幽刃の軌跡 #44
第44話「将軍とエース」
平安国第二軍隊長、飯伏綾人と第三軍隊長、宇都宮影治の参戦によって、備前港での戦局は一気に動き始めた。平安国将軍・源尊と四国軍のエース・平琴太の戦いは、今や頂点を極めるほどの激闘となっていた。
尊「お前に一つ問いたい……。」
琴太「なんや?」
二人は刃を交えながら、互いの斬撃を躱し、鋭い目で相手の動きを見極め続ける。
尊「なぜ……今、この時に戦いを仕掛けた?お前たちの意図がわからん……。」
琴太は不敵な笑みを浮かべながら答える。
琴太「そんなん決まってるやん。そっちが新しい兵器を創ってるちゅう噂を聞いたからや。」
尊の表情が一瞬、硬くなる。――何故ならそのような事実はないからだ。
尊「……そんな事実はないが、どこからの情報だ?」
琴太「そら、言えん。お前も私らが『新しい力を創りました』なんて言うわけないやろ?(ニヤリと笑う)」
尊は一瞬目を細め、琴太の言葉を吟味するが、即座に思いを振り切る。
尊「そうか……。言葉ではまだ伝わらぬか……。」
尊「だがこれだけは伝えておく!お前たちがどんな情報を信じ、この平安国に攻め込もうとも、この源がいる限り、侵略など許さぬ!!!そして――20年前も同じだったが、九国の言いなりに踊らされる平家の愚かさよ!いつまで他者の操作に踊らされるつもりだ!!!!!己を信じろ!!!!」
琴太「なんや、偉そうに!!下民から成り上がっただけの将軍が!!!!」
その瞬間、尊の表情が引き締まり、彼は霊域の力を解放する決意を固める。
尊「……霊域解放弐式――憑依!!!!!武速(たけはや)!!!!」
突如として、尊の周囲に青く澄んだ雷鳴の如きエネルギーが広がり、天からの轟音が響き渡る。彼の背後にスサノウノミコトの霊が降臨し、右手には雷を纏った巨大な草薙の剣が現れる。その姿は神々しく、戦場全体がその力に震撼する。
琴太「……出たか……平安国最強と言われる、スサノウノミコトの霊域……。格が違うな……。」
その圧倒的な光景に、周囲の兵たちも息を呑む。
飯伏「あれが……噂の……初めて見た……。」
宇都宮「すげえ……霊域ですな……。」
一番隊の隊員たちも口々に言う。
隊員たち「将軍クラスの弐式はやっぱり次元が違ぇ……!」 隊員たち「俺たちも負けてらんねぇぞ!!全軍、勢いをつけろ!!!!」
その一方で、琴太も自らの覚悟を固め、霊域を解放する。
琴太「安心せい。お前一人じゃないで……。霊域解放――讃岐式極意!!!!金剛坊(こんごうぼう)!!!!」
琴太の周囲に黄金の光が広がり、彼の姿は烏天狗のような黄金に輝く仮面と甲冑を纏った、威風堂々たる姿へと変わっていく。その力強い姿は尊の霊域に劣らず、神々しさすら感じさせる。
尊「……また一段と強力なエネルギーを手にしたか。」
平安国軍後方で、明菜が冷静に戦況を見つめていた。
明菜「あのエネルギー……正統霊域とは違う何かを感じます……。」
那須「妖力とも異なる……将軍……勝てるのか……いや、信じるしかない。」
那須「全軍!!!!四国の侵攻を叩き潰せ!!!!」
平安国第四軍も士気を高め、戦場はさらに熱を帯びる。
琴太「ほな、遠慮なく行かせてもらうで!!!!!」
尊「真っ向から受けて立つ!!!!!」
二人の動きは、もはや人間の目では捉えることができない速度へと達し、光の如く交差する剣戟がまるで彗星の衝突のように、戦場全体を揺るがす。刃と刃がぶつかり合うたびに、空間が震え、雷鳴が轟くかのようだった。
一方、瀬戸内海上では四国軍総帥・平真男がこの状況を見守っていた。
真男「はははははは!!!!!琴太め、ついに讃岐式を解放したか!!!!」
真男「全軍!!!!この戦を終わらせるぞ!!!!!!!!」
彼の指揮が海上に響き渡り、四国軍の総攻撃が始まろうとしていた――。