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幽刃の軌跡 #8 yuujinokiseki

第8話: 修行と京料理、そして…


朱留は明菜と共に、八洲の地の静寂な一角で修行を続けていた。この地での生活は、現実世界とは異なる感覚であり、時間がゆっくりと流れているように感じられた。2日間、朱留は霊域の力を磨き、八洲の地に順応するための訓練に集中していた。しかし、その生活の中で、もう一つの新たな楽しみがあった。それは、明菜が作る京料理だった。

その夜、朱留と明菜は修行を終え、夕食の時間を迎えた。明菜が作った料理は、京野菜と鯛の焼き物、そして鴨の料理。どれも見た目にも美しく、香りが食欲をそそる。「これは本当に美味しそうだな…」と朱留は感嘆の声を漏らした。

「お口に合うといいんだけど…」明菜は少し照れくさそうに笑いながら、自分の分も盛りつける。二人は、ささやかな食卓を囲み、京料理を堪能し始めた。鯛の焼き物は外はカリッと、中はふっくらと柔らかく、京野菜の独特な風味が口いっぱいに広がる。鴨の料理も、しっかりとした味わいで、食べるたびに満足感が増していく。

「こんな美味しいもの、久しぶりだ…」朱留は料理を味わいながら、心から感動していた。「まるで京都の名店で食べているみたいだ。」

明菜も微笑みながら、「気に入ってくれて良かった」と答えた。二人は料理を味わいながら、修行の話や、八洲の地での生活について語り合った。

しかし、食事を終えた後、夜が深まり、静寂が二人を包むと、朱留はふと現実に引き戻された。この2日間、彼は修行に没頭し、明菜との共同生活に慣れてきていたが、今、静かな時間の中で、彼の心にある思いがよぎった。20代の可愛らしい女の子と共に、二人きりで生活をしているという事実…。

「…俺、こんなに若い女の子と二人で過ごしてるんだよな…」朱留は自分の心の中でつぶやき、思わず想像が膨らんでしまう。明菜が料理を作っている姿や、寝る前の穏やかな笑顔が頭に浮かび、その純粋さが、逆に彼の心をくすぐった。彼の心は次第に、理性では抑えきれない欲望に引き込まれ始めた。

「いかん、いかん…」朱留は頭を振って、必死に自分を正そうとする。しかし、その時、明菜が不意に朱留の表情を見て、「朱留さん、なんか考えてる?」と不思議そうに尋ねた。

「あ、いや、なんでもない…」朱留は慌てて答えるが、明菜の鋭い目が彼を見透かす。

「もしかして…エッチなこと考えてた?」明菜は少し笑いながら冗談めかして言う。

「そ、そんなことない!」朱留は顔を赤くしながら否定するが、明菜はクスクスと笑いを堪えきれなかった。

「サイテー…でも、ちょっと面白いかも」明菜は朱留をなだめるように、優しく微笑んだ。朱留は完全に撃沈し、結局、自分の欲望に振り回されてしまったことを反省しつつも、少しだけ明菜との距離が縮まった気がしていた。

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