幽刃の軌跡 #17
第17話: 激突する霊域
朱留と竜馬の戦いは、まさに霊域同士の激突だった。朱留の「天幽の刃」は冥界の闇を纏い、無数の斬撃を竜馬に繰り出す。だが、竜馬はその斬撃を軽々とかわし、笑みを浮かべながら楽しんでいるかのようだった。
「お前さんのその霊域、がいにええな!」竜馬の声には余裕があり、どこか楽しげだった。朱留の必死な攻撃を受け流すだけでなく、時折挑発するように軽口を叩く。
朱留は全力で霊域の力を解放していたが、その力はまだ完全に掌握しきれていない。竜馬の余裕ある動きに追いつくため、朱留は必死だった。体中が疲労で重くなり、呼吸が荒くなる。竜馬はまだ何かを隠している。それは、朱留にもはっきりと感じ取れた。
「くそっ…」朱留は霊域を最大限に引き出そうと奮闘するが、そのたびに竜馬の余裕が目につき、焦りが募る。
「これで終わりやき!」竜馬は一瞬で間合いを詰め、巨大な剣を振り下ろした。朱留は咄嗟に「天幽の刃」で受け止めたが、その衝撃で足が震える。竜馬は笑いながら剣を振り上げると、さらなる攻撃を仕掛ける。
「もっと力を引き出せよ、まだまだやろ?」竜馬は挑発的に声を上げるが、彼の目は楽しみながらもどこか冷静だった。彼にはまだ余裕があり、その力を完全には出していないのは明らかだった。
朱留は苛立ちを抑えつつ、全力で攻撃を繰り出したが、竜馬はそれを楽しんでいるように受け流すだけだった。余裕を持って攻撃する竜馬に対し、朱留は霊域の制御に必死で、全く余裕がない。
竜馬は少し距離を取り、片眉を上げて笑う。「お前さん、まだ終わりじゃないやろ?もっと見せてみい!」
戦場の別の場所、大森は霊域「金剛守手 攻手」を解放し、圧倒的な力で平安軍の第四軍陸路隊を蹴散らしていた。大森の巨体と同様に、攻撃はまるで山が動くような圧力を伴い、平安軍の兵士たちはその力に翻弄されていた。
「また厄介なんがきたわ…竜馬殿、ド派手にせんで欲しいどす…」大森は竜馬の戦いを横目にしながら余裕の笑みを浮かべた。しかしその瞬間、背後から放たれた那須の矢が金剛守手に命中する。
「おのれ、好き勝手させんぞ!」那須は怒りに満ちた声を上げ、矢を次々に放つが、大森の霊域がその全てを吸収し、無力化する。那須の顔には焦りが浮かび、劣勢を強く感じ始めた。
「弁天の楽境、解放します。」その声に、那須の背後から静かに進み出るのは明菜だった。彼女は琵琶を手に取り、その音色が戦場に響き渡る。その瞬間、平安軍の兵士たちは一斉に力を取り戻し、士気が高まると共に攻撃力が増していった。
「これで、少しは対抗できるでしょう。」明菜の声は冷静だったが、その瞳には強い決意が宿っていた。
那須もその変化を感じ取り、呟く。「やつのおかげで助かった。明菜殿、彼は一体何者ですか?」
明菜は簡潔に答える。「朱留は西国の統一に欠かせない存在です。彼の力が戦局を変えることになるでしょう。」
「それはありがたいことです。」那須は頷き、すぐに指示を飛ばし陣営を立て直す準備に入った。
一方、大森の「金剛守手 攻手」は依然として猛威を振るい続けていたが、那須と明菜の協力による抵抗で、徐々にその勢いは削がれていた。
大森は苛立ちを隠せず、荒い息を吐きながら「これで終わらせんようにするどす…」と呟き、さらなる霊域の力を解放しようとしていた。
戦場は激戦に次ぐ激戦となり、どちらが優位に立つかは一瞬の判断に委ねられていた。