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幽刃の軌跡 #4 yuujinnokiseki

第四話: 「扇を受け継ぐ」


朱留は、目の前に差し出された扇をじっと見つめていた。その扇はただの装飾品ではないことが、直感的に分かった。扇を渡している明菜は、静かながらも深い緊張感を漂わせている。

「これは『八洲の扇』。この扇を使えば、現世と八洲の地を行き来することができるわ。」

明菜の声は穏やかだったが、その言葉には力が込められていた。彼女の手から扇を受け取った朱留は、その扇が放つ不思議なエネルギーを感じた。扇の表側には、鋭い刃のような紋様が描かれており、それが自分の霊域「天幽の刃」と関連していることがわかった。

「この扇はただの道具ではありません。あなたの霊域と共鳴し、現世と八洲の地を結ぶ鍵となります。」

明菜は扇を見つめながら、朱留に向けて説明を続けた。

「使い方は簡単です。扇を広げ、私が教える詠唱を唱えることで、八洲の地への道が開かれます。ただし、一度使用するとしばらくは再び使うことはできません。それに、場所によっては効果が発揮されないこともあるので、注意が必要です。」

朱留は明菜の言葉を真剣に受け止めながら、扇を手に取った。扇の柄は滑らかで手に馴染む感触があり、表面には京都の貴船神社の景色が描かれた裏側の絵も美しい。

「詠唱は短い詩のようなものです。覚えるのは簡単ですが、その詠唱に心を込めることが重要です。」

明菜はそう言うと、朱留に詠唱を教えた。詠唱は次のようなものであった。

「天と地の狭間に道を開け、
八洲の風を呼び寄せん。」

朱留は詠唱を口ずさみ、扇を軽く振ってみた。すると、扇から微かな光が放たれ、周囲の空気が変わったことを感じた。まるで、現世と八洲の地の境界が揺らぎ、道が開かれたかのようだった。

「これが…扇の力か。」

朱留は自分の中に湧き上がる不思議な感覚を噛み締めた。彼はこれから、この扇を使って現世と八洲の地を行き来し、平安を救うための戦いに挑むことになる。

「朱留、これであなたは自由にこの二つの世界を行き来できるようになりました。しかし、気を付けてください。扇の力は強大ですが、それゆえに慎重に扱わねばなりません。」

明菜は優しい微笑みを浮かべながら、朱留に言葉を送った。

「ありがとう、明菜。この扇を大事に使わせてもらうよ。」

朱留はそう言って扇を握りしめた。彼は今や、現世と異世界を繋ぐ存在となり、この新たな力を使って八洲の地の運命を変える旅に出る準備が整った。しかし、その道のりは決して平坦ではなく、彼を待ち受ける試練と戦いはまだ始まったばかりだった。

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