検査になります。2ヶ月近い入院生活の中で一番メインといっても過言ではない検査になりますね。次回も宜しくお願い致します。

ICDについてはいずれまた詳細に書きますが、もしICDを入れる事について迷っている人がいて、その人にとって少しでも決心をする為の手助けに、このブログが役に立ってくれれば幸いです。

では。

続き→→→【エピソード4:心臓カテーテル検査】


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