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気になった今週のニュース 

コスタリカの国内ニュースで、気になって面白いと感じたニュースを2本、簡単に解説してみたい。

1本目

これはスペイン語の元のニュース記事。
エレディア県サンラファエル市に植えられていた、糸杉並木の伐採問題に触れたニュースだ。El Tirolと名付けられ、幻想的な景観と共に親しまれていた。


この糸杉は、公道に沿って植えられているが、糸杉並木沿いの一人の住人により、根が敷地内に侵入していること、樹高が30mを超えていることによる倒壊の脅威、日照が遮られる事などにより、2021年に65本を伐採する様、サンラファエル市に訴えが出ていた。
地方裁判所は、この訴えを認め、市に対して伐採するように命令を出していた。
予算不足という名目で、この事業は放置されていたが、12月に再度の訴えを受け、2月の12日、15本の木が伐採された。
ナシオナル大学の調査が行われ、環境エネルギー省参加の元の伐採であったことを、市長は証言している。
訴えを起こした原告、トカチェンコ氏の財産、健康を守るための処置であること、そして法的に則っての処置であることを、市長は証言している。

伐採が始まったことを受け、SNS等で呼び掛けられた有志が集まり、現場でデモを行い、伐採の中止を訴えた。
2月14日、伐採に反対する近隣住民たちにより、この並木に繋がる道が封鎖され、2月16日には、1,000人以上の反対署名が集まり、3千人規模のデモが行われた。

以上がこのニュースに至るまでの概要である。

2月18日火曜日、Sala Ⅳと呼ばれる憲法裁判所第4法廷により、糸杉の伐採を阻止するための予防措置が発令された。
反対運動側による、憲法裁判所への65本の糸杉伐採禁止の訴えを受けての事だ。
伐採反対訴訟の原告によると、憲法50条に定められた、健康で生態学的にバランスの取れた環境に対する全ての人々の権利、に違反するという主張だ。
防風林としての役割。
植林ではあるが、長年に渡り、周囲の生態系に調和している。
動物種の生息地になっていることより、生態学的価値がある。
更に、サンラファエル市に対しても、地域の生態系に不可逆的な損害を引き起こす不均衡な伐採を行ったことに対する訴えを起こした。

憲法裁判所は、自治体へ、判決が下るまでの伐採の禁止令を出し、サンラファエル市は、3営業日以内にこの決定事項に遵守しなければならない。

以上がニュースの概要だ。
La Sala Constitutional de la Corte Suprema de Justicia
最高裁判所憲法法廷、または第4法廷とも呼ばれる機関で、憲法、国連人権宣言を保障する機関だ。コスタリカ人に限らず、誰もがここへ提訴することができる。
このケースは、街路樹を伐採する様提訴した、公道沿線の住民。
提訴を受け、伐採に取り掛かった自治体へ、伐採反対の提訴を憲法裁判所へ行った人々。
という図式だ。
システムとして、物事が円滑に進みにくくなる、という面は確かにある。
が、行政の一方的な措置を防ぎ、憲法を遵守した裁判所が機能している、という一面は評価出来るのではないだろうか。

このニュース記事を読んだとき、私の脳裏に横切ったのは、神宮外苑の銀杏並木だ。コスタリカの行政、司法制度が素晴らしいと、手放しでは言わないが、行政の傲慢による一方的な措置は、少なくとも防がれる、監視されている機構が存在している。

裁判の結果に注目していきたい。

2本目

トランプ政権により、不法移民として強制送還される対象となる米国移民は多くいるが、コスタリカは南アジアを中心とするアジア系難民、約200人を受け入れる。
プンタレナス県コレドール市に存在する、CATEM(一時的な移民センター)に収容され、その後、移民たちの母国と協議しながら帰国体制を整えて行く。
トランプ政権発足後、国務長官のRubio氏が中米各国を訪問したが、その際にコスタリカ政府と、この移民の送還について合意をした模様。
諸費用を米国政府が負担するという条件にて、コスタリカ政府は受け入れを表明した。
移住問題専門の弁護士、Eduardo Flores氏によると、人権を保障する国家としてのコスタリカは、米国で現在起きている不法移民強制送還に関して、空の架け橋となり、移民がコスタリカに到着次第、IOM(国際移住機関)の監督のもと、コスタリカ南部のコレドール市に存在する移民局の一時的な収容センターへ送還するとのことだ。
所定の手続きを踏むと、彼らには30日間の滞在許可が与えられる。
その期間内に帰国、もしくは正式に難民申請を行い、滞在許可を貰うかを選択する。


新聞La Nacionより


外務大臣Arnoldo Andre(アルノルド アンドレ)によると、そこで段階的にそれぞれの国との協議を開始し、彼らの帰国の手助けをする。ただし、これはあくまでも任意で、政治的、宗教的、人種的、性別等による迫害を受けている人たちを強制送還することはなく、コスタリカの法律で認められている難民申請によって、彼らがコスタリカへの滞在が許可されるケースも有り得るとのことだ。

このニュースは、論点が2点。
まず、国務長官との会談にて、何らかの合意がなされた。
想像出来る事としては、コスタリカのこの提案により、米国政府に対しての何らかの譲歩を得たのか。
CATEMでの滞在までの費用は、米国政府が負担する、というところでの合意ではあるかと思う。

かなり突然に発表されたニュースのため、反応は混乱している状態だが、やはりネット界隈では否定的な意見が多い。
近年の不況、物価高による生活苦が続いている状態で、国民の生活を差し置いて、難民の面倒を見る余裕があるのか。
2010年代後半より続く、キューバ、ベネズエラ、ハイチ、スーダン等からの難民、ニカラグアやコスタリカからの移民が多く、難民プログラムによる生活保障を受けた人美tが年々増えていることへの不満等。
治安悪化に対する懸念もある。

彼らが今後、本国へ帰るのか、それともコスタリカへ留まるのか。
はたまた更に多くの米国からの強制送還対象者がコスタリカへやってくるのか、
今後の続報を待ちたいと思う。

ネット界隈では否定的な意見は目立つものの、ヘイトデモ等が起こる可能性は少ないだろう。根底の部分では、人権意識は高い部分があり、難民、移民が差別されることは無い。
ネットのコメントは否定的な意見が激しいが、街中の意見は冷静だ。

対外的には、人権国家としてのコスタリカをアピールする場面とはなった。
私も感情的な部分では、勇気ある決断をした、と思うが、
不況と治安悪化が進む国内で、この措置が逆効果にならない事を願う。

以上、いかにもコスタリカらしいニュースが目を引いたので、要約してみた。
現在進行形のニュースであるので、今後の動向に注目していきたいと思う。

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