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幽刃の軌跡 #5 yuujinnokiseki

第五話: 「平安の地に降り立つ」


朱留と明菜は、八洲の扇を使い現世から八洲の地へと旅立った。目の前に広がる景色は、まるで歴史絵巻の中に入り込んだかのように美しく、荘厳な京都の風景が広がっていた。彼らが降り立ったのは、かつての栄華を誇る都、平安の地だった。

朱留は周囲を見渡しながら、その静寂な雰囲気に圧倒されていた。だが、同時にどこか不穏な空気も感じ取っていた。戦乱の中にあるこの世界で、彼の存在がどれほど重要なものとなるのか、その重責が次第に朱留の胸に迫ってきた。

「ここが平安か…。思ったよりも落ち着いた場所だな。」

朱留は周囲を見渡しながらつぶやいた。すると、明菜が微笑みながら朱留に近づいた。

「平安は確かに美しい場所ですが、この美しさを守るためには多くの戦いが必要です。だからこそ、あなたには戦力となってもらうために修行が必要です。」

そう言うと、明菜は朱留を平安の外れにある静かな修行場へと案内した。そこは古い神社の境内で、周囲は緑豊かな森に囲まれていた。木々の間を吹き抜ける風が、朱留の肌に心地よく触れた。

修行が始まり、明菜は朱留に霊域の使い方を教え始めた。

「霊域とは、自分に憑依する守護霊や動物霊、神仏などの霊的存在の力を具現化し、自分の力として使うものです。あなたの霊域『天幽の刃』も、その一つです。」

明菜はそう言って、朱留に霊域の基礎を丁寧に教え始めた。霊域を発動させるためには、心を静かに集中させ、霊と一体となる必要があるという。朱留はその言葉を胸に刻み、修行に励んだ。

ある日、朱留はふとした疑問を抱き、明菜に尋ねた。

「明菜、お前の苗字は『霊域』だよな。それって、何か意味があるのか?」

明菜は一瞬黙り込んだが、やがて静かに口を開いた。

「そう、私の家系は初代霊域使いの家系です。私の先祖は、霊域という力を最初に使い始めた者たちでした。そのため、『霊域』という苗字が代々受け継がれてきたのです。」

朱留は驚きとともに、明菜の家系の重さを感じ取った。彼女の落ち着きと知識の豊かさは、その由緒ある家系から来ていたのだと理解した。

「だからこそ、私はあなたに霊域の使い方を教えることができるのです。でも、私だけではありません。平安には私以上の霊域使いがいます。例えば、現西国最強とされる平安の源尊は、スサノウノミコトを霊域としています。」

「スサノウノミコト…」朱留はその名を聞いて、再び驚きを覚えた。古来より語り継がれてきた日本の神々の一人であるスサノウノミコトが、霊域として存在しているという事実は、彼にとって衝撃的だった。

「彼の力は圧倒的で、平安を守る最後の砦と言える存在です。でも、だからこそ、あなたの力も必要なのです。私たちは皆、平安を守り、西国の統一を目指して戦っています。」

明菜の言葉に、朱留は静かにうなずいた。彼の中で、新たな決意が芽生えていた。自分もこの戦いの一員として、平安を守り抜く力を手に入れるのだと。

こうして、朱留の修行はますます厳しさを増していく。彼が霊域「天幽の刃」を完全に使いこなせるようになる日も、そう遠くはなかった。

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