【代理人列伝】ライオラが移籍金で稼ぐカラクリ
一昨日にアップされたNumber Webの記事で、さらっと
「ポグバがユベントスからマンチェスター・ユナイテッドに移籍金105ミリオンユーロ(約126億円)で移籍した際、代理人のミノ・ライオラは両クラブから計49ミリオンユーロ(約59億円)を受け取った」
と書きました。
代理人手数料が移籍金の47%! とてつもない割合です。
家の売買を扱った不動産会社が、売却額の半分を手数料として取ったら、誰もそんな不動産会社に寄りつかなくなるでしょう。
ところがサッカー業界は違うんです。ライオラは超大物代理人として相変わらず移籍業界で大きな影響力を持ち続けています。
今回は「ライオラの錬金術」のカラクリを書きたいと思います。
*情報ソースは『フットボールリークス』。ハッカー集団による告発文書をドイツのシュピーゲル誌を中心とした国際的メディアチームが解読し、サッカー界の悪事を暴いている
両クラブから高額の手数料を取った
2016年、フランス代表のポグバがユベントスからマンチェスターUへ105ミリオンユーロ(約126億円)で移籍しました。
ライオラが手にした49ミリオンユーロ(約59億円)の内訳は次の通りです。
(1)売主・ユベントスからの報酬=27ミリオンユーロ(約32億円)
(2)買主・マンチェスターUからの報酬=19.4ミリオンユーロ(約23億円)
(3)選手・ポグバからの代理人報酬=2.6ミリオンユーロ(約3億円)
*注:(3)のポグバからライオラへの代理人報酬は、結局ライオラがマンチェスターUに交渉し、マンチェスターUがライオラに払った。つまりマンチェスターUは合計22ミリオンユーロを支払った。
利益相反の問題
両クラブへの支払いの何が問題か? いわゆる「利益相反」です。
売主は高く売りたい。買主は安く買いたい。どちらかを立てればどちらかが立たないわけで、通常、代理人はどちらか一方の側に立つべきと考えられています。
たとえばヴィッセル神戸が大久保嘉人選手をボルフスブルクから戻そうとしたとき、ヴィッセルは自分たち用の代理人Aを用意しました。大久保選手が契約する代理人Bとも、ボルフスブルクが契約するドイツ人代理人Cとも別の方です。
英国の法律では、売主・買主双方の了解を取れば、両方から手数料を取ることは認められています。
しかし、『フットボールリークス』によると、ライオラは両クラブに対して双方から報酬を得ることを伝えずに、両側の代理人を務めました(ライオラ本人は否定)。
ユベントスとの密約
まずユベントスに対しては、「ポグバをなるべく高く売ろう」と持ちかけた可能性が高い。
実際、こんな密約が結ばれています。
ライオラとユベントスの間で、移籍金の最低額を90ミリオンユーロ(約108億円)に設定し、ライオラへの報酬の最低額を18ミリオンユーロ(約22億円)にすることを同意。
もし移籍金が90ミリオンユーロを越えたら、越えた分に対して5ミリオンごとに3ミリオンをライオラに支払う条項も盛り込まれました。ある意味、ポグバの所有権の一部をライオラが持っているようなものです。
この結果、ポグバ移籍時にユベントスからライオラへ27ミリオンユーロ(約32億円)が払われました。
マンチェスターUは選手分まで肩代わり
一方、マンチェスターUには「ポグバを手に入れるためには史上最高レベルの移籍金が必要です」と話した可能性が高い。ユベントスとの密約は言わずに。
マンチェスターUはライオラへ19.4ミリオンユーロ(約23億円)を2020年9月までに5回分割で払うことで同意しました。
さらに、ポグバ本人は年俸の5%をライオラに払うという代理人契約を結んでいたのですが、そのポグバがライオラ へ払うべき報酬を、マンチェスターUが肩代わりしました。
FIFAは『フットボールリークス』の告発を受け、法廷に持ち込むことも検討しましたが、イタリア側で証拠を集められず、英国側では法的にグレーであることから、負けると考えて訴えを諦めました。
いやはや、悪徳代理人はFIFAよりも強い(笑)。
僕は原作者として、漫画『フットボールアルケミスト』でライオラのような悪徳代理人の世界を描いています。かなりマニアックな話ですが、Jリーグも裏金とは無縁ではありません。興味がある方は、ぜひよろしくお願いします!
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