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幽刃の軌跡 #59

第59話 「四国軍の結束」

ここは四国軍本拠地、讃岐築港。その中心には壮麗な玉藻宮殿がそびえ立つ。白亜の石垣と朱塗りの柱が、四国軍の新たな拠点としての威厳を示している。宮殿の本殿には、四国総帥に就任した那須昇治の姿があった。


「総帥!」

呼び声と共に、参謀総長に任命された篠原景秋が現れる。洗練された甲冑を纏い、凛々しい表情で那須に向き合った。


「やめてくださいよ。その呼び名で呼ばれるのは、まだ照れくさいですから。」

那須は苦笑いを浮かべながら応じる。


「冗談はさておき、四国要人の会合は明日です。総帥もご準備を。」

「わかりましたよ、篠原参謀総長。」

那須の表情は次第に引き締まり、総帥としての威厳を漂わせる。


翌日、玉藻宮殿の会議室。豪華な木造の天井と厳かな雰囲気が、四国軍の歴史的な会合を彩る。会場には、四国の要人が一堂に会していた。


玉藻宮殿の中央には、那須昇治と篠原景秋が座する。その向かいには四国軍の大将・平琴太、玉藻隊リーダー・平琳守、丸亀隊リーダー・平茂道が並ぶ。さらに四国各地からも名士たちが集結した。阿波族代表の松平鳴(まつだいら めい)、伊予族の松山金五郎(まつやま きんごろう)、土佐族の岩崎三太郎(いわさき さんたろう)。それぞれの地を背負う顔ぶれが揃う。


「それでは、第3回 四国軍軍会議を始めます。」

篠原の声が厳かに響く。


「各部族のリーダーの皆様、遠路はるばるお集まりいただきありがとうございます。それでは、総帥より本日の議題を説明していただきます。」

篠原の合図で那須が立ち上がり、全員を見渡す。


「皆さん、まず感謝を申し上げます。この四国軍を新たに立ち上げる中、皆様の協力がなければ実現できませんでした。」

言葉を一つひとつ噛み締めるように語る那須の姿に、場が引き締まる。


「さて、本題に入ります。我々の調査により、九国がこの四国にスパイを送り込んでいた事実が判明しました。松平氏、岩崎氏の尽力によるもので、まずはその功績に感謝を。」


松平と岩崎が軽く頭を下げるが、岩崎の表情はどこか硬い。


「この事態を受け、平安国とも協議した結果、奴らが平安国、さらにはこの四国へ侵攻してくる可能性が高いと判断しました。」


平琴太がすかさず口を挟む。

「なるほど、大和と九国の動きにもっと注意を払わなきゃならねえってことだな。」

「その通りだ、大将。」 那須が頷く。


篠原が会話を引き継ぐ。

「現在の懸念は、九国が伊予エリアと土佐エリアに攻め込んでくる可能性です。さらに、淡島の重要性も見逃せません。」


琳守が腕を組みながら、苦い顔で口を開く。

「淡島の渦巻湾を渡るのは正直うんざりやわ。あの海域は何度経験しても骨が折れる。」

「琳守の言う通りだ。あそこは避けられるなら避けたい。」 茂道が同調する。


だが松平鳴がにこやかに反論した。

「ご安心ください。私ども阿波族がいる限り、渦巻湾は攻略可能です。潮の流れには独特の法則があるんです。」

「頼もしいな。」 琴太が感心したように笑う。


琳守は肩をすくめながら皮肉を込める。

「まあ、大将は経験してないからそんな軽く言えるんですよ。」


その場が少し和むが、篠原が再び場を引き締めた。

「丸亀隊を伊予エリアに、玉藻隊を土佐エリアに配備します。そして、各部族との連携演習を開始しましょう。」


那須が強調するように声を上げる。

「伊予族と丸亀隊、土佐族と玉藻隊。互いの土地の特性を理解し、協力して防衛体制を整えることが最優先です。」


だが、松山金五郎と岩崎三太郎の間には一触即発の空気が流れる。


「おまさんとこにおったスパイ、結局どうなったんだ?平安国に片付けられたんかいな?」

松山がからかうように問いかける。


岩崎が即座に声を荒げる。

「てめえ!俺たちが無策だったとでも言いてえのか!?平安国からの報告だと、奴らの遺体は見つかってねえんだ!しかも仲間が得体の知れねえ魔術で記憶を失わされたんだぞ!」


琴太が二人を制するように口を挟む。

「落ち着け、二人とも。問題の根源は九国だ。それに、俺たちはもう同じ過ちを繰り返さないように団結するべきだ。」


那須が総帥として場をまとめる。

「その通りだ、大将。これからは新しい四国として、この地を皆で守り抜こう!」


全員が一斉に立ち上がり、力強く声を揃えた。

「御意!!」



会議を終えた玉藻宮殿。四国軍は新たな結束を胸に、それぞれの任地へと向かう。讃岐の地から始まる新しい四国軍の動向が、いよいよ動き出した――。

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