幽刃の軌跡 #45
第45話「渦巻湾の激闘と新たなる脅威」
同時刻、淡島南部にて――
激しい戦いが渦巻く渦巻湾(うずまきわん)。平安国の第二軍隊員と第三軍隊員、総勢8千人が四国軍別動隊約2千人を海峡にて迎え撃っている。戦場の海は荒れ狂い、渦潮が渦を巻く中、激戦が繰り広げられていた。
平安国 第二軍隊員A「絶対に淡島上陸を許すな!! 飯伏軍隊長からの厳命だ!!!」
声を張り上げる隊員の言葉に応じるように、周囲の兵士たちが陣を固めていく。
第二軍隊員B「こんな激流の渦巻湾を選んでくるとは、向こうもよく考えたもんですな。だが、この海流を越えて上陸しようなんて無謀ですわ。」
波しぶきを浴びながらも兵士たちは余裕を見せている。確かに、瀬戸内海でもこの渦巻湾は特に海流が激しく、四国軍がここを越えるのは不可能に近い。
一方、四国軍別動隊は渦巻湾の波間に揺れる小舟で戦っていた。しかし、その表情には焦りが浮かぶ。
四国軍 別動隊員A「ここまで来るだけで、隊員たちの大半が体力を使い果たしちまったけん……。しかも、平安軍の兵力の前じゃ、上陸なんて無理だけん……」
波しぶきに消え入りそうな声で、兵士たちは弱音を吐く。激しい潮流が彼らを押し戻し、士気は低下していた。
四国軍 別動隊員B「これは無理やけん……もう引き返そ……」
別動隊員C「バカ言うな!! 引き返したところで、この激流に飲まれて終わりだ!!!!」
四国軍は圧倒的な不利な状況に立たされていた。海流と敵の大軍勢、全てが彼らに不利に働いていたのだ。
平安国軍 第三軍陣営の後方――
第三軍隊員A「あの海域を攻めるとはな。四国軍も必死やけど、あの数で上陸は無理やろうな。」
兵士たちは渦巻湾を見つめ、冷笑する。
第三軍隊員B「まぁ、可哀想に。こっちに景虎様がいなければ、少しは上陸できたかもしれへんけどな(笑)」
兵士たちの間に余裕が漂う。しかし、その時――!!!
「えらい余裕やなぁ~!!そんなんで今から大丈夫かぁ!!!」
突如、怪しげな声が戦場に響き渡る。笑い声とともに現れた影が一瞬にして戦場の空気を一変させた。
四国軍 平琳守「悪いけどなぁ!ここから散ってもらうで!」
その声の主、平琳守は驚くべき速さで兵士たちに襲いかかる。
第三軍隊員たち「な、なんでや! なんで四国軍の琳守がここに!?!?」
驚愕する兵士たち。琳守は刃を振りかざし、攻撃を仕掛けようとしたその時――!
「油断大敵やぞ!!全軍、即座に立て直せ!!!」
冷徹な声が戦場に響き、琳守の攻撃を防いだのは平安国王直下部隊、篠原影秋だった。
琳守「おったんかいな!?」
不敵な笑みを浮かべ、琳守はその場で剣を構える。
篠原影秋と琳守の激突――
篠原影秋「琳守……貴様の思い通りにはさせん!」
影秋は鋭い目で琳守を睨みつけ、その剣に霊域の力を注ぎ込む。
第三軍隊員C「影秋様!!!」
その姿に、兵士たちは歓声を上げる。しかし、琳守は余裕の表情を崩さない。
琳守「まだ安心するんは早いで……」
琳守の背後に現れたのは四国軍のもう一人の猛将、平茂道だった。
平茂道「わしも参戦しようかのう!ここからが本当の戦いや!!!」
その声に、篠原は苦悶の表情を浮かべる。
篠原影秋「くっ……茂道、お前もいたのか……こ奴らはあの海域を通り抜け、回り込んだのか」
さらに――
那須昇治「茂道!20年ぶりに決着をつけよう!!貴様の相手はこの私だ!」
後方から声が響き渡り、現れたのは、国王直下部隊・那須昇治。篠原の援護に駆けつけた。
第三軍隊員A「篠原様と那須様……これは景虎様の指令で助かったか……」
那須昇治「皆の者、油断するな!我々が来たからといって勝利はまだ遠い。軍を整えよ!」
備前港――
激戦が続く中、平安国の主力、尊と琴太の霊域がぶつかり合っていた。二人の霊域の衝突は周囲を吹き飛ばし、戦場全体に影響を与えている。
一方、四国軍は徐々に優勢を見せ、軍の大半が港へ上陸を果たしていた。彼らを迎え撃つのは、飯伏第二軍隊長と宇都宮第三軍隊長、そして平安国第一軍だ。
那須弘明「全軍、備えろ!いよいよ四国軍の本陣が上陸を開始する!第四軍、援護射撃を本陣に集中させろ!」
明菜「これはまずいですね……那須軍隊長。本陣が上陸すれば戦況が一気にひっくり返されます……どうにか手を打たなければ……」
瀬戸内海上、四国軍本陣――
真男「ここでよい。これから先は俺一人で行く。俺が道を開く。軍は後に続け。」
その冷徹な声に、四国軍の兵士たちは一斉に彼に注目する。真男は船首に立ち、備前港を見据えていた。
真男「久しぶりやの……我が平場国よ。この手で戻してやろう。待っておれ。」
そう言うと、真男は静かに霊域を解放し始める。
「霊域解放――氷焔剣舞(ひえんけんぶ)!!!」
その瞬間、圧倒的な霊域の力が真男を包み込み、静かだった海が一瞬で荒れ狂い始めた。
尊「平真男の霊域解放……未だ健在とは……」
琴太「他のことに気を散らすとは、なめられたもんやな!」
尊の一瞬の隙を突いて琴太の剣が彼に斬りかかる。
真男「全軍、俺に続け!!!!」
その低く響く声が戦場全体に轟き渡った瞬間、真男は本船から備前港へと飛び立った――。