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幽刃の軌跡 #16

第16話: 戦局の変化


「金剛守手 攻手!」

大森が叫ぶと共に、その巨大な黄金の手が瞬時に姿を変えた。今まで防御に徹していた「金剛守手」は、攻撃のために形を変え、まるで空を裂くかのように平安軍の陸路隊を襲った。

「ぐああああっ!!」

平安軍の兵士たちは、次々とその圧倒的な攻撃に飲み込まれ、500人にも及ぶ兵が一瞬で陣形ごと吹き飛ばされていく。大森の攻撃は容赦なく、四国軍の勢いが戦場を支配し始めた。

「これで、終わりじゃのう…」大森は冷静に状況を見極め、霊域の力をさらに解放しようとしていた。

一方、竜馬率いる小舟隊は混乱の中、猛スピードで備前港へと上陸を果たす。平安軍の陣形は崩壊し、那須弘明は指揮を整えるために戦場を奔走していた。

「くそっ! 奴らの勢いが止まらん…全軍、再編しろ! 第二陣、即座に沿岸に配置せよ!」

那須は激しい戦局の中で、冷静に指揮を執ろうと努めていた。しかし、その一瞬の隙を竜馬は見逃さなかった。

「ふん、今が好機やき!」

竜馬は剣を振り上げ、那須の首を狙って駆け出した。その速さは圧倒的で、那須は周囲の混乱に気を取られており、竜馬の接近に気づくことができなかった。

「これで終わりやき!」

竜馬の「闘剣の牙」が那須を仕留めようと振り下ろされ、斬撃が空を裂いた瞬間、突如として光が戦場を包み込んだ。

「なんや…?」

斬撃は確かに那須を捕らえたはずだったが、その攻撃は消え失せ、まるで何もなかったかのように空振りに終わった。

「それ以上は行かせない。」

静かな声が戦場に響いた。竜馬の目の前には、黒い衣を纏った朱留が立ちはだかり、その手には「天幽の刃」が輝いていた。朱留が竜馬の斬撃を無に帰したのだ。

「あの違和感のある霊域はお前さんやったんやな。」

竜馬は少しだけ驚いた表情を見せたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。その横には明菜もおり、安堵の表情を浮かべながら戦況を見守っていた。

「間に合った…でも、これは厳しいわね。」

明菜は大森が引き起こした凄まじい破壊の痕跡を見て、深刻さを感じ取っていた。平安軍は圧倒的に押されており、竜馬と大森の力に対抗するためには、朱留の霊域だけでは足りないかもしれない。だが、今は立ち止まって考える時間はない。

「戦局を打開するためには、私たちがこの場で踏ん張るしかない。」

朱留は天幽の刃を構え、竜馬に向かって言った。戦場の空気がさらに緊迫し、次の一瞬が戦いの行方を決定づけることは明らかだった。

竜馬の目は鋭く、朱留と対峙しながらも、その力強さを感じ取っていた。

「これは面白くなりそうやな。ええ霊域使いよるわ。」

竜馬の笑みは消えず、次の一手を見極めるように静かに動き出した。

朱留と竜馬、二つの霊域が激突する戦いが今、始まろうとしていた。

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